思想善導方策具体案
昭和8年8月15日 閣議報告
思想対策ノ一トシテノ思想善導方策ハ、積極的ニ日本精神ヲ開明シ之ヲ普及徹底セシメ国民精神ノ作興ニ努ムルコトヲ以テ其ノ根幹ト為スモ、一面ニ於テ不穏思想ヲ究明シテ其ノ是正ヲ図ルコト亦緊要ナリト思料セラル。其ノ具体案凡ソ左ノ如シ
(一)国家的指導原理タル日本精神ヲ開明シ之ヲ普及徹底セシムルコト
(1) 敬神崇祖ノ美風ヲ益々振興シ関係諸方面ノ奮起ヲ促シ且其ノ活動ヲ積極的ナラシムルコト
(2) 国民精神文化研究所ヲ拡充シ其ノ機能ヲ充分発揮セシムルコト
(イ) 研究部ノ研究及其ノ結果発表ノ施設ヲ完備スルコト
(ロ) 事業部ニ属スル教員研究科ヲシテ広ク小学校、中等学校、高等諸学校ノ教員、学校行政及社会教育関係者ノ研究ノ指導ヲ為サシムルコト
(ハ) 事業部ニ属スル研究生指導科ヲ拡充シテ研究生ノ員数ヲ増加シ思想上ノ指導ヲ図ルコト
(3) 地方ニ国民精神文化研究所ノ支所トモ云フベキモノヲ設置シ之ヲ助成シテ小学校、実業補習学校ノ教員、青少年団指導者等ニ対シ日本精神ヲ中心トスル思想上ノ教養ヲ与へ以テ其ノ指導監督ノ徹底ヲ期セシムルコト
(4) 日本精神ノ研究者及研究指導団体ノ擁護助成ヲ図ルコト
(5) 日本精神ノ開明及一般思想善導ニ関スル書籍資料ノ編纂刊行ヲ為シ又ハ之ヲ奨励助成シ、其ノ普及ヲ図ルコト
(6) 日本精神ノ開明普及徹底ノ為ニ在郷軍人団、消防組、青少年団体、婦人団体、教化団体等ノ活動ヲ奨励助長スルコト
(7) 労務者教育及成人教育等ニ於テ日本精神ノ開明普及徹底セシムルコト
(8) アラユル機会ヲ利用シ社会ノ各方面ニ於テ日本精神ノ開明普及徹底ノ為ノ恒久的運動ヲ起スコト
(9) 言論界、興業界等ノ関係者ト協議シ、日本精神ノ開明普及徹底ニ協力援助ヲ求ムルコト
(10) 学校其ノ他ニ於ケル思想上ノ指導監督施設ヲ完備スルコト
(11) 各府県ニ知事ヲ中心トスル思想問題ニ関スル調査指導、連絡ノ機関ヲ構成セシメ之ヲ助成スルコト
(12) 思想上ノ理由ニ依ル被処分者ノ教化指導ニ努ムルコト
(二)不穏思想ヲ究明シテ其ノ是正ヲ図ルコト
(1) 不穏思想ヲ究明スルコト
(イ)現代思想ヲ分析研究スルコト
(ロ)不穏思想ノ本質ヲ明ニシ、其ノ発生及伝播ノ原因ヲ討ネ、不穏思想ニ基ク運動ノ状況及其ノ国家社会ニ及ボス影響ヲ調査スルコト
(2) 不穏思想ノ是正ヲ図ルコト
(イ)国家的指導原理タル日本精神ノ立場ヨリ不穏思想ヲ批判克服スルコト
(ロ)不穏思想ノ理論的実際的誤謬欠陥ヲ指摘シ之ヲ克服スルコト