あれからひと月半、日本の態度が“不審”としか思えない事件がある
。ほかでもない、北朝鮮?不審船の引き揚げ問題への政府の対応である
。右を見、左をうかがう優柔不断さは“亡国的”というべきかもしれな
い。
▼まるでうやむやにしてしまいたいかのような日本に業を煮やしたの
だろう。米国のアーミテージ国務副長官は「船は北朝鮮のものと確信し
ている」と語り、バウチャー国務省報道官も「(引き揚げの)要望があれ
ば喜んで協力する」と語った。日本の背中を押してくれたのである。
▼ところが不可解にも、福田官房長官はその礼もいわずに「いま引き
揚げの時期がきているわけではない」などと奥歯に物のはさまったいい
方をした。田中前外相も「遺留品の調査を待って…」と、これまたあさ
っての方角を向いて話していた。
▼一体、この事なかれ主義、あるいは触らぬ神にたたりなしといった
態度はなんなのだろう。沈没現場はなるほど中国の排他的経済水域だが
、9・11以降、中国は国際テロ根絶に同調している。それからしても不
審船引き揚げに「ノー」というはずはない。「イエス」でないと理屈が
合わなくなる。
▼北朝鮮にしたところで反対はできないはずなのだ。北は「日本のヤ
クザだけが行える不法な海賊行為」であり「許しがたい現代版テロ」な
どと口を極めて日本をののしった。そうであるなら北としても、沈船引
き揚げは“ぬれぎぬ”を晴らす好機のはずである。
▼日本としては川口新外相がその資質と手腕をみせる試金石ともなる
だろう。川口さんは“女性の涙”の名答で世間をうならせた。二月十六
日は金正日総書記の誕生日だという。沈船引き揚げの政府声明は、何よ
りの誕生日プレゼントではないか。
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