降りることはないさ。 この妙な胸騒ぎも気のせいだ。 遅刻の不安と試合への緊張がそう感じさせているのだ。 そう思うことにした。 ここで降りたって仕方ない。 タクシーは進む。 もう、かなり走った気がする。 気づけばその間、一度も信号にひっかからない。 いや、そういえば信号自体全然見ない。 ……どういうことだ? やっぱり変だ。 「運転手さん、畠瀬卯総合運動公園まで向かってくれてますよね?」 ……と言おうとしたが、口が動かない。 橋野を見ようとするも、身体が動かない。 ……まったくの金縛りにあってしまった。 運転手が振り向く。 なんとも形容しがたい表情。 しかし、笑っているのはわかる。 そして……その顔は人間のそれではなかった。 俺達はどこへ連れて行かれるのだろう? 朦朧としてきた。 もうどうでもいい。 遅刻の恐怖や試合の緊張ともおさらばだ。 俺の本能がささやく。 “俺達はきっと生きて帰れない……” ― GAME OVER ― →初めから |