第七話 処女宮・乙女座の可憐
石田 「さて・・・次の妹の家に行きますよ。」
兄 「うう・・・名残惜しいが、仕方ない。」
雛子 「おにいたま、行っちゃうの?ヒナ、さみしくなっちゃう・・・。」
兄 「ごめんね、また今度たくさん遊んであげるから、いい子にしてるんだよ。」
雛子 「うん!ヒナ約束するよ!・・・ねえねえ、おにいたま、今度はどこへ行くの?」
兄 「次?可憐の家だよ。」
雛子 「あのね、ヒナ、前に咲耶ちゃんが言ってたのを聞いたの。
可憐ちゃんはね、『最もヒロインに近い妹』だって。」
兄 「えっ?『最もヒロインに近い妹』?・・・一体どういう事だ?」
雛子 「あと、こんな事も言ってたよ。『絶対に可憐ちゃんの髪形を変えさせるな』って。」
兄 「髪形・・・?」
雛子 「そうだよ、『可憐ちゃんが髪形を変えたら、みんなが悶える』って。
ヒナ、ちゃんと咲耶ちゃんが言った事わかるんだよ。くししし。えらい?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ドシャッ!!
兄 「うわっ!!」
石田 「だ・・・大丈夫ですか!?」
可憐 「もー、お兄ちゃん!レディの部屋に入る時はノックぐらいしてください!
いきなり飛び込んでくるなんて、痴漢さんみたい!」
兄 「な・・・なんだって?」
石田 「まってください!・・・可憐ちゃんと問答している暇は無い・・・。
雛子ちゃんが言ってたはずだ、可憐ちゃんの髪形を変えさせてはならないと・・・。
その前に、なんとかしなくては・・・。」
兄 「う・・・しかし・・・。」
石田 「よし・・・今度は私が!!行くぞ、可憐ちゃん!!」
バッ!
偽 ・ マ ッ ス ル リ ベ ン ジ ャ ー !!
兄 「ゲゲーッ!これはキン肉マンマリポーサの技!
空中高く飛び上がり、落下の威力で頭突きを喰らわせる、ロビンマスクも苦戦した、大技だーっ!!」
ガシィッ!!
石田 「なにい!?」
兄 「バカな?落下する石田くんの頭を片手で受け止めただと!?」
可憐 「この程度の技に苦戦するとは、ロビンマスクという人も、大した事無いんですね。」
石田 「う・・・。」
可憐 「さて、可憐がこの手をひとひねりすれば、石田さんの頭が落ちますが・・・。
いきますか?ポトリと。」
石田 「うわあああ〜〜〜!!」
ドシャッ!!
兄 「い・・・石田くん!?」
石田 「うう・・・何とか首は繋がっています・・・。」
兄 「つ・・・強い・・・。」
石田 「これが可憐・・・乙女座(バルゴ)の可憐 !!
まさしくこの妹は・・・ヒロインに最も近い妹だ!!」
ピキィィィン!
可憐 「さあ、お兄ちゃん・・・これを見て!」
兄 「な・・・なんだこれは!?可憐の服が光り始めた!?」
ビ キ ニ 天 魔 降 伏 !!
兄 「うわぁぁぁあ!!突然可憐が着ている服が、ビキニの水着に変わったぁ!?」
石田 「その未成熟な体と衣装のアンバランス、そして恥らう表情にノックアウトだぁぁぁあ!!」
ドォォォォォォン!!
兄 「・・・・・・う・・・。」
石田 「・・・・・・がはっ・・・。」
可憐 「・・・お兄ちゃん、ここまであっけないとは思わなかった・・・。
でも、ここまで戦ってきたのは、鈴凛ちゃんや雛子ちゃん・・・。
・・・人気度を考えれば、ここまで勝てたのも不思議じゃないわね。」
石田 「うう・・・。」
可憐 「まだ萌えたりないのかしら・・・?
・・・可憐は確かに、12人の妹の中でも最もヒロインに近い妹と呼ばれています。
でも、他の作品の正統派ヒロインと比べて、まるで持ち合わせていない物が一つだけあるわ。
それは、自我を抑制する心。お兄ちゃんのためなら、男の子でも張り倒しちゃうんだから・・・。
うふふ・・・。」
バシッ!!
可憐 「痛い!・・・手に・・・何かが飛んできた!? こ・・・これは・・・シャープペンシル!?」
?? 「そうだ!だが可憐ちゃん、オレの友人をそこまでした以上、その程度では済まないかもしれんな・・・。」
可憐 「あ・・・あなたは・・・好雄さん!?
「ときめきメモリアル」の早乙女好雄さん!?一体なぜあなたが、こんな所に!?」
好雄 「フッ・・・言っただろう。オレはコイツの友人だと。」
可憐 「こいつって・・・まさかお兄ちゃんと!?」
好雄 「違う・・・そこで眠っている、石田だ。」
可憐 「石田さん!?」
好雄 「そうだ・・・このサイトの管理人は、自分の名前を使うのが恥ずかしいので、
“石田”という名前を使って『ときメモ』をプレイしているんだ。」
可憐 「そ・・・そういう事なの・・・。」
好雄 「フッ・・・しばらく寝ていろ、石田・・・いや、“うみくん”・・・。」
可憐 「そ・・・それが、ゲーム内でのあだ名なのね・・・。
・・・でも、そんなことより、あなたがこの私に勝てるかしら?足元を見て・・・。」
好雄 「なんだと?・・・な!これは!?」
ピチャーン
好雄 「ばかな!?足元に大量の水が!?こ・・・これは幻覚か!?」
可憐 「ウフフ・・・幻覚じゃないわ。
それは涙。今までにお兄ちゃんと結ばれない事を嘆いて、私が流した涙よ。」
好雄 「なんだと!?がはっ・・・溺れる・・・!」
可憐 「ウフフ・・・『涙は女の武器』って言うけど、まさにその通りね。」
好雄 「むおおおお〜〜〜!」
可憐 「無駄よ!好雄さんに、そこから這い上がるなんて無理だわ!!・・・・・・・・・!?」
バァァァン!!
可憐 「な・・・これは・・・私の涙が消えていく!?」
好雄 「フッ・・・可憐ちゃん。この好雄、恥ずかしながら彼女イナイ歴18年。
流した涙の量では、お前には劣らん。涙の扱いには慣れているのだ。」
可憐 「ウフフ・・・そうね。あなたはもてない男子の象徴のような男。
・・・この程度の涙で倒すのは無理ね。」
好雄 「なに?」
可憐 「なら、これはどうかしら?さあ、好雄さん。今から6つの世界を見せてあげる。
その中から、一番気に入った世界を選ぶといいわ!」
同 人 界 六 道 輪 廻 !!
好雄 「こ・・・これは!?なんだ、この魅惑の世界は!?」
「ラブひな界」!
登場する女子が全員主人公を好きになる、ハーレム状態!!まさに、もてない男子の楽園(パラダイス)!!
「ネットゲ−界」!
「RO」「FF」などに代表されるオンラインゲームの世界!!一度ハマると睡眠時間激減は必至!!
「幼女界」!
CCさくら、どれみなど小学生以下の女子に萌える禁断の領域!!喰いたければ喰らう、けだものの世界!!
「格ゲー界」!
ナコルル、さくら、かすみなど格闘ゲームのヒロインたち!!コスプレイヤーに高い人気を誇る!!
「泣きゲー界」!
往年ギャルゲー界の主流となった、泣けるゲームの数々!!悲壮なストーリーが、同人作家の刺激を誘う!!
「百合界」!
「マリみて」に代表される、女子と女子の禁断の恋愛!!ここ数年の成長は目を見張る物がある!!
好雄 「う・・・うわぁぁぁぁぁあ・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・
可憐 「・・・落ちましたか?・・・次に目覚める時には、サークルを作ってコミケに応募しているわね。
さて、どこの世界に落ちたのかしら?
ゲーム好きなあなたなら、格ゲー界か泣きゲー界といった所かしら・・・?」
カッ!!
可憐 「なっ!?」
好雄 「・・・フン!何だ今の技は!!」
可憐 「バカな!?同人界六道輪廻を受けて、立ち直るとは!?」
好雄 「残念だが、オレは『ときメモ』のメンバーとしてギャルゲー界のトップを走ってきた人間。
こんなものに落ちるほど軟弱な奴だと思うな!!」
可憐 「な・・・好雄さんの小宇宙が萌え上がっている・・・この形は不死鳥・・・いえ、メモ帳!?」
好雄 「この学校内の全女子のデータが詰まっているメモ帳は、オレの血と汗と涙の結晶。
これがある限り、オレは倒れん!
さあ、次はお前の番だ!お前こそ、どの同人界がいいか選べ、可憐ちゃん!」
可憐 「ウフフ、残念だけど私はむしろ同人のジャンルになる方のキャラクター。私には無意味よ。」
好雄 「な・・・なんだと!?」
可憐 「好雄さん・・・あなたはサブキャラとはいえ、ギャルゲー界のトップに君臨した男。
そんな人を、素のままで同人界六道輪廻に落とそうと言うのが間違いだったわ・・・。
だけど・・・これを見ても、この場に踏みとどまれるかしら?」
ゴゴゴゴゴゴゴ!
好雄 「な・・・なんだ!?可憐ちゃんの萌えが増大していく!!これは!?」
可憐 「この乙女座の可憐の最大奥義を今から好雄さんに見せてあげるわ!!」
純 情 可 憐 天 舞 宝 輪 !!
好雄 「う・・・か、可憐ちゃんの、髪形が・・・ポニーテールになったぁ!?」
ピキーン!
好雄 「う・・・うなじが眩しい!!バカなっ!?ぜ、全身が麻痺していく・・・!?」
可憐 「そうよ、好雄さん。私の萌えの力で、あなたは五感を次々に失っていくのよ。
今、失ったのは触覚ね。
これでもう、体育祭のフォークダンスで女子の手を握ってドキドキする事もできないわ!」
好雄 「な・・・なんだと!?」
可憐 「次は嗅覚よ!!」
カッ!
好雄 「うっ!!」
可憐 「ウフフ・・・息苦しい?これで、鏡さんの香水の匂いをかぐ事もできなくなったわね。
さて、触覚、嗅覚の次はどこを破壊してあげましょうか?」
好雄 「う・・・なんという萌えの力だ・・・!これがもっともヒロインに近い妹の力!?」
カッ!
好雄 「うっ!!あ・・・う・・・ぐ・・・。」
可憐 「どう?話せないでしょ?好雄さんの味覚を破壊した。舌が麻痺したのよ。
2度と虹野さんのお弁当を食べる事も叶わないわね。」
好雄 「う・・・う・・・・・・。」
可憐 「ウフフ・・・残りもまとめて破壊してあげるわ?」
カカッ!
好雄 「うぐっ!?」
可憐 「これで視覚と聴覚も失ったわね。もはや女子のプールの授業を眺める事もできないわ。
さあ、五感を失った好雄さんにもはや私の萌えに対抗する力は無いわ!
今度こそ同人界六道輪廻に落としてあげる!とどめよ!」
ダン!
石田 「ま・・・待ってくれ!」
可憐 「・・・石田さん?・・・目が覚めたんですか?でも、萌え疲れたあなたに何が出来るかしら?」
石田 「くっ・・・だが、好雄がやられている所を黙ってみているわけにはいかない!」
好雄 『待て!!』
ゴゴゴゴゴゴ!
可憐 「バ、バカな!?五感を破壊され、もはや好雄さんは屍も同然のはず!?・・・こ、これは!?」
石田 「な・・・好雄の妄想力が肥大していく!?
これがまさか、究極の小宇宙・・・萌えセブンセンシズ!?」
可憐 「そ、そうか!五感を封じられ、より内側の力・・・妄想力が大きくなったのね!!
・・・う・・・このままだと!?」
ガバッ!
好雄 『さあ、可憐ちゃん、このままオレと十億万土とやらの彼方まで行ってもらうぜ!!』
可憐 「キャッ!!・・・こ、これは・・・お姫様抱っこ!?
は・・・離して!!お、お兄ちゃん以外の人に、こんな事をされるなんて・・・か、可憐・・・!」
好雄 『さらばだ石田!お前は、そこのお兄ちゃんに頑張って最後までツッコミを入れるんだぞ!!』
石田 「よ・・・好雄ーッ!!」
ダダダダダダーーーーーーーッ・・・・・・・・・!
石田 「か・・・可憐ちゃんを抱いたまま、走って行ってしまった・・・早乙女好雄・・・・ありがとう・・・。」