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国鉄があった時代
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国立国会図書館から引用

ロンドン海軍軍縮会議全権委員に対する訓令について

昭和4年11月26日 閣議決定

 倫敦海軍会議帝国全権委員ニ対スル訓令案
一 今次ノ会議ニ於テ帝国政府ノ目的トスル所ハ海軍軍備ノ制限縮少ニ関シ内ハ我国防ノ安固ヲ期スルト共ニ国民負担ノ軽減ヲ図リ外ハ列国間ノ平和親交ヲ増進スルニ足ルヘキ方法ヲ主要海軍国間ニ協定スルニ在リ
二 我国防ノ安固ヲ期セムカ為ニハ帝国ノ国情並四囲ノ状勢ニ顧ミ海軍兵力ニ付自衛上絶対必要トスル最少限度ノ比率及兵力量ヲ確保スルコトヲ要ス
三 軍備ノ実力ハ単ニ正規ノ兵力ノミナラス資源、商船隊及工業力等ノ潜在勢力モ亦其一部ノ要素ヲ成スモノニシテ帝国ハ此等潜在勢力ニ於テ列国ニ劣ル所アルカ故ニ海軍軍備ノ制限縮少ヲ協定スルニ当リテハ特ニ此事情ヲ考量セラルヘシ
四 英米両国補助艦勢力均等ノ原則ハ帝国政府ノ異議ナキ所ナルモ両国間ノ協定ニ適用シタル勢力測度規準ヲ其侭帝国トノ協定ニ適用スルノ当否ニ付テハ右測度規準ノ内容ヲ検討シタル上帝国ノ態度ヲ決定スルコトトス
五 仏伊両国ノ要望スル比率ハ亦帝国ノ利害ニ関スル所アルヲ以テ両国交渉ノ推移ニ付テハ絶ヘス注意セラルヘシ
六 会議ノ結果成立スヘキ条約ノ有効期間内ニ世界ノ如何ナル方面タルヲ問ハス著ク海軍ノ現勢ヲ変更スルノ事態生シ之カ為締約国ノ一国カ其海軍力ニ依ル国防上ノ安全ニ付重大ナル脅威ヲ感スルニ至リタルトキハ締約国ハ之ニ応スル措置ヲ協議スヘキ旨ノ条項ヲ設クルコトヲ要ス
七 陸軍及空軍問題ニ触ルルコトハ徒ラニ論議ヲ錯雑セシメ会議本来ノ目的タル海軍問題ノ解決ニ困難ヲ加フル虞アルヲ以テ之ヲ避ケ万一此等ノ問題ニ論及スル必要ヲ見ルカ如キ場合ニモ陸軍、空軍ニ関スル国際連盟軍備縮少会議準備委員会ノ決定事項ニ累ヲ及ホササルコトニ留意セラルヘシ
八 国民負担ノ軽減ヲ図ラムカ為ニハ補助艦協定ノ一部ニ於テ現有勢カノ拡張ヲ見ルノ已ムナキニ至ルコトアリトスルモ右協定ノ全部ヲ秤量シテ軍備制限ニ止マラス更ニ進ンテ軍備縮少ノ実ヲ挙クルコトヲ要ス
九 国防ノ安固ト国民負担ノ軽減トヲ調和セムカ為ニハ我所要ノ比率ヲ保持スルト共ニ彼我保有兵力量ヲ減少スルノ方途ニ出ツルノ外ナシ仍テ兵力量ノ協定ニ当リテハ最大海軍国タル英米両国ノ保有兵力量ヲ縮少シ以テ一般ニ各国保有兵力量ヲ逓減スルコトニ力ヲ致サルヘシ
十 華府海軍軍備制限条約中一部ノ条項ヲ改訂シ以テ国民負担ノ軽減ニ資スルハ亦帝国政府ノ重要視スル所ナリ之カ為帝国政府ハ関係列国ト共ニ特定ノ事項ニ関シ之カ改訂ヲ議スルノ用意アリト雖既定ノ基礎ヲ変改シテ条約自体ノ存続ヲ危クシ若ハ現存ノ制限ヲ緩和シテ同条約ノ効果ヲ減殺スルカ如キコトナキヲ要ス
十一 列国間ノ平和親交ヲ増進セムカ為ニハ各国共ニ他国ニ脅威ヲ感セシムルカ如キ軍傭拡張ノ新計画ヲ避ケ国民ノ間ニ猜疑、敵視ノ感情ヲ生セシメ易キ製艦競争ノ弊ヲ絶チ各自国ノ国防ニ関スル危倶不安ノ因ヲ除キテ相互信頼ノ念ヲ深クスルニ足ルヘキ協定ノ途ヲ講スルコトヲ要ス
十二 会議各参列国ニ対シテハ等シク公平中正ノ態度ヲ持シ特定ノ国ト結ヒテ他ニ当ルカ如キ感ヲ与ヘサルコトヲ旨トセラルヘシ
十三 或ハ英米ト仏伊トノ間、或ハ仏伊両国ノ間ニ意見衝突シテ事態紛糾ヲ来スカ如キ場合ニハ帝国全権委員ハ前項ノ趣旨ニ依リ何レノ一方ニモ偏倚セサルト共ニ我立場ニ不利ノ影響ヲ来ササル限リ調停斡旋ノ労ヲ執リ以テ会議ノ円満ナル進捗ニ努力セラルヘシ
十四 主要海軍国タル日、英、米、仏、伊五国共ニ協定ノ当事者トナルコトハ素ヨリ望ム所ナリト雖事情已ムヲ得サル場合ニハ帝国政府ハ日、英、米三国間ニ限ル協定モ次善ノ策トシテ其成立ニ協力スルノ用意ヲ有ス
十五 一般軍備ノ制限又ハ縮少ヲ目的トスル国際連盟ノ事業ニ付テハ帝国政府ハ従来常ニ誠意ヲ以テ之ニ賛同シ今後モ引続キ之カ完成ニ協力スルノ方針ナリト雖必スシモ陸海空軍全部ニ亘ル協定ヲ同時ニ成立セシムルノ要ナク主要海軍国ノ間ニ先ツ海軍軍備問題ニ関シテ協定スルハ最実際的ニシテ又国際連盟ノ事業ニ寄与スル所以ナリト認ム
十六 海洋自由ノ問題其他海戦法規又ハ中立法規ノ制定又ハ改訂ニ関スル問題ニ付テハ従来英米両国ノ主張スル所相反スルノミナラス我国トシテモ其利害得失ハ別ニ慎重ナル攻究ヲ要スルモノアリ旦之ヲ軍備問題ト直接関連セシメテ一挙ニ協定セムトスルニ於テハ会議ノ紛糾ヲ来スノ虞ナシトセス従テ会議ノ形勢ニ伴ヒ前記国際法問題ヲ議題トスル必要アル場合ニハ討議ノ範囲ヲ極メテ少数ノ原則ニ限リ以テ海軍協定ノ成立ヲ阻礙セサルコトニ留意セラルヘシ
十七 補助艦ニ関スル協定不幸ニシテ完全ナル成立ヲ見サル際ニ於テモ主力艦ニ関スル協定ハ尚之ヲ成功セシムルヲ可トスルニ依リ此目的ヲ達セムカ為会議ノ大勢ニ鑑ミ審議ノ順序其他折衝ノ方法ニ付深甚ノ注意ヲ加ヘラレ度シ
十八 補助艦比率及兵力量ニ関シ予備的非公式会談ニ於テ了解ヲ遂クルコトハ帝国政府ノ最重キヲ置ク所ナルヲ以テ之カ達成ニ努メラルヘキハ勿諭右了解ノ成立ニ先チ過早ニ本会議ニ上程セラルル如キコトハ極力之ヲ避クルニ努メラレ度シ
十九 会議ノ議題トナルヘキ諸事項ニ関シ従来帝国政府ヨリ関係国駐在帝国使臣ニ与ヘタル累次ノ訓電ハ本訓令ノ補則トシテ了知セラルヘシ
二十 会議ニ於テ帝国ノ執ルヘキ態度ト措置トハ我国家ノ前途並世界ノ政局ニ至大ナル影響ヲ及ホスヘキコト言フヲ待タス政府ハ茲ニ深ク帝国全権委員ニ信頼シ此重要且機微ナル任務ヲ嘱スルニ当リ叙上ノ趣旨ト左記ノ方針トニ依リ又海軍専門事項ニ関シテハ海軍首席随員ノ意見ヲ徴シ適宜折衝セラレ万難ヲ排シテ一意会議ノ成功ヲ期セラレムコトヲ望ム
    記
一、帝国海軍軍備ノ要旨
帝国海軍軍備ハ国家ノ自主独立ヲ擁護スルヲ目的トシ固ヨリ何等侵寇的意図ヲ有スルモノニ非ス之カ為ニハ西部太平洋方面ニ於テ或ル一国ノ使用スル海軍兵力ニ対抗シ以テ我国土ノ安全ヲ期スルト共ニ帝国ノ特殊国情ニ基キ国家存立ニ必要ナル海上交通線ヲ防護スルニ足ルモノタルヲ要ス
二、補助艦所要兵力量及比率
 (一)華府海軍軍備制限条約ノ存続スル現状ニ於テ前号ノ任務達成ニ必要ナル帝国ノ所要補助艦兵力ハ量ニ於テ昭和六年度末ニ於ケル我現有量(付表参照)ヲ標準トシ又比率ニ於テハ米国ニ対シ少クモ総括的ニ七割トス
 (二)所要兵力量ノ標準右ノ如シト雖帝国海軍軍備ノ要旨二悖ラス且所要比率ヲ失ハサル限リ各国ト協調シ之ヲ縮減スルニ吝ナラス
 但シ潜水艦ニ付テハ此限ニ在ラス
 (三)二十糎砲搭載大型巡洋艦ニ於テハ特ニ対米七割ヲ又潜水艦ニ於テハ昭和六年度末我現有量ヲ保持スルヲ要ス此等ノ要求ヲ補助艦対米総括的七割ノ主張ト両立セシメムカ為ニハ帝国海軍軍備ノ要旨ニ悖ラサル限リ軽巡洋艦、駆逐艦ニ於テ多少ノ犠牲ヲ忍フハ已ムヲ得サルコトニ属ス
三、補助艦代換艦齢
代換艦齢ハ軍備縮少ノ本旨ニ鑑ミ軍艦固有ノ任務ニ堪エ得ルヲ程度トシ可成長ク之ヲ協定スルニ異議ナシ但シ各国勢カノ権衡及代換実施ノ調節並工業力ノ維持上既成艦ノ一部ニ付テハ協定艦齢内ニ於テモ代換シ得ル如ク規定スルヲ要スル場合アルヘシ
四、制限外艦船
制限外艦船ヲ定ムルニハ概ネ左ノ考慮ヲ要ス
 (イ) 艦型、武装、行動力等小ナル為専ラ防禦的用途ニ充ツル軍艦ハ制限外トス
 (ロ) 商船ニ僅ノ改装ヲ行ヒテ容易ニ付与シ得ル程度ノ戦闘力ヲ有スルニ過キサル軍艦ハ制限外トス
五、華府海軍軍備制限条約ノ一部変更ノ範囲及程度ハ左記ニ拠ル
 (一) 主力艦
主力艦ノ廃止又ハ其ノ協定隻数変夏ニハ同意シ難キモ同条約ニ依ル制限ヲ左ノ範囲ニ於テ変更スルヨトハ軍費ノ軽減ニ貢献スル所アルヲ以テ之ヲ希望ス
  (イ) 代換期間ノ伸長
  (ロ) 艦型縮小
  (ハ) 艦齢延長
   代換開始期ノ延期ニ関シテハ大勢ニ順応シ差支ナシ
 (二) 航空母艦
  帝国ノ国情ニ稽へ航空機ヲ帝国ノ近海ニ持チ来ス仲介タルヘキ艦船ハ成ルヘク少量ニ制限スルヲ可トシ尚軍費ノ軽減ニ貢献スル為同条約ニ依ル航空母艦ノ制限ハ左ノ範囲ニ於テ変更スルヲ有利トス
  (イ) 一万噸以下ノ補助航空母艦ヲ華府条約ノ規定スル航空母艦保有量中ニ包合セシムルノ目的ヲ以テ同条約ニ依ル航空母艦ノ定義中一万噸ヲ超ユル件ノ制限ヲ廃スルコト
  (ロ) 艦齢ノ延長、艦型ノ縮小ニ関シテハ大勢ニ順応シ差支ナシ
 (三) 右ノ外条約ノ効力ニ重大ナル影響ナキ小変更

(表省略)

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