官吏制度改正ニ関スル件
昭和20年11月13日 閣議決定
1) 官名ノ統一
一官一職ヲ相当トスル官其ノ他特殊ノ官ヲ除キ,官名ハ,事務系統及技術系統別ニ概ネ同一官名トシ,例ヘバ事務系統ノ官ハ「何々(省)事務官」,技術系統ノ官ハ「何々(省)技官」ノ如クスルコト。
2)官ト職トノ分離
官ト職トヲ分離シ,従来官トセラレタル部局長等ハ之ヲ職名トシ、職ノ授与ハ補職ノ方法ニ依リ之ヲ行フコト。(備考略)
3)高等官及判任官ノ区別ノ撤廃並ニ官等等級ノ制ノ簡素化
一官一職ヲ相当トスル官其ノ他特殊ノ官ヲ除キ,勅奏,判ノ区別ヲ撤廃ツテ同一官名トスルト共ニ,官等等級ノ制ヲ簡素化シ,例ヘバ1級乃至3級ノ3種ノ如クスルコト。(備考略)
4)俸給制度ノ統一
俸給制度ハ官又ハ官等ニ伴ヒ区々ト為リ居ル現行制度ヲ改メ,原則トシテ,官又ハ等級ニ関係ナク成ルベク単一ノ俸給制度トシ,勤務ノ年限及成績ニ依リ同一ノ職ノ儘高級俸ニ至リ得ル如クスルコト。(備考略)
5)官吏更迭ノ抑制
官吏ノ頻繁ナル更迭ヲ抑制スル為,例ヘバ官衷ハ一定ノ期間同一ノ職ニ止ムベキモノトスルノ原則ヲ確立スル等ノ方途ヲ講ズルコト。
6)高等試験制度ノ改善
官吏ノ任用ガ資格試験ニ依ル任用ヲ原則トスル現行制度ハ之ヲ維持スルモ,併セテ銓衡任用ノ制度ヲ拡充スルト共ニ,行政科及司法科ノ高等試験ニ付テハ,左ノ諸点ニ付改善ヲ考慮スルコト。
ア)試験科目ヲ再検討シ,其ノ画一的傾向ヲ排シ,幹部職員タルー般的能力ヲ判定シ得ルノ外、将来其ノ者ノ奉職セントスル官界ノ職域ニ必要ナル科ヲモ加ヘ,之ニ応ズル能カヲモ判定シ得ル如クシ、以テ適材ヲ適所ニ登用シ得ルノ途ヲ拡ムルコト。
イ) 試験委員ガ現在主トシテ専門ノ学校教員中ヨリ任ゼラルル傾向ヲ改メ,相当数ノ官民ノ実務家ヲモ加ヘ,学理及実際ノ両方面ヨリ試験ヲ施行スル如クスルコト。
ウ) 高等試験制度ト並行シ試補ノ制度ヲモ研究スルコト。
7)官吏研修制度ノ設置
新ニ官吏研修ノ機関ヲ設ケ又ハ大学等既存ノ教育施設ヲ利用スル等ノ方法ニ依リ,官吏ニ対シ数ケ月間研修ヲ受ケシムルト共ニ,一定期間民間ニ於ケル実際業務等ニ従事セシムルガ如キ制度ヲ考慮スルコト。(備考略)
8)信賞必罰ノ励行ト監察制度及考科表制度
ア) 内閣及各省ニ監察官ヲ置キ,部内職員ノ執務ノ能率、勤惰其ノ他事務処理ノ実況ヲ考査セシメ信賞必罰ヲ励行スルト共ニ,兼ネテ官庁事務ノ能率向上,職員ノ福利増進等ニ関スル事項ヲモ調査立案セシムルコト。(備考略)
イ) 内閣及各省ハ,部内ノ2級以下,官吏ニ付考科表制度ヲ設ケ考科表ハ概ネ年2回作成スルコトトシ,当該官吏ノ直近ノ上官(課員タル者ニ付テハ課長、課長タル者ニ付テハ部局長ノ如シ)ニ於テ自ラ記入シ、記入者ノ直近ノ上官ニ於テ之ヲ査閲シ必要ナル記入ヲ為シ得ルモノトシ進級,昇級,賞与其ノ他ノ優遇ハ主トシテ考科表ニ基キ之ヲ行フモノトスルコト。
考科表ノ様式及記載項目ハ、充分科学的且合理的タラシメ、之ガ記入ニ不公平ナルコトナキ様考慮スルコト。