「帰郷<エリオル編>」
この町に来るのは何年ぶりだろう?
正確には思い出せないほど昔、わたしはここに住んでいた。
ぼくは初めてこの街に来ました。
けれど、とても懐かしいです。
そしてわたしはこの町で死んだ。
終焉の地に時を経て舞い戻ってくる者など、果たしてどれくらいいるだろう?
ぼくはまっすぐ家に向います。
初めて見る家。だけど、やはり懐かしのが不思議です。
ああ、あの頃のまま。花も木々も。木漏れ日の落ちる場所まで…いえ、さすがにそれは錯覚でしょうか。
ドアの軋む音すら、わたしに訴えかけているようだ。「おかえりなさい」と。
何度も何度も夢に見た椅子が目の前にあります。
いつか戻る主を待ち続けた椅子。そう、ぼくを。
わたしにはまだやらなくてはならないことがあるので。
だから、こうして帰ってきたのです。
ぼくにはこれからやらなければならないことがあります。
ぼくの心がそう命じるから。
それも長い時間ではありません。
もう少しで終わるでしょう。
そうすれば、ぼくはすっかりぼくになり、やっと本当に柊沢エリオルになることが出来るかもしれない…。