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tomiyumi webその他もろもろ音楽についていろいろ ― 転調(4)[いろいろな転調]

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転調(4) [いろいろな転調]


ひきつづき岩沢転調曲について書くつもりでしたが、
ここでよくある転調の分類をしてみようと思い始めました。
ということで分類してみます。


【同主調への転調】

同主調とは、主音が同じで、長短が逆の調のことです。
つまり、Cに対してCm、
Fmに対してFといった具合です。

ドミナント、つまりV度のコードには
長調でも短調でもメジャーコードを使うことが多いので、
それを利用した転調などがよく見かけられます。
「C(I)→F(IV)→G7(V7)→Cm(Im)」とかね。


【平行調への転調】

平行調とは。

長調の平行調は、主音の短三度下の音を新たな主音とする短調、
短調の平行調は、主音の短三度上の音を新たな主音とする長調です。

わかりにくいな。

Cの平行調はAm、
Dbmの平行調はE、
といったぐあいです。

Cのキーだと、
「C、D、E、F、G、A、B、C」が
「I、II、III、IV、V、VI、VII、I」という音階です。

すなわち、
「P1、M2、M3、P4、P5、M6、M7、P1」という並びです。
長音階ですから。

そこで、このままの音程で、
「VI、VII、I、II、III、IV、V、VI」としてみます。
つまり、
「A、B、C、D、E、F、G、A」とします。

そしてこのAを新たなI度としますと、
「P1、M2、m3、P4、P5、m6、m7、P1」となるのです。
これは自然短音階ですので、キーはAmです。

このような関係にある調を平行調というのです。

ここで、例えばCというキーを同主調(Cm)にするということは、
「C、D、E、F、G、A、B、C」を、
「C、D、bE、F、G、bA、bB、C」とすることですから、
ある調を同主調にするにはbが必要になります。

これに対し、平行調の関係においては、
#やbを使わないで長調と短調を交代できます。

つまり、キーCを平行調Amにするとは
「C、D、E、F、G、A、B、C」を
「A、B、C、D、E、F、G、A」とすることですから、
#やbを必要としません。
同じ音を使った長・短調なのです。


【属調・下属調への転調】

属調とは、属音を新たな主音とする調です。

属音とは、主音のV度上の音です。

つまり、キーCの属調はG、
Amの属調はEmです。


下属調とは、下属音を新たな主音とする調です。

下属音とは、主音のV度下(IV度上)の音です。

つまり、キーCの属調はF、
Amの属調はDmです。


【その他の転調】

以上の、同主調、平行調、属調、下属調は、
近親調」とよばれます。

そして一般に、近親調の近親調も、関係の比較的深い調といえます。

例えば、キーCに対する同主調はCmで、
そのCmの平行調はEbです。
このCとEbは近親調の近親調という関係です。

このCとEbのような、
長調なら長調どうし、短調なら短調どうしの、短三度の関係。
この関係にある調への転調も、かなりよく見受けられます。
ビートルズとかもよくやっていた転調です。

キーCに対し、キーEbは短三度上。

Cを主音として言えば、短三度上のEbの音は、
短調を強く感じさせる音です。

その、短調のアイデンティティーのような音を主音として、
新たな長音階が作られているわけです。


この転調がなされると、なんといいましょうか、
普通以上の安堵感みたいなものを僕は感じることが多いです。
安堵感でなくても、なんだか柔らかい感じがするのです。

逆に、短三度下への転調もよくあります。

キーCに対して、キーAへの転調。
キーAの主和音は、「A・C#・E」。
前回も「泣きのコード」なんてたわごとを言いましたが、
その泣きのコードを一時的に使うんじゃなく、
そのコードを主和音として完全に転調してしまうのです。

Cの音はC#にもちあげられ、
新しい音階にはCは出てこないことになります。

この転調がなされると、なんといいましょうか、
ふわっと浮かぶような、ねじれるような感じがします。
そしてなんだか尖ったような感じがするのです。

これらの転調は、前回までにも出てきた、
「VIb→VIIb→I」というコード進行を用いてなされることが多いです。

例えば、キーCからキーEbへと、上へ転調する場合。
「Ab→Bb→C」というのが、「VIb→VIIb→I」です。
これを、「Ab→Bb→Eb」としてしまえば転調のできあがりです。

この進行は、キーEbから見ると、
「IV→V→I」という基本的な進行になっているのです。
このワザは使いやすく、自然に聞こえるのでよく使われています。
間奏で使われてたりすることが多いかな。

逆に、キーCからキーAへと、下に転調する場合。
「F→G→C」という「IV→V→I」という基本進行があります。
これを、「F→G→A」としてしまいます。

すなわち、キーAにとっては、
「VIb→VIIb→I」となるのです。
これもよくあります。

これらの転調は単独で使われるよりは、
お互い行ったり来たりすることが普通でしょう。
つまり例えば、
AメロBメロがキーCで、
サビで短三度上に転調しキーEbになる、
そして次のAメロで短三度下のキーCに転調、元に戻る、
といった具合。

属調・下属調の転調にも同じことが言えます。
キーCで始まった曲が属調のGに転調し、
Gにとっての下属調であるCに転調し元に戻る、
という感じです。


【移調】

例えばサビが一曲のうち3回あって、
最後のサビだけ少し高い、という曲がよくあります。
そのように、コード進行やメロディの枠組みをそのままにして、
主音をずらして調を変えること
移調といいます。

例えば、
「C→Am→Em→F→G→……」
という部分を
「D→Bm→F#m→G→A→……」
とすれば、キーCからキーDへ移調したことになります。


以上、これらの転調がとてもよくある転調ですが、
これ以外の転調ももちろんたくさんあります。
ていうかなんでも自由です。

ちなみに、前々回の「灰皿の上から」は、
CとGの間の転調なので、属調・下属調の転調です。
前回の「おやすみ」は、
AとF#の間の転調であり、短三度間の転調ということになります。
いずれも、普通に比べ転調のしかたが少しヘンですが。
そのヘンなのがよいのですがね。


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