桃の子桃太郎(七)
桃太郎は松茸があるという山の地図を父親からもらって、一人で山へ行きました。
山へ行ってみると、なんとそこは謎の白装束集団に占拠されていました。全身真っ白の服を着た人たちが、木という木の間に真っ白な布を張り巡らし、真っ白なワゴン車を山道に停めて、白だらけの生活を送っていたのです。
これを不思議に思った桃太郎、偶然通りかかった山菜取りのおばちゃんに、あれは何かと尋ねました。
するとおばちゃんは、相手が白装束を着ておらず、しかも子供だったこともあって気を許し、桃太郎に白装束集団への愚痴をこぼしました。
「あいつらは突然やってきて、あの山を不法占拠したのよ。」
桃太郎の現在の知力では、不法占拠の意味などわかりませんでしたが、それでも悪いことらしいのはわかりました。
おばちゃんは続けました。
「勝手に居座っちゃってねぇ。どうにかならないものかしら。」
これを聞いた桃太郎、
(だったら、やっつければいい。あいつらは悪者なんだから、ブッ殺してもいいんだろう。それに松茸もとりたいし。)
と早合点。おばちゃんに別れを告げると、白という白に覆いに覆われた山へトコトコ登って行きました。
そこかしこに白い布が張り巡っておりましたので、桃太郎は布をつかむや、力まかせに引き倒してズンズン進んで行きました。
するとそれに気付いた白装束集団の若い衆が、あわてて駆け寄ってきて、桃太郎を排除せんものとその襟をつかんで持ち上げようとしました。
すると桃太郎、襟にかかったその手をガッシリつかんでねじり上げ、相手が怯んだところを力まかせにえいとブン投げて谷底へ叩き落しました。
それを見ていた他の白装束どもが一気呵成に桃太郎めがけて襲いかかるも、そこは負けじと桃太郎、持ち前の怪力を発揮して、白装束という白装束をつかんでは谷底へ投げ飛ばし、殴っては谷間へ叩き落し、助教授だろうが女教祖だろうが貴賤男女の差別なく、白装束と見れば千仭の谷へ真っさかさま。獅子奮迅の働きとはまさにこういうものでしょう。
こうして白装束の人間たちを全部やっつけると、次は残っていた白いワゴン車やら何やらを谷間に投げ込んで後片付け。谷底に落ちてもなお生き永らえてアザラシのように転がっていた白装束も、上から降ってきたワゴン車が直撃してとどめを刺されました。
さあ、これで邪魔者はいなくなりましたので、桃太郎は松茸をとり始めました。桃太郎は松茸という松茸を、採りに取って獲り尽くし、松茸の種の種までとり尽くし、山には松茸の「ま」の字さえ残しませんでした。
こうして桃太郎は大量の収穫を袋に入れて、意気揚々と帰ってゆきました。
その後、その山から松茸は姿を消して二度と生えてはきませんでした。桃太郎が徹底的にとり尽くしてしまったからです。
そのかわり、夜になると白装束集団の亡霊が現われて、山道を走る車に祟りをなして、衝突事故やら追突事故やらを引き起こすようになりました。
(続く)
(C)IZUMI_Kawauso
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