軍需企業ニ対スル補償ニ関スル件
昭和20年11月5日 閣議了解
軍需企業ニ対スル補償問題ニ付テハ国家財政ノ再建、民需生産活動ノ急速促進、経済運行ノ維持ヲ主眼トシ租税政策トモ不可分ノ関係ニ於テ左記ニ依リ処理スルモノトス
記
一、政府命令、政府企業間ノ契約等ニ基ク補償ノ処理ニ付テハ戦争保険及契約解除ノ損害賠償ノ支払ハ適正且厳格ナル審査ノ下ニ之ヲ続行スルト共ニ各種補償ニ関シ可及的総合的ナル判断ヲ加へ厳正ナル査定ニ依リ企業毎ニ交付金額ヲ決定スルモノトスルコト
二、補償ノ内容、実施方法、実施ノ範囲等ハ慎重ナル手続ヲ経テ決定スルモノトスルコト
右準備等トシテ企業ニ対スル補償等ノ実態調査ヲ速カニ実施スルコト
三、右決定前ニ於テモ企業ヲシテ急速ニ民需生産ニ邁進セシムル為、転換可能ノ資産ヲ他ノ資産ヨリ切離シ民需生産ヲ目的トシテ新ニ設立スル会社又ハ民需生産ヲ目的トスル既存会社ニ売却又ハ貸付クル等ノ方法ヲ勧奨スルコト
四、補償決定迄ノ過渡期ニ於テ決算困難ノ企業ニ対シテハ決算ノ延期又ハ無配ノ何レカ企業ノ希望スル措置ヲ採ラシムルコト
五、本件ニ基ク補償金ノ支払ニ付テハ、インフレーション防止ノ為特殊決済等強力ナル封鎖ノ措置ヲ講ズルコト
(備考)国外ニ資産ヲ有スル企業ノ終戦ニ伴フ経理負担ノ処理ハ本件趣旨ニ準ジ別途之ヲ定ム