作:◆J0mAROIq3E
……納得がいかない。
砂浜と草原の境目。その低く、しかし入り組んだ崖の隙間で鳥羽茉理は身を縮めていた。
いきなり殺し合いに放り込まれ、その上ワープである。
が、何しろ月まで飛行していった従兄弟達を持つ茉理である。多少の怪現象は無視した。
当初は四人姉妹の残党が自分たちを殺しにかかったのかとも思ったがどうにも腑に落ちない。
超人である竜堂兄弟ならともかく、自分は身体的には至って普通の女子大生である。
わざわざこんな回りくどい方法をとるのもおかしな話だ。
(……ひとまず、状況の把握よね)
名簿を見る限り、最も信頼のおける四人のうち二人がこの島にいる。
竜堂始。竜堂終。
彼らに守られ、対価として文化的生活を営ませるのがライフワークである自分としては、
一刻も早く彼らと合流したい。
地図とコンパスを照らし合わせ、ここが島の北端だと判断する。
彼らのいる所には必ず騒動が起きるのだから、なんとかなると思う。
頷き、さらに岩の窪みに身を沈める。
砂浜からも上の草原からも、その姿は見えない。
……出来れば夜明けを待って行動したい。
夜目は利く方ではない。何しろ「鳥」羽なのだから。
そんな冗談にくすりと笑い、すぐにため息をつく。
(……大丈夫。始さん達ならこれぐらい何ともないんだから)
支給品を胸に抱き、胸中で呟く。
その支給品だが、よく見ても用途の分からない厄介なものだった。
金色の編み髪に似た装飾を持つ、長い柄。
柄とは言っても刀身は無く、柄尻に何かの接続端子があるだけだ。
一緒に入っていた電池のようなものがぴったりはまったが、何も起こらない。
あまり弄くるとむしろ危険かもしれないと思い、今は電池を外している。
何の役にも立ちそうにないが、色々と造詣の深い従兄弟なら何か分かるかもしれない。
時計を見ると、五時三十分。
夜明けは近い。
三十分後に地獄のような現実を告げられることを、彼女はまだ知らない。
【座標A-2/海岸沿いの岩間/時間(一日目・5:30)】
【鳥羽茉理】
[状態]:健康
[装備]:強臓式武剣“運命”、精燃槽一式(出典:機甲都市伯林)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:竜堂始と竜堂終の捜索。