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第280話:初めてのピクニック

作:◆MXjjRBLcoQ

幹から額を離し火乃香は、ほぅ、とため息をついた。
今度は幹をそっと抱え、その初めての感触を確かめる。
シャーネには悪いと思いながらも、火乃香はじっくりと木の存在を心に刻んだ。


洞窟の外の2人が去ったのを確認して、シャーネと火乃香は出発した。
ところが海洋遊園地を目指すにあったって、二つ問題ができた

一つは禁止エリアの存在である。しかも回り道はかなりの距離を歩くことになる。
時間的には余裕があるものの、動けなくなる場合や、ゲームに乗った人物の存在を考え、
追い詰められる可能性のある【h-2】はなるべく避けたい、というのが二人の意見になった。

もう一つは火乃香自身だった。生体建材の町に岩と砂の砂漠、荒廃した時代を生きる彼女にとって、
海も、森も、草原もすべてが新しく、しかしどこか懐かしいのだ。
打ち寄せる潮の波にくるぶしを浸し、草の絨毯に転げまわって、今は森林浴にご満悦なのだ。
当然行軍は遅々として進まない。


……シャーネもあんまり悪い気はしてなさそうなんだよね。
木登りに挑戦し、頂点を極め、あたりを見渡しながら、火乃香は自分に言い訳をする。
ふと下を見ると、シャーネがディバックから刀を取り出していた。
ただ、どうもその手つきが怪しい。

火乃香はぱっと空中に身をおどらせ、2メートルの高さを難なく着地する。
「いまさらだけどさ、シャーネ。あんたの戦闘手段てなに?」
シャーネは考えるそぶりを見せて、軽く素振りをして見せた。
「やっぱ短剣の類か……」
頬をかきながら答え、んー、としばらく天を仰いで、決めた。
「その刀と、この剣、交換しない?」
頷いて、シャーネはそっと刀を火乃香に差し出した。

――武器を手放すのは抵抗あるかと思ったけど、案外あっさりいったわね

自分が思うほど、みなが好戦的というわけでもないのかもしれない。
そう思いつつ、火乃香も腰の双剣をはずして

 天宙眼に背後の森から接近する何かを捕らえた。

双剣を渡しつつ目配せをする。
――ケツから女を襲うなんて、どっかの誰かみたいだ。
ため息が出る。
どうにも生き物が多すぎて天宙眼の働きがよくない、さっきよりも悪化している。
おまけにまだ試し切りもしていない刀。
不安要素ばっかりだ。
でもこれぐらいのハンデはどうということはない。砂漠でいくつもの死線を越えてきた。

そして天宙眼が見えないモノをとらえた。


一方、ヘイズ一行はエドゲイン君捜索中、ほのかを視認で確認する。
二人うなずきあい、戦闘態勢に移った。
(I-ブレイン35%で起動、未来予測開始)
ヘイズは木の幹に隠れつつそちらを向く。女?が2人、バンダナが長物で金色の目が短刀を装備。
こちらは森、向こうは草原、おそらく視認まではされて無はず、
それでも相手が先に気づいたということは相手は何らかの索敵能力を有すると考えられる。
下は地面、靴での理論回路形成は無理、
ヘイズは慎重に策を練リ続ける。
こちらの攻撃手段は基本的に遠距離攻撃、相手は近接が主体の可能性が高い
こちらに近接武器は無し、相手の遠距離攻撃能力は不明だが仕掛けてこないところを見ると主力ではない
相手はこちらに比べ優秀な策敵能力を有する
相手に警戒態勢、ただし敵意があるかどうかは不明
大雑把な選択肢は3つ、
1攻める2逃げる3呼びかけを行う
「逃げるのはなしだな、索敵能力と短刀が危険すぎる、追い詰められる可能性が大だ」
コミクロンにささやいた。
「敵意があるとはかぎらんだろ、ここは平和的に話し合いを…」
「俺もそうしたい」
ヘイズは続ける
「だが、コミクロンは近距離戦闘は専門外だろ、殺意があった場合、即ゲームオーバーになる、
 武器を狙え、無力化して降伏勧告をする、話し合いはそれからだ
 もし格闘を挑んできたら見晴らしのいい草原へ弾幕を張りながら逃げる、いいな」
「了解だ」
「俺はバンダナ、もう一人は任せる、2人同時発動は出来ないからアンタが先だ。
 うまくすればあのどちらかが騎士剣かもしれない、いくぞ」
コミクロンが構造を組み立てて、ありえないことが起こった。

バンダナが金色の目を突き飛ばした。二人とも構造の外へ転がっていく。

「なにっ」
(――稼働率85%で再設定 ノイズ減算成功、予測演算成功、『破砕の領域』発動)
ヘイズは急いでバンダナの手元に計算をあわせ、指をはじく
またもバンダナがそれに気づいた、腰だめに刀を構え

『砕!』

(――未知のノイズ感知、稼働率80パーセントに低下)
その一閃で理論回路はかき乱された。

しかしヘイズも今回は予測していた、見えているなら消される可能性もある、と
だから冷静に、三撃目の用意をしていた。
(――予測演算成功、『破砕の領域』発動)
刀をめがけ理論回路が展開される。見えているなら、見えていてもよけれないタイミングで攻撃するだけのこと。
バンダナは手を押さえ込み、刀が手から零れ落ちる。

「森から出る、接近させんな、手を上げて攻撃の意思の無いことを示しとけ」
コミクロンに指示を飛ばし、自分も両手を上げながらゆっくりとした足取りで森を出る。
バンダナは目をしばたかせながら、無手で構えるた。

――こいつも理論回路が見えてる、刀も解体できなかったところを見ると普通の武器じゃねぇな

一方金色の目のほうはバンダナのほうを向いてわけが分からないという顔をしている。双剣をしっかり構えてはいるが……

――あっちは見えてねえか、おそらく策敵能力を持っているのもバンダナだな、森に逃げ込まれると厄介だ、

森と二人の間を塞ぐようにヘイズは両手を、コミクロンは左手だけを挙げて移動する
もちろん二人とも手を挙げたところで攻撃に支障は無い、戦闘はまだ続いているのだ。



【F-5/北東境界付近/1日目・11:00】

【チーム・ソードダンサー】

【火乃香】
[状態]:利き手に軽い麻痺(情報解体の影響 一過性)
[装備]:無手
[道具]:デイパック(支給品一式)  魔杖剣「内なるナリシア」は落としている
[思考]:1戦闘からの離脱 2シャーネの人捜しを手伝う


【シャーネ・ラフォレット】
[状態]:健康
[装備]:騎士剣・陰陽
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:1状況を把握する 場合によっては赤髪 三つ編は殺す 2クレアを捜す


【凸凹魔術師】

【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:砂袋
[道具]:支給品一式
[思考]:1バンダナ、金眼の武装解除 騎士剣なら交渉、決裂なら奪取 2刻印解除構成式の完成。
[備考]:刻印の性能に気付いています。


【コミクロン】
[状態]:軽傷(傷自体は塞いだが、右腕が動かない)
[装備]:未完成の刻印解除構成式(頭の中)
[道具]:無し
[思考]:1戦闘が終わったから相手との平和交渉、情報交換 2刻印解除構成式の完成。3クレア、いーちゃん、しずくを探す。
[備考]:服が赤く染まっています。

【備考】
戦闘状況は現在も続行中、
両チームとも海上遊園地へ向かう。

【残り85人】

2005/04/30 修正スレ76-78
2005/05/05 修正スレ83

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