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111:A Head

作:◆l8jfhXC/BA

 弾がないリボルバー。
 魔杖剣がない咒式士。
 ……眼鏡のない俺。やなとりあわせだ。
 あるべきものがないおかげで、今の俺は咒式が使える凡人からただの凡人に成り下がったわけだ。
 頼れるのはこの頭脳しかない。考えろ、ガユス・レヴィナ・ソレル。

 まずこのゲームに乗るかどうか。否。俺が素手でギギナやクエロを殺せるか?
 心情的にも、あの糞主催者共の思惑通りには動きたくないというのがある。
 そもそも魔杖剣があっても勝てるかどうか疑問だ。
 それに──この島に来てから何となくスタミナが落ちているような気がするのだ。それでもまだ常人以上はあるだろうが……。
 これはまずい。
 俺だけでなく、何らかの力で参加者全員の身体的能力が落とされている可能性もある。
 次に今後の行動。信頼できる協力者が欲しい。
 ギギナ。……闘いを求める奴にとってこのフィールドは絶好の場所だろう。却下。
 クエロ。……論外。
 おわり。

 …………。
 ラルゴンキン事務所の奴らが参加していたら少しは頼れただろうが、いない。
 ならば、全くの他人から信頼関係を築かなければいけない。これが難しい。
 脱出するという利害一致のみの同盟関係ならなんとかなるかもしれない……、いや無理だ。
 弾のないリボルバー一丁の俺と組んでも足手まといにしかならない。
 しばらくは単独で動くしかなさそうだ。
 せめて俺の魔杖剣が誰かの支給武器に入っていればいいのだが。

「…………」
 ふと、そこで気づく。
 なぜ、殺し合いのゲームなのに戦闘能力を落とす必要があるのか?
 防御系咒式のみに制限がかかっているのならわかるのだが。
 極限状態に追い込むため? 力が制限されたら逆に群れをなそうとするものが増えるのではないか?
 弱者へのハンデ?……ありえん。
 むしろ戦闘能力を上げた方が強い力に酔った参加者同士が戦い始めるのではないか?
 “ゲーム”としてもおもしろくなるだろう。
「…………」
 参加者を扱いやすくするため?……逆に言えば、制限しないと手に余るということだ。
 ならばなんらかの方法で能力制限を解けば、抵抗は可能か?
 ──いや。
 俺は最初に見せしめとして殺された二人を思い出す。
 あの紋章のようなもの。あれを何とかしなくてはいけない。
 ひょっとしたら、あの紋章自体が能力制限の力をも持っているかもしれない。
「……よし」
 俺の身体のどこかに仕掛けられている紋章を外す。能力制限を解除する方法を探す。信頼できる協力者を何とかつくる。
 脳の運動を終え、俺は再び東に向かって歩き出した。

【残り98名】

【A-6/砂浜/一日目・0:45】

【ガユス】
 [状態]:健康、体力が少し落ちている
 [装備]:リボルバー(弾無し)
 [道具]:支給品一式
 [思考]:引き続き東に向かう、呪いの刻印を外す、
 能力制限を解除する方法を探す、協力者を探す

2005/05/09  改行調整、一マス開け追加

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