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桃の子桃太郎(四)

 桃太郎はすくすくと育ちました。と同時にものすごい量を食べました。粉ミルクを一缶空けると一缶分育ち、米を一俵呑み込むと一俵分育ちました。
 両親これには驚いて、
「この分だと老後の蓄えがあっという間に食い潰されるぞ。」
 そこで一計を案じて、桃太郎には、不祥事で買い手のつかなくなった雪印牛乳を飲ませ、O-157疑惑で売れなくなったカイワレ・狂牛病騒動で値崩れした牛肉・政府が緊急輸入したタイ米などを食わせて食費を節約しました。その一方で自分たちはこっそり隠れて魚沼産コシヒカリを食べていました。
 そのうち桃太郎は外に出て、少子化でめっきり数が減った近所の子供たちと遊び始めました。と同時に喧嘩もしました。桃太郎は大食いで培った怪力を発揮して、近所のクソガキどもをちぎっては投げちぎっては投げ…。
 少子化で子供の数が少ないので、桃太郎はあっという間に投げ尽くしました。しかしそれではモノ足りないと感じ、ついさっき自分が投げ飛ばして地面に転がっている子供たちをひっつかんで、再びちぎっては投げちぎっては投げ…。
 ただでさえ少子化で少なくなっていた子供の数が、こうしてますます少なくなってしまいました。
 このことを知った両親は驚いて、
「この分だと近所から子供という子供が絶滅するぞ。いや、ひょっとしたらその前に桃太郎がヤマトタケルごっこや樺美智子ごっこをやり出すかもしれない。」
 そこで一計を案じて、桃太郎をフランスの外人部隊に入れることにしました。桃太郎を軍隊に入れて根性を叩き直してもらおうと思ったのです。
 しかし問題がありました。桃太郎はもちろん、両親はフランスに何の縁もゆかりもありません。せいぜい、フランスパンを食べたことがあるくらいです。ですから、どうしてよいか全くわからなかったのです。
 それでも、合法・非合法を問わずにさまざまなツテをたどって、どうにかこうにかコネのある人にたどり着きました。
 しかし更に問題がありました。桃太郎がまだほんの子供であったため、年齢制限に引っかかるのでした。あと10年くらい待てば入れるかもと言われましたが、とても10年も待てません。
 両親はやむなくフランスの外人部隊を諦めました。
(続く)

(C)IZUMI_Kawauso
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