なぜ私はこんなにCWシナリオを作るのか
著・泉獺(H16.4/18)
――なぜ私は、三十本以上のカードワースシナリオを作っているのか?
――なぜ私は三十本以上のカードワースシナリオを作ることができるのだろうか?
カードワースの面白い点は、そのゲームをプレイするのみならず、自分がそのゲームを作ることができるという点にある。しかも、HSPやRPGツクール作品のように自己完結したものでなく、連続性がよく保たれていることだ。
そして尚且つ、敷居が低い。難解なスクリプトの知識も、複雑大容量の素材も必要としない。いや、使おうとすれば使えないこともないのであるが、使わなくとも充分によい作品はできる。
寧ろ、高尚とさえ言われるちんけな宝物をありがたそうに押し戴いて誇らしげにしていながら作品全体を損なってしまうことすらある。それならいっそのこと、使わなければいい!
さて、そろそろ次の質問に対する回答を明示することが適当であると思われる。ここで、私の手法を紹介しよう。読者諸兄に何らかの啓示となれば幸いである。
1.短編
振り返ってみると、私の作品はどれもそう長いものではない。長編とされる「陰陽師の依頼」シリーズとて、他のシナリオ作者にしてみれば中編の部類に入るだろう。
ところで、短編にすれば製作期間が短いのは言うまでもない。労力やコストも安上がりである。
2.シンプルなシステム
技術屋には悪い癖がある。それは、自分の持っているあらゆる技術を駆使してできるだけ複雑で難解なシステムを作り上げようとすることだ。
それを専門とする技術屋なら、喜んで、あるいは妬んでついてくるであろう。しかしかなしいかな! 大部分の人間は理解に苦しみ、頭痛と吐き気を催す!
そしてなにより、複雑怪奇なシステムにはバグが多いということだ。システムの構築に時間を割き、バグ潰しに時間を割き、それでいて与えられる賞賛は少ない。何と割に合わないことか!
3.ネタが尽きない
三十本もシナリオを作っていると、ネタ切れにならないかと心配する向きがある。又、ネタ切れで困っている人たちもいる。
しかし私はネタが尽きないコツを会得している。一言で言うと、情報の窓を多く持っているということだ。諸々のアイデアは情報の窓から挿し込む光より生じる。その光は曙光のときもあり、夕陽のときもあり、月光のときもあり、星々の宴のときもある!
4.一連の手続き
なにもカードワースシナリオに限ったことではないが、手順を踏むことが重要だ。簡単に言うなら、
構想→下書き→素材収集→製作→バグ潰し→公開
となる。しかるに多くの人が、構想からいきなり製作に取り掛かろうとする。そんなことが許されるのは、海図も水先案内人も持たないで航海できる天才航海士、神々の寵愛を一身に集めているディオスクロイぐらいのものだ!
かくして凡人は挫折する。天の高みに上ろうとして殺されたベレロフォンのように。
最後に、私はあなた方に言葉を贈ろう。私の言葉ではない。しかし私の言葉である。そして私の警告ではない。しかし私の警告である。
わたしはあなたがたに言う。舞踏する星を産むことができるためには、ひとは自分のなかに混沌を残していなければならない。わたしはあなたがたに告げる。あなたがたはまだ混沌を自分のなかに持っていると。
かなしいかな! 人間がもはやなんらの星を産むことができなくなる時がくる。かなしいかな! もはや自分自身を軽蔑することのできないもっとも軽蔑すべき人間のときがくる。(ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』)
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