俺はアーチェリーの試合に行くのだ。 なぜなら俺はアーチェリー部で、 今日は試合の日だからだ。 ……なのに、なのに。 なぜ俺は弓を忘れてきたんだ…… 俺のばか! 駅まであと少し。 だが、引き返さねばならない。 なぜなら俺はアーチェリー部で、 弓がないと試合ができないからだ。 本当に俺のばか! まぬけ! 自分のアホさ加減に呆れる。 が、呆れている場合じゃない、急いで帰らねば。 試合場には電車に乗って行かねばならない。 早く取りに戻らないと乗り遅れてしまうのだ。 こんな田舎じゃ、一本乗りそびれると20分は待たないといけない。 どうせアーチェリーは個人競技である。 別に俺が遅れて迷惑をかける訳でもないのだが、 うちの部の顧問はいかんせん恐い。 あの恐怖を味わうのは御免だ。 そして俺は家路を急ぐ。 家に戻ると母親が驚く。 「どーしたの隆幸。熱でもあるの?」 「……弓忘れた」 「……アンタってひとは……」 急いで部屋に戻り、ボウケースを持ち再び駅へ向かう。 俺は目一杯走った。 だが、JRは無情だ。 時刻表が俺を嘲笑う。 あと一分くらい待ってくれてもいいじゃないか。 俺の遅刻は確定してしまったのだろうか。 ……いや、俺はあきらめない。 なんとかして、間に合わせてみせる。 とは言え、どうしたものか…… →やはり電車で行く →果敢にも徒歩で行く →タクシーで行く |