国の基準を超える農薬や抗生物質が残留している疑いの強い食品の輸入元に対し、厚生労働相が厳重チェック
を義務付ける「検査命令」が急増している。今年既に10件(自主検査2件を含む)にのぼり、昨年1年間の11件に
並ぶペース。このうち8件が中国産食品だ。厚生労働省は「水際で防ぐのは、もう限外」と判断し、特定国の食品を
輸入禁止にできるよう、食品衛生法を改正する方針だ。
厚労省によると、2月と4月に中国産養殖ウナギから、国内で使用が禁止されている合成抗菌剤のスルファジミジ
ンが検出されたのをはじめ、今年になって中国産野菜5品(大葉・パクチョイ・ケール・ニラ・ホウレンソウ)、フィリピ
ン産オクラと台湾産のセロリに基準違反が見つかり、各輸入元に検査命令が出された。命令を受けると、輸入元は
自費で厚労省指定の検査を受け、違反がないことを証明するまで食品を販売できない。
さらに、食品衛生法施行令で検査命令の対象とされていない中国産の2食品(ハチミツと下ゆでホウレンソウ)か
らも、抗生物質のストレプトマイシンなどが検出され、同省は輸入元に自主検査をするよう指導している。
中国側の調査によると、同国で昨年流通した野菜の50%近くで残留農薬が安全基準を超え、多数の中毒患者
が発生している。厚労省は今年1月を中国産野菜の検査強化月間とするなど監視を強めているが、基準を超える
農薬や抗生物質の検出が相次いでいる。東京都も来月から中国産野菜の検査を強化する。
EU(欧州連合)には相手国の衛生管理などに問題があると判断した場合、その国の食品を包括的に輸入禁止
できる法律があり、1月には中国産の畜・水産物の全面輸入禁止に踏み切った。日本では検査命令を出して安全
を確認することしかできず、自民党から「EU同様の禁輸措置を取れるようにすべきだ」との意見が出ていた。この
ため、厚労省は法改正作業に着手し、禁輸措置を発動する基準や相手国の不服に対する対応策などを検討して
いる。 【須山勉】
【ことば】輸入食品の検査
輸入食品は空港や港にある検疫所の監視員が抜き取り検査し、農薬や抗生物質などの残留をチェックし、違反が見つかると廃棄や積み戻しを命じる。違反が見つかった食品については、その後全品検査を実施し、この段階でさらに違反が見つかった場合は、厚労相が輸入元に検査命令を出すことができる。(毎日新聞)
|