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桃の子桃太郎(十七)

 鬼の手強さとしたたかさを2ちゃんねるで知り尽くしていたつもりの桃太郎、ここは徹底的にやらないとこっちが殺されると思って、一騎当千の気概で沿岸を警備していた鬼どもに襲いかかると、金属バットで一人叩き殺し二人叩き潰し三人叩き割って、あっという間に屠りました。
 鬼に金棒、鬼のパンツは虎の毛皮でできている、とは言うけれど、金棒は資源不足と燃料不足でロクに造られず、虎の毛皮は食糧不足で虎が密猟し尽くされているので滅多に手に入りません。そこで金棒のかわりに松の木の棒、虎の毛皮のかわりにビナロンで間に合わせ、恫喝して諸外国から脅し取る食糧は先細りで今日の飯にも事欠く有様。こんな窮状ではいかに鬼でも本領を発揮できず、栄養状態の良すぎる桃太郎に秒殺されてしまったのでした。
「なんだ、楽勝じゃん。」
 この緒戦に気を良くした桃太郎、幸先はいいぞと犬・猿・雉を鼓舞して、鬼の大将がいるであろう鬼ヶ島の中心部へ向かって駆けて行きました。

 道はデコボコで舗装されていませんでした。それをつぶさに見た猿は、
(根釧もひどいが、こっちの方がもっとひどい。ODAで道路を造ってやれば、しこたま儲かるに違いない。)
 と、獲らぬ鬼ヶ島の皮算用。

 しばらく進むと、巨大で豪華な建物が目の前に現れました。門には
「木蘭館」
 と大書してあります。それを見た犬がしたり顔で、
「これはムーランカンと訓むんや。鬼の大将が毎夜ここで秘密パーティーを開いとるそうやで。」
 と、SAPIOで仕入れた雑学を披露。へぇ〜。
 門の向こうの建物を見ると、煌々と明かりが漏れ、中から楽しげな音楽が聞こえてきます。
「ここに大将がいるに違いない! ものども、突撃ぃ〜!」
(続く)

(C)IZUMI_Kawauso
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