作:◆E1UswHhuQc
「きゃあああ!」
「どうしたっ!」
悲鳴を聞いて、ベルガーは背後の岩陰を覗き込んだ。と、何かがぶつかってくる。
テレサ・テスタロッサだ。下着姿の彼女を抱きとめ、ベルガーは問う。
「何があった?」
「だ、誰かがこっちを覗いて――」
そこまで言って、テッサの視線の先が自身の身体に移る。下着姿。
「――き、」
「叫ぶなバカ。何でこんなところに居るのか忘れたのかテレサ・テスタロッサ」
「う……」
殺し合いのゲーム。それを思い出して、テッサが言葉無くうずくまる。
ベルガーはまだ生乾きの上着を掴み、彼女に被せた。
「あ……」
「まだ乾いちゃいないが、ハズかしいならそれ羽織っとけ」
「……ありがとうございます」
一礼するテッサに、ん、と頷き、ベルガーはデイバッグを手に取った。中に手を入れ、まだ見ていない支給品を確かめる。
取り出されたものは。
「……一つ聞くぞ、テレサ・テスタロッサ。――これは武器か?」
「ええと……仮に武器だとしても、私の知識にはないです」
取り出された黒い卵を見てのテッサの言葉に、ベルガーは溜息で返した。そして聞く。
「君の武器は?」
「まだ確かめてないです……」
「なら確かめるぞ。武器がいる。視線を感じたんだろう?」
「え、ええ」
頷くテッサの目の前で、ベルガーは生乾きの衣服を身につけた。黒い卵はポケットに入れておく。
テッサを後ろに、背後の岩陰へと回った。用心深く。
焚き火の灯りがつくる視界に、二人は共通のものを見つけた。
分厚い筋肉の鎧を持った、傷だらけの体を持つ巨漢だ。装飾がなされた、一本の棒を手にしている。
「……どう思う?」
「海兵隊に入るといいんじゃないでしょうか」
当然のように巨漢を警戒しながら、テッサのデイバッグを掴む。と、巨漢が口を開いた。厳かな声で、
「主は申された」
棒を大上段に振り上げた巨漢に、ベルガーは一言。
「……何て?」
「――汝、姦淫するなかれ」
棒が振り下ろされた。
「俺は子供に興味ないって――」
言う間にテッサを小脇に抱えて、真横に飛ぶ。充分に避けられるタイミングだ。通常ならば。
横に飛んだベルガーの視界、豪速で振り下ろされる棒が、いきなり巨大化した。
「――!」
避けられない。そう判断した時だ。
視界がブラックアウトした直後、二人の姿が消え失せ、棒――宝具『神鉄如意』が地面を撃砕した。
視界が開けた先にあったのは、知り合いの死体だった。
「ヘラード・シュバイツァー?」
どうやって危地を抜け出したのかという疑問はあった。だがそれよりも、眼前に倒れ付した男の死体に言葉を投げ掛ける。
首筋の斬撃痕と地を塗らす血液。ベルガーはシュバイツァーの手を取り、脈を見る。
「……何こんなところで死んでるんだヘラード・シュバイツァー。レーヴァンツァーン・ネイロルが泣くぞ」
呟きは夜の闇に紛れ、消え去る。
ベルガーは溜息一つで感傷を打ち消し、遺体の傍らに転がるデイバッグを手に取り、開けた。
シュバイツァーの遺した支給品は、東洋風の剣だった。
一目で業物と分かる気配の、カタナだ。柄の辺りにラベルが張ってある。
『贄殿遮那』。
「……あの、ベルガーさん」
「なんだテレサ・テスタロッサ。服が欲しいから戻りましょうとか言うなら一人で行けよ。何処だか知らんが」
「違います! いえ、服も欲しいですけど……その、その方は……」
「知り合いだ」
一言で答えてベルガーは立ち上がり、カタナを手にした。
「ちょっと手伝ってくれテレサ・テスタロッサ。このバカを埋める」
「あ……はい」
テッサは答え、辺りを見回して穴掘りに使えそうなものを探す。と。
「君の支給品は何だ? スコップだといいんだが」
「そうでした。ええと……」
言われ、自分のデイバッグを開ける。中には、
「……服で穴は掘れないな」
「……ええ」
【G−3/林の中/02:30】
【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:平常を保とうとしている
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ 黒い卵(天人の緊急避難装置)@オーフェン
[道具]:デイバッグ×2(支給品一式)
[思考]:シュバイツァーを埋葬する。
・天人の緊急避難装置:所持者の身に危険が及ぶと、最も近い親類の所へと転移させる。
【テレサ・テスタロッサ】
[状態]:動揺
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式) UCAT戦闘服
[思考]:シュバイツァーの埋葬を手伝う。
【C-7/湖のほとり/1日目・02:30】
【ハックルボーン】
[状態]:健康
[装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:神の導きに従って天罰を下す。
【残り102名】