満蒙新国家成立ニ伴フ対外関係処理要綱
昭和7年3月12日 閣議決定
満蒙新国家ノ出現ニ関シテハ帝国及新国家ノ対外関係ニ出来得ル限リ支障ヲ生セシメサルコトヲ念トシ新国家カ先ツ其ノ内部ヲ充実シテ堅実ナル発達ヲ遂ケ漸次対外関係殊ニ条約問題乃至承認問題ノ展開ヲ計ルノ態度ニ出ツル様之ヲ誘導スルコトト致度 従テ
(一)新国家ニ対シテハ帝国トシテハ差当リ国際公法上ノ承認ヲ与フルコトナク可得出来範囲ニ於テ適当ナル方法ヲ以テ各般ノ援助ヲ与ヘ以テ漸次独立国家タルノ実質的要件ヲ具備スル様誘導シ将来国際的承認ノ機運ヲ促進スルニ努ムルコト
(二)新国家ト帝国及第三国トノ関係ニ関シテハ新国家ヲシテ既存条約尊重ノ建前ヲ執ラシムルト共ニ門戸開放機会均等ノ原則ヲ恪守スルノ方針ヲ宣明セシメ以テ列国側ヨリノ故障ヲ避クルニ努ムヘキコト
(三)新国家ノ税関及塩税徴収機関接収ハ右ニ関スル国際関係錯綜シ殊ニ大連海関ハ帝国ノ統治地域内ニ存シ之カ接収ヲ承認スルニ於テハ我方ノ対列国立場ヲ著シク不利ナラシムルヲ以テ是等諸点ヲ充分考量ノ上対外関係上出来得ル限リ支障ヲ生セシメサル様措置セシムルコト
(四)我方ハ出来得ル限リ非公式ノ方法ヲ以テ新国家トノ間ニ事実上ノ関係ヲ結ヒ(私法的契約ノ形式ヲ原則トシ例外的ニハ帝国出先官憲ト新国家若クハ其ノ官憲トノ地方的取極ノ形式ニ依ル)以テ帝国権益ノ実現拡充及事実上ノ既成状態ノ形成ニ努ムルコト
(五)軍事上ノ実権掌握ニ付テハ聯盟理事会ヲシテ確認セシメタル兵匪討伐権及帝国臣民保護ノ建前ニ依リ既成状態ヲ作ルニ努ムルコト
(六)外交上及内政上ノ実権掌握ニ付テハ当初成ルヘク少数ノ日本人ヲ官吏又ハ顧問トシテ採用セシメ逐次之ヲ充実スルコト
(七)政府ノ方針叙上ノ如ク決定ヲ見タル上ハ直チニ出先帝国官憲ニ其ノ旨通報シ右官憲ヲシテ新国家指導上遺憾ナキヲ期セシムルコト