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桃の子桃太郎(八)

 家に帰った桃太郎、松茸の詰まった袋を母親の前にドンと置いて、
「松茸をいっぱいとってきた。すごい量だから袋の口から一つ一つ抜き取っておくれ。ひっくり返しちゃダメだよ、家が松茸で埋もれてしまうから。」
 母親はまさかそんなことはあるまいと、袋をひっくり返して中の松茸を全部出そうとしました。
 すると出るわ出るわ、松茸の大洪水。あまりに出るもんだから母親は埋もれてしまい、更には部屋いっぱいに松茸が満ち満ちました。
 それを見ていた桃太郎、最初はゲラゲラ笑っていましたが、母の叫びを聞くと袋を持って松茸を元の通りに詰め込みました。

 それにしても松茸の量たるや尋常ではありません。こりゃ食い切れないぞと思った両親は、それぞれのやり方で大量の松茸を捌きました。
 母親は近所中に松茸をおすそわけ。驚嘆と賞讃と感謝と羨望、そして配った松茸以上に大きな嫉妬を買いまくりました。
 父親は松茸を闇ルートに流し、しこたま儲けて稼いだ現ナマを銀行の貸し金庫に入れました。

 その日の夜、桃太郎は松茸を食いに食って食いまくりました。
15個食べて松茸の味を学び、
20個食べて若干の腹持ちを感じ、
30個食べて便意をもよおしトイレに立つも、
40個食べて便意に惑わされなくなり、
50個食べて「醤油を取ってくれ」という親の命令を知り、
60個食べて命令が耳に順うようになったので醤油を渡し、
70個食べて「こんなに一度に食ったのは古来より稀」と親に言われ、
77個食べて喜びがピークに達し、
80個食べて食欲が落下傘。
88個食べて米が恋しくなり、
90個食べて松茸を卒業したくなり、
99個食べて頭が真っ白になって、
100個食べてもう上がり(おわり)。
(続く)

(C)IZUMI_Kawauso
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