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桃の子桃太郎(三)
こうしておじいさんとおばあさんは若返りました。そのさまは次のようでありました。
ハゲ山に青々と春の草木が繁り
頭を垂れた一本の枯すすきが 天を衝く樫の大木となる
しかもその大木たるや 水を吸ってはちきれんばかり
しなびた双子の瓜がたわわに水々しく
永らく閉じられていた肉体の門が開かれる
しかもその門たるや夜露に濡れそぼつ
かくして二人は、はるか昔に過ごした愛欲の日々を思い出し、復活させました。
天と地が互いに接近し
おしべとめしべがくっついて
凸が凹を差し塞ぎ
天空が雨を滴らせて大地に降り注ぎ
陰と陽が交じり合った
おじいさんとおばあさんは快楽に溺れるあまり避妊を忘れていたので、やがておばあさんは妊娠し、十月十日(とつきとおか)の後に月満ちて一人の子供を産みました。子供はふくよかで手足の太い、元気な元気な男の子でした。
この子は桃が機縁となって産まれましたので、二人は桃太郎と名付けました。肉体は若返っても、二人のネーミングセンスは老人のままだったようです。
(続く)
(C)IZUMI_Kawauso
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