財政再建計画大綱要目
昭和20年11月5日 閣議了解
戦後ニ於ケル社会経済秩序ノ破綻ヲ防止シ進ンデ経済再建ノ礎石ヲ築ク為国民負担ノ公正ヲ期シツツ財政収支ノ均衡恢復ニ万策ヲ尽スモノトス財政収支ノ均衡恢復ニ関シテハ国民食住衣ノ維持、道義ノ昇揚其ノ他諸方策ノ強力ナル推進ヲ期待シツツ概ネ左記諸項目ニ旦リ果敢ナル具現ヲ期ス
記
一、戦時利得者ニ対シ其ノ戦時利得額ヲ徴収シ、戦争ニ因リ財産関係ニ生ジタル不均衡ヲ是正シ、以テ戦後財政再建ノ確立ニ資スル為財産増加税ヲ創設スルコト
ニ、破綻ニ直面セル財政ヲ再建スル為財産税ヲ創設シ国民ノ全財産ニ付高率ノ累進税率ニ依ル一回限リノ課税ヲ行ヒ以テ巨額ノ歳入ヲ確保スルヨト
三、今後当分ノ間毎年度ノ経常歳入ヲ増加シ財政ノ収支ヲ均衡セシムル為資産所得及嗜好品等ノ重課ヲ趣旨トスル税制改正ヲ行フコト
四、専売其ノ他官営事業ノ増収ヲ図ルコト
五、行政整理ヲ大幅ニ断行シ一般政費ノ削減ヲ行ヒ併セテ行政機構及官吏制度ノ抜本的改革ヲ行フコト
六、恩給制度ヲ再検討スルコト
七、価格差補給金制度ヲ再検討シ原則トシテ之ヲ廃止スルコト
八、国有財産ノ払下ヲ促進スルト共ニ官業ノ民間委譲ヲ考慮スルコト
九、政府命令、政府企業間ノ契約ニ基キ政府ノ公約ニ係ル補償ニ付テハ各種補償ノ内容ニ応ジ適正且厳格ナル審査ヲ加へ可及的総合的ナル判断ニ依リ之ヲ決定交付スルコト
一〇、食糧増産、引揚邦人ノ援護其ノ他社会施設費等ニ付テハ応分ノ考慮ヲ払フコト
一一、連合軍駐屯関係経費、賠償及外地企業ノ補償等ニ付テハ前記各般ノ施策ノ総合的結果卜睨ミ合セ負担過重トナラザルヤウ内外ニ対シ万般ノ措置ヲ講ズルコト