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スイカと高橋名人
 Bugってナイト 2002/05/31 at SHIBUYA CLUB kinoto
 TEXT & PHOTO by FBI(ファミコン少年団REUNION)

 出 演
 オーラルヴァンパイア
 ゲリラチャン
 久保亜里沙
 天野めぐみ
 宇宙ヤング
 高橋名人
 DJ コイデヒロカズ

 アートワーク
 upa
 ヨシムラヨシユキ

 (アーティスト名敬称略)
ハニー
*rockets★painter* [Homepage]

タツノコプロfeat笹キミヒト?
illustration by upa
 渋谷駅にて []
 正直、期待していませんでした。名人の歌声と宇宙ヤングのパフォーマンス以外。
 今では脳裏にその名を刻み込んだオーラルヴァンパイア、ゲリラチャンにも、当初は
 予備知識ゼロ。さらにアイドルまで来るらしいとなると、高橋名人の歌声を楽しみに
 してくる自分のようなファミコン戦士は場違い感にさいなまされるだけではないかと。
 渋谷のライブハウスには、全身ピアッシングでないとダメなんじゃないかと。
 したがって、自分の中では「今日は9時スタート」と割切った態度で、話相手の友人を
 長野から呼び寄せてありました。退屈への備エ有レバ憂イ無シ、という意味で。
 完全に開場後の乙に到着すると、高橋名人や笹キミヒトと挨拶を交わせましたが気分は
 晴れません。ステージには、オーラルヴァンパイアが出ているところでした。
 果たして、高橋名人登場までに何度シビレを切らすのでしょうか。不安です。
 駅周辺に、警察官が必要以上に集結していました。一瞬、歩行者誘導が必要なほど
 イベントが盛況しているかと思いましたが。ワールドカップ特別警戒体制でした。
 今日は乙スタッフも営業を諦めていたかもしれません。5月の予定紹介紙の「31日は
 ・・・。秘密だよ!」に、コメントしづらい様子が伺えてきます。ところが…
もんすたーさぷらいずどゆう
 オーラルヴァンパイア [] [Homepage]
 このユニットは、ホームページ上のある写真が角川映画のサイコホラー作品をパロった
 ような感じで印象に残り多少は興味がありました。ステージ片隅で、いわゆるハイパー
 ビートの中を真っ赤なジェイソンマスクをつけた人が蠢いてるんです。怖いです。
 このフォースの揺らめき、このプレッシャー、どこかで経験した覚えがあります。
 中学生の時、僕が焼きそばパンを買いに走らされた小林くんのソレに似ている気がします。
 それはウソですが、気が付けば聴衆側では体で妙なリズムを取っている人がいるじゃないですか。
 おそらく彼は、「全身で音を感じてしまい大興奮!」とか後で言ってまわるつもりでしょう。
 DDRが罰ゲームにしか見えなかった自分にとって、リアクションが強要される場というのは
 キツイものがあります。幸い、彼一人のアドリブ行為だったらしく、大人しく聞いているのも
 アリのようで安心しましたが、一瞬、ダイエットの秘訣は一日10分の欽ちゃん走りと信じる
 くらい「ありえない光景」を目にした気がしました。ところで、アーティストへの印象より
 会場の雰囲気の感想が殆どで、写真も殆ど撮れてないのですが、混雑した会場の慣れない風景
 に溶け込もうと必死に居場所を探していたからです。プチ自分探し?友人はエキゾチカ嬢に、
 「カッコイイ」との感想を持ったらしいですが、それは同感です。ええ、とても。
キライじゃありません
 ゲリラチャン [] [Homepage]
 「登場するなり後ろ向きのトークを連発する女性ユニット」として、なぜか強烈に印象に
 残りました。それは将来性を考えると、良いのか悪いのか微妙な点になるでしょうけれど。
 ピンクレディーが(殆ど)最初の音楽体験だった自分に、銀色の衣装はラブリーな凶器です。
 しかし、音楽自体の殺傷能力は残念ながらピンキリ。「円周率を覚えよう」がテーマの曲
 がありましたが、物体の透過率のほうが良かったと思います、というのは真実から目を
 背けた感想で。この問題については、ACOの「船頭多くして舟山に登る」を思い出したと、
 それ以上の言及は控えさせていただきたいです。ただし、ゲリラチャンの本質は「覚え系」
 なのかも知れません。次のライブを、ロックの日、ハニーの日とゴロ合わせで、聴衆の
 大脳へ巧みに刷り込む手法からすると、その可能性は十分に考えられ、円周率がライブの
 レパートリーに含まれていた必然性を少しだけ感じたりもしないではありません。
 マイナス方面の磁性も強かったけれど、プラス方面の引力を更に強く感じました。
 密かにファン心理が生まれてしまったかも知れませんが、逆に迷惑がられる可能性も大。
 生まれてしまってすみません。
この後、衝撃の事実が
 久保亜沙香 [] [Homepage]
 おそらく、笹キミヒトのゲスト紹介MCが最も緊張を帯びていたのは彼女の時のはずです。
 しかし、数分の後に高橋名人の愛人(友人)宣言によって失恋が確定してから、なにやら
 気持ちが吹っ切れたようでトークのテンポが格段に良くなった気がしました。
 元々、桃太郎電鉄のキャンペーンでハドソンとは関係があったという関連で、今回の出演
 が実現したらしいですが、これが宇宙ヤングミラクルもしくは笹マジックの真髄です。
 気分的には、ここぞとばかりにシャッターを切りまくりたかったのですが、久保亜沙香を
 目当てに来ていて写真撮影を自粛しているファンに悪いなというか、会場のボルテージも
 高まって一触即発のテンションだったので「敢えて」必要最小限の枚数に抑えましたが、
 涙の味が塩辛い事を久しぶりに思い出しました。小学生の頃、靴を隠されて裸足で下校
 した時の思い出がよみがえりました。まあウソですけど。
 それはそうと、背後にスモークが発生していたんですが、乙あなどりがたし。
 なんでもアリなんですか!これなら、渡辺真理奈のシークレットライブも開催可能です。
 ありえませんが。
名人と併せてバンダナで登場
 天野めぐみ [] [Homepage]
 さすがにアイドル二人目になると、会場最前列に陣取っているのが彼女たちのコアなファン
 である事に気付いて、写真を撮っている場合でない空気を悟ったり、高橋名人の出演が
 迫っている時点でのバックステージの風景を撮影するべきという優先順位の判断が働いて、
 途中から聴いていません。彼女のおかげで、初めてフルコーラス聴いた曲もあったりして
 良かったと思いますが途中で抜けてごめんなさい。会場から一段と暑い声援があがって
 いたりして、ファミコン戦士は最初から頭数に入っていなかったような気もしますが。
 今にしてみると、彼女の写真が少なくてかなり滅入ってしまいます。
 久保亜沙香と天野めぐみというのは、同じ事務所に所属するアイドルらしいです。
 公式サイトのデザインがバラバラですが、ヒョットして彼女たち自身に作らせてますか?
 プラチナエス [Homepage]
楽屋は意外に真剣な空気
 控え室にて []
 ノックも無しにドアを開けると、張り詰めた空気が音をたてて圧倒してきました。
 そして、次に目に飛び込む黄色のシャツの高橋名人?!いや、似ているけど違う!
 奥にいる赤いワンピースの久保亜沙香がカワイイ!間近で見ると、指が震えます。
 高橋名人とHIDE-AKIは、向き合ってイメージトレーニングをしている真っ最中でした。
 ドラゴンボールなら、二人の間で見えないパンチの応酬が繰り広げられている状態
 でしょうが、ここでは和やかなムードで余裕の打ち合わせをしています。
 しかし、ここで突然一つのハプニングが宇宙ヤング笹キミヒトに襲いかかりました。
 軽く記念撮影をしている時、久保亜沙香の口から名人ラブ宣言が飛び出したのです。
 これに笹キミヒトは動揺を隠せません。同じく短時間で心を鷲掴みにされた僕には
 彼の気持ちが痛いほど解りました。先日も傷心する出来事があったそうですが、
 その時とは比べ物にならないダメージを受けた模様。果たして宇宙ヤングの演奏は
 行われるのか?!雲行きが怪しくなってきました。何食わぬ顔で客席に戻りつつも
 内心、気が気ではありませんでした。しかし、彼は颯爽とステージに現れたのです。
ご一緒に「番長!」
メーカーが希望小売価格を定めない商品は?
 宇宙ヤング [] [Homepage]
 宇宙ヤングの広告塔にして、小道具を使ったパフォーマンスに相当のコダワリを持っている
 笹キミヒトと、(多分)彼が全信頼を寄せていて、高橋名人も気に入っているHIDE-AKIに
 よるユニットです。ハートに16連射をプロデュースしたのも彼らですが、あいつはクイズ王、
 コスミック番長、さよなら未来ガールなど、実は高橋名人とのカラミが無い曲にこそ悲哀や
 郷愁といった笹キミヒトの世界がストレートに表現されているので個人的には期待大でした。
 それに、HIDE-AKIの渾身のソロを聴かないで宇宙ヤングを語るなんて言語道断だ!という
 宇宙ヤングフリークとりわけHIDE-AKIファンを自認する自分からの苦情が来ていました。
 しかし、アイドルの直後という事と、もう高橋名人が出てくるだろうという会場の期待感が
 最高潮に達していたために、登場した直後の客席では白けた空気が漂い始めていました。
 それまでの淡々と進行する司会だったら、会場は素直にブーイングを浴びせていたでしょう。
 ところが、失恋は人を成長させると昔から言われていますがアレは本当のようです。
 会場の反応に遠慮することなく炸裂する笹トークの逞しさに、ロッキーの姿を見ていた人は
 かなり多い事が予想されますが、彼が先ほど激しい失恋を経験した直後という事を知ったら
 「さびしんぼう♪」のフレーズに涙を流さずにはいられ無かった事が容易に想像できます。
 親が危篤状態にあったのに、一度始まった公演を中止する訳にはいかないと舞台にあがり
 とうとう死に目に会えなかったという、ある大俳優のエピソードを思い出してしまいました。
 そういう意味で、笹キミヒトの役者魂の凄まじさを垣間見た気がします。
 さよなら未来ガールが、今日ほどシリアスに聞こえる事はおそらく当分は無いでしょう。
 作詞講座に通っていた過去も臆面無く披露してくれました。普通、アーティストイメージを
 壊すような地味な努力は隠すのが普通で、それどころかエスパーじみたエピソードを用意して
 いかに自分のクリエイティビティが優れているか訴えるのが常套手段になっている昨今では、
 ありのままを曝け出し、誠実な勝負をするというのは簡単そうに見えて難しい事です。
 そんな真摯な姿勢に心を打たれたのか、もはや宇宙ヤングにヤジを飛ばそうと考える人間は
 一人もいませんでした。いよいよ高橋名人が渋谷に降臨します。もうこれ以上は待てません。
ニセ名人のコーラス隊
アイドルに挟まれてます
ワールドカップですから…
ハドソングッズと名人
 高橋名人 [] [Homepage]
 ゲームキングから15年以上の月日が経ち、すっかり声変わりしたファミコン戦士たちの
 タカハシコールが巻き起こる中、時空の歪みが発生して1986年の高橋名人が現れたという
 あのロバートゼメキス作品を彷彿とさせる演出で、聴衆の目はステージに釘付けに。
 しかし、江頭2:50分ばりのダンスで現れたのは「テクノ界のえなりかずき」の異名を
 とるニセ名人でした。まさにワールドカップ開催日、聴衆がフーリガンと化す一歩手前で
 改めて名人コールを要求し、本物の名人を招き入れるという際どいカタルシス解消演出。
 事前に楽屋を覗いていた僕でさえ、予想が出来なかったのですから会場からはタメ息が。
 このサーカスチャーリーばりのアクロバットには、見ているこっちがヒヤリとしました。
 笹キミヒトは「命の危険を感じた」と漏らしていましたが、殺伐とした空気を和ませる
 ような高橋名人のウィスパーボイスが夜の渋谷を安らぎで満たしていきました。
 弾き語りによるBugってハニーから演奏が始まった時、西部警察の強引な挿入歌の場面を
 思い出した人もいるかもしれませんが、殆どの元少年少女たちは感激の涙が頬を伝って、
 焦点が合わせられず、名人が3人くらい居るように見えてしまったと告白していました。
 たぶん今後、彼らの人生の全部門で高橋名人がポールトゥフィニッシュに違いないです。
 今日の模様はファミ通GCにも掲載されるようですが、なにしろ売っている所を見たこと
 ないような雑誌で、浜村通信の息がかかったファミ通なんてコロコロ派ファミコン戦士の
 物欲レーダーには機影さえ映りません。誠に遺憾ですが、記事の反響は少ないでしょう。
 印象的だったのは、なんといってもアンコールの大合唱。すっかりキャラバン当時に
 心地の良い退行をしている会場が完全に一体となった瞬間でした。この常軌を逸した熱狂、
 後にオーラルヴァンパイアの女性スタッフさんが、「何がそこまで高橋名人に夢中にさせる
 のですか?何に期待して集まってるのですか?」と不思議がっていました。なるほど。
 この時、多少酔っていたので即座に答えられませんでしたが、至極素朴かつ本質的な疑問に、
 今日集まった人間の大半がこう答えるはずです「高橋名人がフィクションの世界の住人では
 なく、リアルなものであった事を確かめたかった」と、そして「あの夏のキャラバンが
 全国のファミコン戦士に与えた夢をもう一度見たかった」と。こんな説明では、やはり納得
 して貰えないかも知れませんが、今夜アンコールを大声で叫んだ人ならば解るはずです。
 2002年の渋谷で、高橋名人伝説復活の瞬間に立ち会っていたことが解るはずです。
 当時、松坂屋のイベントからブレイクした高橋名人の姿を重ねあわせていたはずです。
 帰って早速ゼグの位置を確認しようと思ったのは、決して一人だけじゃないはずです。
 エンディングを迎えてハイテクヒッピーズが流れる中、なかなか帰れないで残るファミコン
 戦士たちの姿がありました。今日の感動を少しでも記憶に留めようとして、アートワークを
 持ち帰ろうとする人、塩の代わりに自分の涙をかけて名人の割ったスイカを食べている人、
 各々の胸に去来していたのは何だったか?ここで敢えて言うまでも無いでしょう。

 割らんばかりの歓声(オトコばっかり)
 エンディング、僕らは一つになりました(でも手がジャマ)
演 奏 曲 目

1 Bugってハニー
2 友達よ
3 傘が無い
4 4月になれば彼女は
5 black bird
6 寂しさの中に(名人のオリジナル)
7 FIGHTER
8 恋のB級アクション
9 高橋名人ヒットメドレー
     HYPER TECHNO REMIX
 〜ハートに16連射
10 Bugってハニー(アンコール曲)
メドレー熱唱with笹キミヒト
 総 評 []
 あれほど退屈すると思っていたのがウソみたいです。どっちにしても名人の歌は夢中で聴いて
 いたと思いますが、対バンもバランス良く楽しめるとは予想していませんでした。
 仮に盛り上がったとしても、数人程度のもので終わるのではないかという心配も杞憂でした。
 路頭に迷っていた頃、半信半疑で購入したトルマリンブレスレットZのおかげでしょうか。
 でも、スゴイ面子が集まった打ち上げパーティーではカメラを向ける勇気がありませんでした。
 明け方まで続いた宴が終わり、始発電車を待ちながら頭の中でグルグルと今日の出来事が
 無限ループしていました。デリンジャー現象…象牙の塔と同等の意味を持ったこの言葉も
 印象に残ったキーワードですが、それはまた別の話。
 ところで、個人的な好みを元にした音楽批評は出演ゲストの振り幅を考えると無意味なので
 意図的にその話題に触れないように書いていますが、不満がある人はメールをください。
 そういう個人的な意見の交換は大歓迎です。辛口に感じる部分があれば、それは愛です。

 (アーティスト名敬称略)