作:◆l8jfhXC/BA
たとえば、まだあいつが研究会に入って間もなかったとき。
依頼人をナンパするわ尾行の邪魔をするわで最悪だった。
それでいて、いつも自分よりも真実に近づいていて。
歯痒い思いが胸に詰まっていた。
たとえば、みんなが景のことを忘れてしまったとき。
あのときの水原の言葉は本当に痛かった。
本当に自分しか覚えていないのだと、想っていないのだと、立ち向かえないのだと痛感されて、打ちのめされた。
久々に味わった孤独は、とてもつらかった。
たとえば、DDの連中と協力して『王国』側の悪魔と戦ったとき。
あのとき水原が来てくれて、本当に嬉しかった。
でもまず怒ってやった。その方が自分らしい。
そしてすべてが終わって──風邪と恥ずかしさでぼろぼろになりながら、二人で物部くんと梓さんを探しに行った。
死にたいなんて、一度も思ったはない。
『王国』に関わったことで出会った人たち。
今度は彼らと一緒に日常をつくっていこうと、そう決意していた。
──死にたいなんて、一度も思ったことはなかったのに。
「ぅあああ……ああぁ……あ」
千絵は慟哭していた。
なぜこんなときに走馬燈のように思い出してしまうのだろう。
必死に戦っていたあのとき。すべてが終わり、明日に向けて歩いていたあのとき。
梓と、景と、そして水原と一緒にいたあのとき。
──死にたくなかったあのときのことを。
(殺して……お願い……)
ぼろぼろと涙を流しながら、剃刀の血の跡を舐めている今このとき。
優しく笑っている少女を睨み付けながら──それでもまだ血を求めている今このとき。
──ただひたすら死を求めているこのときに、なぜ思い出してしまうのだろう。
「そんなに睨まなくてもいいのに……。一度受け入れてしまえば、楽になるのよ?」
「うう……ぅ……」
死にたい。
「うーん……しょうがないわね」
死にたい。
「じゃあ、これでどう?」
死に───────────────────────────────
ぶつんと、何かが切れた気がした。
たとえば、まだあいつが研究会に入って間もなかったとき。
依頼人をナンパするわ尾行の邪魔をするわで最悪だった。
それでいて、いつも自分よりも真実に近づいていて。
歯痒い思いが胸に詰まっていた。
たとえば、みんなが景のことを忘れてしまったとき。
あのときの水原の言葉は本当に痛かった。
本当に自分しか覚えていないのだと、想っていないのだと、立ち向かえないのだと痛感されて、打ちのめされた。
久々に味わった孤独は、とてもつらかった。
たとえば、DDの連中と協力して『王国』側の悪魔と戦ったとき。
あのとき水原が来てくれて、本当に嬉しかった。
でもまず怒ってやった。その方が自分らしい。
そしてすべてが終わって──風邪と恥ずかしさでぼろぼろになりながら、二人で物部くんと梓さんを探しに行った。
あのころはつらかったけど、楽しかった。
でも今の方がずっといい。
脳に駆け抜ける鋭い快楽と、身体全体を包み込むような甘さ。
カプセルを服用したときもこんな感じなのだろうか。まぁ、もうそんなことはどうでもいいのだけれども。
ただ──────水原の血が飲みたいな、と思った。
自分の手首から溢れる血を啄むように舌を這わせる千絵を見て、聖は微笑した。
「やっぱり素直になるのが一番いいわ」
そうつぶやき、千絵の頭をそっと撫でてやる。
「でも……そろそろ夜が明けるわね。やっぱり吸血鬼に太陽はだめよね? あの倉庫の中で夜を待ちましょうか」
こくりとうなづく千絵がかわいくて、そっと頬にキスをした。
【残り95人】
【D−4/森林近く路上/1日目・05:30】
『No Life Sisters(佐藤聖/海野千絵)』
【佐藤聖】
[状態]:吸血鬼化/身体能力等パワーアップ、左手首に切り傷(徐々に回復中)
[装備]:剃刀
[道具]:支給品一式
[思考]:倉庫に行って夜まで休む
吸血、己の欲望に忠実に(リリアンの生徒を優先)
【海野千絵】
[状態]: 吸血鬼化/身体能力等パワーアップ
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: 聖についていく
※スィリーは同じ場所で気絶?中
2005/05/09 改行調整、一マス開け追加