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桃の子桃太郎(十八)

 桃太郎が生きるの死ぬもこの一戦にあり。
 天清浄、地清浄、内外清浄、外清浄、六根清浄。天の神、地の神、屋の内には井の神、庭の神、竈の神、神の数は八百万(やおよろづ)。過去の仏、未来の仏、弥陀、薬師、弥勒、阿 、観音、勢至、普賢に智慧文殊。誰でもいいからすがりたい。誰でもいいから加勢してくれよと心のうちで祈りつつ、門を破り守衛を屠り、庭を横切り衛兵潰し、扉を壊して衛士を殺し、鬼神もかくやの突入劇。
 それにひきかえ鬼どもは、まさか子供と動物が殴りこんでくるとは夢にも思わず油断を突かれ、気付いた時には後の血祭り。
 かくして桃太郎はパーティー会場に突入し、コニャックでヘベレケの鬼の大将を捕まえて、いざ覚悟と棍棒の一撃を下そうとすれば、鬼の大将は酔いから醒めて、涙ながらの命乞い。
「米ドルもユーロも金塊も美女も、なんでもやるから命だけはどうか助けてくれ。助けてくれればこのご恩は一生」
 と哀訴すること九跪三拝。
 さてどうしたものかと躊躇した桃太郎、そこへ雉が助け舟を出す。
「そうしましょう。ここは平和的解決を。」
 そこで桃太郎は大将の命を取らぬかわりに、鬼ヶ島の財産の数々を、鬼ヶ島の豪華貨客船に載せて日本に持ち帰ることにしました。鬼ヶ島は貧乏でも、大将のところにはあるものです。
 こうして船に積まれたのは米ドル札1トン、ユーロ紙幣500kg、福沢諭吉10万枚、南アフリカ産の金塊700kg、喜び組50名。
 桃太郎一行は財宝満載の船に乗って鬼ヶ島を後にしました。
(続く)

参考:近松門左衛門「卯月紅葉」
©IZUMI_Kawauso
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