橋野とは2日前喧嘩してしまった。 部室に置いておいた俺のぶんのうまい棒を、橋野が食べてしまったのだ。 俺は激怒した。 というのも、そのうまい棒はめんたい味だったからだ。 これがチーズ味やなっとう味なら文句は言わなかっただろう。 しかし、よりによってめんたい味を……! 奴とは10年来の親友である。 めんたい味を俺が好いているのを橋野はよく知っているのだ。 ……なんて。 我ながら大人げなかった。 うまい棒一本でキレてしまった己に嫌気がさしている。 和解せねばならないことはわかっている。 だが、今はちょっと声をかけづらい。 電車が着いてバスが待っていたら同じバスに乗らなければならず、 どうせ顔を合わせることにはなるのだが、 電車はあと半時間は着かない。 気まずい時間を過ごすのが億劫だ。 俺はそっと隣の車両に移動した。 ― 30分後、電車は降車すべき駅に着いた。 橋野に気づかれぬように改札を出る。 バスよ、待っていてくれ…… と、俺の祈りもむなしく、 目の前でバスは発車してしまった。 橋野も呆然とバスを見送っている。 →橋野に話しかけるか →もう帰ってやる |