第九話・天蠍宮・蠍座の亞里亞
石田 「ここが8番目の妹の家、亞里亞ちゃんの家ですか?」
兄 「あっ!」
石田 「どうかしたんですか?」
兄 「いや、さっき山田を助け出したんで、手や服が飴でベタベタになってるんだ。
一度衛の家に戻って、着替えさせてもらった方がいいかなぁ?」
石田 「そうですねぇ、じゃあ一旦戻りますか。」
ザッ!!
?? 「待ちなさい!!」
兄 「うっ、あれは!?」
?? 「兄やさま!この亞里亞様の家まで来て、一体どこへ行くおつもりですか!?」
?? 「くすん・・・兄や帰っちゃうの・・・?」
石田 「あ・・・あれは、亞里亞!蠍座(スコーピオン)の亞里亞!!
そして、その横にいるのは、じいやさんだ!」
じいや 「ここまで来た以上、もはや戻る事も進む事も不可能ですよ・・・さあ、亞里亞さま。」
亞里亞 「♪らんららら〜ん ♪ららら〜」
兄 「うっ!な・・・何だこの美しい歌声は!?」
石田 「バ・・・バカな!体が麻痺して力が入らない!!」
じいや 「もはや、兄やさまに残された道は、ここで亞里亞さまと非血縁エンドを迎えるのみ!
うけろ!竹ぼうきの一撃!!」
ス カ ー レ ッ ト じ い や !!
兄 「うわぁ・・・何だこの攻撃は!!」
石田 「まるで、いとも簡単に掃除されるようだーっ!!」
ドオオオオオン!!
兄 「・・・・・・う・・・。」
石田 「・・・・・・がはっ・・・。」
じいや 「他愛も無い・・・とは言いません。ここまでの妹達を倒してきただけでもご立派です。」
亞里亞 「兄や・・・亞里亞とずっといてくれるの?」
じいや 「だが、兄やさまのお友達は他にもいたはず・・・。」
ジャジャーン!
じいや 「バ・・・バカな・・・お前は!?」
山田 「ふぃ〜、やっと追いついたぜぃ!」
じいや 「山田さま!?バカな!!山田さまは白雪ちゃんが始末したはず・・・!?」
兄 「や・・・山田!!血糖値は大丈夫か!?」
山田 「ああ・・・衛ちゃんが、スポーツドリンクをくれたんで、だいぶスッキリしたさ!」
石田 「山田・・・。」
山田 「さあ、立てよ二人とも!そして、みんなで非血縁エンドを阻止するんだ。
阻止しよう、阻〜止よう(そうしよう)。なんつって、アハハハ(笑)。」
じいや 「ダメですね・・・。」
山田 「だ、ダメ!?」
じいや 「そうだ、そんな低レベルのダジャレは、亞里亞さまの教育に悪影響です!」
亞里亞 「♪らんららら〜ん」
石田 「ああ!この歌は!?」
兄 「気をつけろ山田!身動きが出来なくなるぞ!!」
山田 「・・・じいやさん、まさかダジャレは低俗で無意味な物と思っているのか?」
じいや 「なっ・・・?亞里亞さまのお歌を聴いて、立っていられるとは!?」
兄 「山田!?」
山田 「笑いを楽しめなくなった人間は、もはや人生を諦めた老人に等しい・・・
ボクちんにとって、ダジャレは必要不可欠!
どんなダジャレも、時と場合によっては、必ず爆笑となるのだ!!」
ポーン!
亞里亞 「・・・じいや、これはなあに?」
じいや 「な・・・山田さま、一体亞里亞さまのドレスに何をおつけになったのですか!?」
山田 「かりんとう!日本伝統のお菓子だ!」
亞里亞 「亞里亞、お菓子だ〜い好き!」
じいや 「い、いけません、亞里亞さま!服についた物を食べるなんて、はしたない真似は許しません!」
亞里亞 「くすん・・・じいや・・・怖い・・・。」
山田 「じいやさん、亞里亞ちゃんの足元を見てみたら?」
じいや 「な・・・何ですか、この黒い動く物は!?これは・・・アリ!?
しかもアリの数がどんどん増えてくるとは・・・!!」
山田 「そのかりんとうには、白雪ちゃんの作った飴がべっとりついているからね。
どうやら、匂いに誘われて、集まってきたみたいだ。」
亞里亞 「うわぁ・・・アリさんたちも、一緒に食べようっていってます。」
じいや 「あ、亞里亞さま・・・くっ、これは早く洗わないとドレスに染みがついてしまいます!早く洗わねば・・・。
兄やさま、ちょっと亞里亞さまのお着替えをしてまいります。しばらくお待ちください!」
タッタッタッタッタッ・・・・
兄 「あっ・・・2人とも行っちゃったよ・・・。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
じいや 「兄やさま、お待たせいたしました。」
亞里亞 「兄や〜見てください〜。」
石田 「あっ、あれは学校の制服!?」
兄 「うう・・・なんて可愛いんだ!」
じいや 「うっ・・・いくらお誉めになってもキーはお渡ししませんよ。
先ほどはなぜか山田さまには効きませんでしたが、二度もまぐれは続きませんよ!」
亞里亞 「♪らんららら〜ん」
石田 「う・・・またこの歌だ!」
兄 「山田、気をつけろ!」
山田 「ん・・・別に何とも無いけど・・・?」
ガシャーン!!
じいや 「あ・・・あれは!?」
山田 「ああ・・・落としたら割れてしまった!?・・・そ・・・そんなぁ〜!!」
じいや 「あ・・・あれは、水樹奈々最新アルバム『DREAM SKIPPER』!?
そうか・・・山田さまは水樹奈々さんのファン・・・!
それで亞里亞さまの声には耐性があったという事ですか・・・!!」
山田 「ああ・・・ボクちんの大事なCDが・・・。」
じいや 「・・・ですが、今の動揺している山田さまなら、どうにかなるかもしれませんね。
さあ、亞里亞さま、頑張ってください!今がチャンスですよ!」
亞里亞 「亞里亞、兄やのためにがんばって歌います。♪らんららら〜ん ららら〜」
山田 「うわああーっ!!な・・・なんだ、この歌は!?
まるで全身の骨が溶けるようだ――!!」
じいや 「亞里亞さまの美しい歌声は人間の中枢神経を刺激し、恍惚と共に全身を麻痺させるのだ!
他の妹達とは違い、攻撃的な萌えではなく、癒しと共に萌えを感じるゆとりをあたえるもののです!」
兄 「な・・・なんだと・・・?」
じいや 「亞里亞さまのお歌は全部で15小節。
その15小節を歌い終わる前に答えを出さなければ再起不能になりますよ・・・!」
兄 「う・・・。」
じいや 「降伏か至福か・・・さあ、どちらですか兄やさま!!」
亞里亞 「♪らんららら〜ん」
兄 「うああーっ!!」
ドサッ!!
じいや 「ただし過去に置いて亞里亞さまのお歌を最後まで聞けた方はおりません。
せいぜい5、6小節で快楽と共に発狂するか、気絶するか、
興奮して亞里亞さまに抱きつこうとする所を私が叩きのめすかのいずれかです!!」
兄 「くうう・・・だが、ここでやられるわけにはいかない・・・。」
山田 「僕は死にましぇ〜ん!・・・って、古いか。」
亞里亞 「♪らんららら〜ん ららら〜」
兄 「ぐ・・・ぐああーっ!!」
じいや 「これで9小節・・・これ以上聞いたらたとえ助かっても廃人になりますよ・・・。
さあ、お答えください、降伏か至福か・・・。」
兄 「う・・・。」
亞里亞 「兄や・・・眠っちゃったの・・・?」
じいや 「もはや全身が痺れて何もわからないようですね・・・。
では、私が最後に「スカーレットじいや」で止めを・・・。」
山田 「ざ・・・残念だがその体勢で最後の一撃がうてるのか、じいやさん。」
じいや 「な・・・まだ口がきけるとは・・・一体!?・・・うっ!?
なんだこれは!?両足が地面に凍り付いている、いつの間に!?」
山田 「い・・・一体何度寒いギャグを言ったと思っているんだ。だてにボケていたわけじゃないんだぜ。」
じいや 「ば・・・馬鹿なあれほど軽んじていた山田さまのダジャレが・・・わたしの両足を凍りつかせていたとは。」
山田 「最後の一発は俺が撃たせてもらう!うけろ、じいやさん!これがこの山田、取って置きのギャグだ」
じいや 「うっ!?」
ホーロドニー・滑るチ!!
じいや 「な・・・何という寒いギャグ!?ものの見事に滑っている!!・・・これではさすがの私も・・・。
ですが、山田さま。周りも見た方がよろしいかと・・・。」
山田 「なに!?」
兄 「うう・・・何という寒さだ・・・。」
石田 「こ・・・凍え死ぬ・・・。」
山田 「バカな。こ・・・これは!?」
じいや 「確かに山田さまのギャグは強力・・・ですが、それは同時に味方をも凍らせる両刃の剣なのです。」
山田 「うう・・・な・・・ならば仲間が凍りつく前に・・・じいやさん、あなたを倒さねば・・・。」
じいや 「無駄な事を・・・約束通り最後の止めを打ち込んで差し上げます。」
ス カ ー レ ッ ト じ い や !!
山田 「うわぁーっ!!」
ドシャア!!
じいや 「・・・山田さま、恍惚の中で昇天し本望でしょう・・・。これで・・・。
な・・・こ、これは!?」
亞里亞 「・・・エヘン!エヘン!」
じいや 「こ、これは、亞里亞さまは風邪を引かれている!?
い・・・一体いつの間に!?」
亞里亞 「・・・じいや、亞里亞の頭の中で小人さんがドンドンって、ジャンプしています・・・。」
じいや 「うう・・・兄やさま達を倒す事に夢中になっている内に、
山田さまのダジャレで冷え切った空気の中、亞里亞さまが風邪を・・・。
なんと言う失態・・・これでは亞里亞さまに仕える者として失格。
戦いには勝ったが・・・この勝負、私の敗北だ・・・!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
兄 「う・・・ここは・・・。」
じいや 「気がつかれましたか、兄やさま。」
亞里亞 「兄や、大丈夫?」
兄 「うっ・・・なぜ僕はベッドの中に・・・。一体何があったんだ・・・?」
じいや 「兄やさま、私の負けです。これ以上亞里亞様に無理をさせるわけには行きませんので・・・。」
兄 「・・・よくわからないけど、もう亞里亞やじいやさんと戦わなくてもいいのかな?
・・・あれ?いつの間にか上半身がハダカに!?」
じいや 「今、兄やさまが休んでおられる間に、服をお洗濯いたしましたよ。飴でベタベタでしたからね。」
亞里亞 「兄や、亞里亞もゴシゴシって、兄やのお洋服を洗いました。
そうしたら、シャボン玉がいっぱい出てきて、 」
兄 「そうか・・・ありがとう、亞里亞、じいやさん。
・・・そういえば、山田も服がベタベタだったはずだが・・・。」
じいや 「それならご心配なく。山田さまなら、私が庭のプールに突っ込んでおきましたので。」