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LVT−(A)1 アリゲーター

2005年10月26日 完成


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 米軍の水陸両用車両、LVTです。LVTというのは、「Landing Vehicle Tracked」の略です。要は、上陸用装軌車両ということです。だから、正確にいうと戦車ではありません。

 この車両は、フロリダの大湿地帯エバーグレードで、不時着した飛行士やハリケーンの罹災者を救助するために開発された、水陸両用トラクターが元になっています。このトラクターは、フロリダ名物のワニからアリゲーターと名づけられました。そして、1937年10月4日号の『ライフ』に取り上げられたことをきっかけにして、米海兵隊の目にとまり、さっそく兵器用に改修が施されて導入されることになりました。

 さっそく生産されたLVT-1は、ガダルカナル、タラワへの上陸に使用されました。しかし、当初の車両は装甲がなく、日本軍の砲火によって大損害を受けます。そこで、装甲を施して37ミリ砲で武装を強化したのが、このLVT-(A)1です。(A)は「Armored」、装甲化を意味しています。(徳田八郎衛『間に合った兵器』光人社、より)

 めちゃくちゃデカイ割りに、装甲はペラペラです。日本軍の速射砲(対戦車砲のこと)や野砲で簡単に撃ち抜けたようです。いつもシャーマンのようなデカイ戦車に悩まされていた兵隊さんたちは、LVTを倒して相当喜んだようです。

 実車解説はこのくらいにして、模型の話です。今回は、操縦席隣の前方機銃のない、初期型を作りました。初期のLVTは、ネービーグレーで塗装されていました。カラー写真やDVDを見ると、軍艦と同じような色に見えたり、濃いネービーブルーに見えたりしたので、Mr.カラーの軍艦色(1)とネービーブルーの混色で塗っています。その後、エナメルのフラットブラック+レッドブラウンで丁寧に墨入れをしています。溶接跡なども同色で塗って強調しました。最後に油彩の茶系の色で、ウォッシングのようなことをしています。適当に色を乗せた後、ペトロールをつけた綿棒で、縦方向に拭き取ってあります。面倒&現状に満足したので、ドライブラシはしませんでした。

 エデュアルドから、アリゲーター用のエッチングパーツが出ていますが、使用していません。というより、完成してから存在を知りました。砲身もメタルに変えたかったのですが、キットのままです。砲身は、同じくエデュアルドのM3スチュアート用が使えます。アリゲーターの砲塔は新設計のものですが、砲はM3軽戦車と共通です。

 後部のディフレクター(泥除け)は、キットのままだとやはり分厚いです。昔のAM誌の作例では、プラバン等で自作していましたが、エデュアルドのエッチングパーツにはこの部品も含まれているようです。

 このパーツは破損しやすいようで、写真でもよく壊れているものを見かけます。土浦の自衛隊武器学校にあるLVT-(A)5も、右のディフレクターがなくなっています。

 お尻の部分は、資料を見ながらもう少し作りこんでもよかったと反省。

 履帯が、塗料やサフが乗らない素材だったので、ラッカーパテを大量に盛ってみました。ラッカーパテも、強く擦るとすぐに剥げるので、注意が必要です。

 この車両は、上陸以外にも湿地帯などで使用されていたようで、泥んこになっている写真が結構あります。泥の中を走ると、このように上のところにも泥や草が溜まったようです。

 手前にピントが合ってしまって、ピンボケですが。北海道の筆塗りモデラー、おとしぶたさんを倣って、マーキングを手書きにしてみました。

 後部の銃座です。ぶっちゃけ用途が不明です。あまり使えなかったようで、後のタイプでは廃止されています。こんなところから頭を出していたら、真っ先に戦死しますね。

 アンテナは、伸ばしランナーで製作しています。アンテナの連結部は、ラッカーパテを盛って表現しました。実際のアンテナは、数本のパイプを連結しています。昔のAM誌には4本のパイプを連結しているとありますが、写真で確認したところ一番長いものは5本繋いでいるようです。ケースバイケースで色々な長さで連結しているようで、基部のみ、1本、2本・・・と色々な写真が確認できました。

 写真を見た感じでは、洋上航行状態のときに、アンテナを紐でくくって曲げているようです。内陸部の写真では、アンテナはまっすぐ立てている写真だけでした。しかし、収納の都合でアンテナは結んでみました。釣糸では、ピンとした張りが再現しにくかったので、刺繍糸を使って結びました。

 足回りは、アクリルのフラットアースを吹いた後、ドライブラシで仕上げています。流行のパステルは使用していません。パステルを使わなくても、このような表現が可能です。

 アップにするとこんな感じです。泥がこべりついて、乾きかけている状態を表現しています。

 組み立てがほぼ完成してしまってから、資料本を入手してしまったので、手を入れなおしたいところがそのままになっています。まぁ、これは塗装の練習ということで。