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第080話:魔王陛下の判断

作:◆qEUaErayeY

ゲートをくぐり最初に飛ばされた場所は、普段自分が通う学び舎には似ても似つかない造りの学校であった。
自分が通う聖創学院大付属高校は規模も設備も充実している。それに比べここは図書館一つとっても
月とスッポンとまではいかないが、それに近い差があった。木造という時点で対象外だ。
実は小学校なのでは?とも思ったが揃えられている本にはなかなか興味深いものもあり、
質を重視する自分にとっては、建造物の構成など大して気にするほどのことでは無かった。

ここは3階の図書室。周りに遮蔽物も無いので月明かりが部屋に射し込む。
漆黒の髪に服。闇の中に居たらまず分からないであろう出で立ちをした少年、
空目恭一はそれを灯火代わりに本を読んでいた。

異界特有の枯葉の匂いもしなければ鉄錆の匂いもしない。つまり、ここは異界では無い。
それだけで情報は十分だった。例えここが異界だとしても、自分ひとりの力ではどうすることも出来ない。
しかも、ここから抜け出す唯一の条件が殺し合いの末、生き残る事となったら尚更不可能である。
自分の力量を熟知している空目は、自分に出来ることは皆無と判断して、デイパックの中身の
確認すらせずに一人悠長であった。
ここで、いきなり銃を持った敵が現れようが、階下が戦場になっていようが彼の対応は何も変らないであろう。
空目恭一とはそういう人間だ。
もともと生に執着しているわけでもない。そして、これといった恐怖も無い。
死を肯定しているわけでは無いが、人はいつか死に、それが早いか遅いかの違いで有り、
特に問題は無いのだ。常に死は訪れるものである・・・。

割と近くから聞こえる銃声にも、対した興味を起こさず、ただただ黙読していた。
そして、およそ2時間(弱)後に階下から聞こえる声にも、対した興味を起こさず、ただただ黙読していた。


【残り99人】

【D-2/学校3階図書室/一日目 02:45】
【空目恭一(006)】

状態:健康。かなり落ち着いている。
装備:無し
所持:支給品一式、アイテム不明
思考:読書。他に出来ることは無いと判断。

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