昔々、この世の始まるときのことです。 
その頃はまだ空と海しかなく、陸はありませんでした。一羽の鳥(猛禽)が空を飛んでいました。 
鳥は休むところを探していました。 
ところが彼が休めるところは空にも海にもありませんでした。 
疲れ切った鳥は一計を案じて、空と海を喧嘩させようと思い立ちました。 
とりは空に向かってこういいました。 
  「海が君のことを沈めてしまうぞ、といってるぜ」 
それを聞いて、空はこう答えました。 
  「不幸な奴め。海がせり上がってきたら、私は海に岩や島を投げこんでやる。 
そうすれば重みで上がってこられまい」 
鳥は海に行き、空の言葉を伝えました。 
海は怒って、激しい波を起こし始めました。 
  「これで奴も、私の恐ろしさがわかるだろう」 
波はどんどん上がり空に近づきました。 
これを見た空はかんかんに怒り、海に向かって、岩や島を投げつけました。 
岩や島の重みで海は沈み、元の水位に戻りました。 
そして、それ以上あがることができなくなったのです。 
海の間からは、陸や島が顔を出しました。 
こうして鳥は、自分の休む場所を作ったのです。 
鳥が島で休んでいると、節ふたつ分の長さの竹が、海岸で洗われていました。 
竹は波に揺られた拍子に、鳥の足を強く叩きました。 
鳥は場所を変えましたが、また、竹は近づいてきて鳥の足を叩いてしまったのです。 
鳥は怒って竹に飛びつき、くちばしでつつきました。 
強くつついたので、竹は割れてしまいました。 
すると、一つの節の中には、褐色の肌をした丈夫な男の子が寝ているではありませんか。 
もう一つの節には、身体の柔らかい女の子が入っていました。 
髪は長く、足まで伸びています。 
ふたりは広大で静かな島に佇みました。 
このふたりこそが、最初の人間です。 
男の名はシララク。女の名はシカバイ。 
男は女にこういいました。 
  「結婚しよう。結婚して、この世に子供をたくさん増やそう」 
しかし、女は首を横に振りました。 
  「どうして結婚できるの。私たちはおなじ竹から生まれた兄弟なのよ。 
もし結婚したら、マグアイやマラオンの神に罰せられるわ」 
  「怖がることはないさ。大丈夫だ。どうしても心配なら、海にいる魚に聞いてみよう」 
二人は海岸に行き、自分たちが結婚していいかを、魚に聞きました。 
魚はこう答えました。 
  「大丈夫だとも。私たちは兄弟同志で結婚して、子供をたくさん増やしている」 
女はそれでも不安でした。 
ふたりは今度は山奥に行き、木の枝で休んでいる鳥に尋ねました。 
鳥の答えは魚と同じでした。 
女はそれでも神の怒りを恐れて、男の結婚を受け入れません。 
  「ねえ、私たちが結婚していいかどうか、大地の神様に聞いてみましょうか」 
男は大地の神・リノクに尋ねました。リノクは答えました。 
  「大丈夫。結婚して、子供をたくさん増やすがよい。神は怒ったりしない」 
これで女は安心しました。 
魚(海の意志)と鳥(空の意志)とリノク(大地の神)が認めたのですから。 
ふたりは結婚し、女はやがてたくさんの子供を生みました。 
ところが、子供たちは怠け者に育ってしまったのです。 
食べて寝るばかりで、仕事をまったくしません。 
両親が生計を維持しきれなくなっても、彼らは働こうとしませんでした。 
両親は勇気を振り絞って、子供達を家から追い出そうと決心しました。 
父親は太い棒を持ち、子供達が遊んでいる部屋に行き、叫びました。 
  「出ていけ。出て行かないとたたき殺してしまうぞ」 
子供たちはあわてて逃げ出しました。 
あるものは寝室に、またある者は居間に。 
壁の陰や台所、また、遠くに逃げ去るものもいました。 
そして、時は流れました。 
寝室に逃げた者の子孫は首長や貴族になり、人々に尊敬されています。 
居間に逃げ隠れたものは、兵士や貴族になりました。 
壁の陰に隠れた者は奴隷になりました。 
台所のよごれた煙突の中に隠れた者はネグリート族になり、今では、山岳部に住んでいます。 
そして、遠くに逃げた者は今では世界各地に散らばっています。 
これが人類の始まりです。 
「竹から生まれた人間」 (全文フィリピンの民話より引用) 
 
いかがでしたか? 
本当は必要な記述の所だけ抜粋しようかと思いましたが結構面白く興味深い内容だったので、 
全文載せてみました(^^)。 
竹取物語にノアの箱船、トリックスターの存在。偶然にしては面白い伝承です。 
もしかするとフィリピンと言う国の歴史が、神話伝承に様々な影響をあたえてるのかもしれませんね。 
何せヒンドゥー教、道教、キリスト教の三つの宗教の神々が一つの神殿に 
一緒にまつられてたりするらしいですから(今手元に詳しい資料がないのではっきり言えませんが)。 
あとイスラム教も少しですが信仰してる人々もいるらしいですし。なんか日本みたいですね。 
ですから、ペルソナ倶楽部の掲示板の方ではリノクの解説に 
ドゥルガーの解説があてられているのは間違いだと言ってたことも 
もしかすると間違いではない(?)のかもしれません。 
ただし、おっさん個人の見解はリノクはドゥルガーの方ではなく 
パールヴァティーがフィリピンの宗教世界にとけ込んだのが同一視されたのではないかと思います 
(あくまで個人的意見です)。 
いや実は未だ少ししか読んでないのですが(そりゃそーだ)、結構おもしろいですこれ。 
タイトルからひろいだしても辺地版シンデレラやおやゆび姫(フィリピン民話です!!これ)等 
じっくり読んで楽しみたいと思います。 
いや〜一時は全然資料がなくどーしようか? と8月31日の小学生状態でしたが、 
なんとかしっぽの付け根くらいまでは握ることができたかと思っています。 
ただ文献でこれ以上の探そうとすると大学の図書館か 
こういうものを研究している所にいかないと困難だと思います。 
秋になったら民族学博物館でも覗いてこよーかな?まだつぶれてへんやろ多分。 
それでは。 / おっさんサマナーさん 
追伸:今回はあまり役に立ちませんでしたが間違いなく情報の宝庫ですここ。 
下に紹介しときますね。ここからあちこちに飛べます。 
●神話・民話の森 
http://www.sciencevillage.com/Humanity/9-index.htm 
 
 
 
KAZ / 全文を送って下さるとは思いませんでした。 
いつも本当にありがとうございます。 
さて、リノクなのですが、召喚時の台詞が 
妾は大地の女神… 
シラクとシカバイから生まれし人の子よ… 
人の営みは大地から離れてはあり得ぬものですよ 
 
とあるので文献と一致しますね! 
う〜ん、リノクの正体まであとちょっとなんだけど…惜しいです。 
神話・民謡の森の方もかなりいろいろなサイトへと飛べるので 
皆さんの好きな悪魔・ペルソナについていろいろ調べてみては如何でしょうか? 
 
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