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桃の子桃太郎(一)

 昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
 おじいさんは体がどこも悪くないのに病院へ行き、おばあさんは暇潰しにカルチャーセンターへ行きました。
 おばあさんがカルチャーセンターの職員に散々無駄話をして、その帰りがけに、護岸工事で両脇がコンクリートで固められた川へさしかかると、上流から桃が一個、浮きつ沈みつ流れてきました。
 診療報酬の値上げや年金のカット、それに超低金利などで今後の生活に不安を覚えていたおばあさんは、無駄な出費は切りつめようと心掛け、心がすっかり貧しくなっていたので、すかさず桃を拾い上げて、食料の足しにしてやれと思いました。
 しかしどこから来たかわからない桃には、何があるかわかりません。
 遺伝子組替え食品かもしれません。
 ダイオキシンに汚染されているかもしれません。
 炭疽菌が仕掛けられているかもしれません。
 そこでおばあさんは、ひとまずおじいさんに毒味をさせてみることにしました。
 よしんばおじいさんが桃を食べてくたばったとしても、おじいさんにはそこそこの保険を掛けてありますので、おばあさんは保険をせしめ、その上財産を一人占めできるのです。それはそれでまあまあ結構なのです。
(続く)

©IZUMI_Kawauso
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