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第041話:運命

作:◆E1UswHhuQc

月明かりに照らされた砂浜。そこで聞こえるのは波の音だ。
 砂浜近くに一本だけ立っている木を背後に、新庄・運切はバッグを開けた。
 中にあったのは、
「……剣?」
 形状は角張った直刀。柄の長さは両手で扱う武器だという事を示しているが、しかしその刀身はそれほど長くない。
 複雑な彫金が施されているものの、宝飾の類はなにもない。
 鞘に包まれたその剣をバッグから取り出して、腕の中に抱いた。
「……佐山君」
 彼の名前を呟いて、一息。
 ここに彼はいない。
 名簿には、佐山・御言の名の他に、風見・千里、そして出雲・覚の名があった。
 ……殺し合いだなんて……。
 いけないよ、と口の中で呟く。いけないよ、と。
「きっと他に、逃げ出す手段が……」
「あると思うのか?」
 声は背後からした。
「……!」
「それを信じるのは賢い。疑うのは愚か。だが」
 首筋に金属を感じる。身を固くするこちらに構わず、声は続けた。
「世の中には愚かな人間の方が多い」
「あな、たは……」
「俺はどちらだと思う?」

 背後を取られ、首筋に刃物を突きつけられている。
 その状況で、新庄は言った。
「ボクに何か、聞きたい事があるの?」
「……なぜ、そう思う?」
「殺すつもりなら、話し掛ける必要はないよね。なのに話し掛けるってことはボクから情報を引き出したいんだ」
「さかしいな。だが図星だ……聞く。赤髪の女を見たか?」
 問われ、新庄は息を呑んだ。見ていない。そもそも誰かと会うのは後ろの相手が初めてだ。
 正直に答えたところで、殺される。しかし抗う術はない。
 新庄は答えた。一言。
「見てない」
「そうか」
 刃物が肉を断つ感触を予想して、新庄は目を閉じた。最後に彼の名を思い浮かべる。
 ……佐山君……!
 その刹那だ。虫の羽音にも似た振動音と、
「お……!?」
 打撃音がした。
「……!」
 振り向く。黒髪をオールバックにした、隻眼の男がナイフを片手に膝をついていた。
 そして、新庄の持っていた剣がいつの間にか抜刀され、刀身をさらしている。
「これ――!?」
「ちぃっ――!」
 隻眼の男は起き上がり様に、ナイフを投擲した。
 が、それは新庄の目の前で、不可視の壁か何かに弾かれた。
 男は再度舌打ちして、今度は銀色の糸を伸ばしてくる――しかし、それもまた弾かれた。


「……良い物を引き当てたな、娘」
 男はそれだけ言い捨て、暗闇に姿を消した。
 新庄は剣を手に立ったまま、茫然としていた。数十秒か、数分か。あるいはもっと。
 気付くと、剣はいつの間にか鞘に納められていた――それを抱きしめて、へたり込む。
「助かった……」

【A-6/砂浜/一日目1:20】

【新庄・運切】
[状態]:不安と恐れ
[装備]:蟲の紋章の剣
[道具]:デイパック(支給品一式) ウルペンの落としたグルカナイフ
[思考]:佐山達との合流

【ウルペン】
[状態]:殺せなかった苛立ち
[装備]:無手
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:ミズー・ビアンカの殺害

・蟲の紋章の剣(出典:オーフェン 効果:障壁力場形成・力場を利用した打撃)
・グルカナイフ(出典:フルメタルパニック) 

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