remove
powerd by nog twitter
国鉄があった時代
日本国有鉄道のあった昭和時代を検証するサイトです。日本国有鉄道のあった昭和時代を検証するサイトです。
国立国会図書館から引用

総動員警備要綱ノ設定ニ関スル件

昭和19年8月15日 閣議決定

一 軍ノ戦時警備ニ照応シ昭和十八年五月二十七日ヨリ北海道ニ昭和十九年七月十五日ヨリ樺太ヲ除ク全庁府県ニ実施シタル総動員警備ハ爾今別冊「総動員警備要綱」ニ基キ之ヲ実施スルモノトス
二 情勢ノ推移ニ依リ別冊「総動員警備要綱」中改正ヲ必要トスル場合其ノ重要ナラザルモノニ付テハ中央総動員警備協議会ノ協議決定ヲ以テ之ヲ改正スルコトヲ得ルモノトス
三 昭和十一年十二月二十六日閣議決定ニ係ル「総動員警備計画暫定綱領」ハ之ヲ廃止スルモノス
 総動員警備要綱
    目 次
 第一章 総則
 第二章 総動員警備一般要領
  第一節 通則
  第二節 総動員警備要員
  第三節 総動員警備用通信及輸送
  第四節 治安維持
  第五節 重要警備対象物及主要警備地ノ総動員警備
  第六節 機密保護
 第三章 各種非常事態ニ対スル総動員警備要領
  第一節 沿岸警備
  第二節 空襲警備
  第三節 災害警備
  第四節 騒擾警備

  第一章 総則
第一条 総動員警備ハ非常事態ニ際シ人及物的資源ノ被害ヲ防止軽減シ治安ヲ維持シ其ノ他国防目的達成ノ妨害ト為ルベキ諸事象ヲ排除スルヲ目的トス
第二条 総動員警備ハ大東亜戦争ニ際シ左ニ掲グル事態発生シ又ハ其ノ虞大ナルトキ必要ニ応ジ其ノ全部又ハ一部ヲ全国ニ又ハ地域ヲ限リ之ヲ実施ス
 一 沿岸ニ対スル敵ノ攻撃
 二 空襲
 三 災害、騒擾其ノ他ノ非常事態
 本要綱ニ於テ沿岸警備ト称スルハ前項第一号ノ事態ニ対スル総動員警備ヲ、空襲警備ト称スルハ同第二号ノ事態ニ対スル総動員警備ヲ、災害整備ト称スルハ同第三号中災害ニ対スル総動員警備ヲ、騒擾警備ト称スルハ同第三号中騒擾ニ対スル総動員警備ヲ謂フ
第三条 総動員警備ハ警察力ヲ中核トシ関係各庁ノ警備力ヲ糾合シ且必要ニ応ジ帝国法人其ノ他ノ団体(帝国在郷軍人会ヲ除ク以下同ジ)等ノ協力ヲ得テ之ヲ実施ス
第四条 総動員警備ハ陸海軍ノ行フ警備ト緊密ニ連繋協調シテ之ヲ実施シ特ニ沿岸警備ハ陸海軍ノ行フ防衛ニ即応シテ之ヲ実施ス
第五条 外地ニ於ケル総動員警備ハ夫々当該地ノ特性ニ応ジ本要綱ニ準ジ之ヲ実施ス
  第二章 総動員警備一般要領
   第一節 通則
第六条 内務大臣必要アリト認ムルトキハ地方長官ニ対シ総動員警備ノ実施ヲ命ズ
 内務大臣前項ノ規定ニ依リ総動員警備ノ実施ヲ命ズルトキハ同時ニ関係大臣ニ其ノ旨通知ス
 関係大臣前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ直ニ其ノ監督ニ属スル関係官庁ニ其ノ旨通知シ必要アリト認ムルトキハ自ラ総動員警備ヲ実施シ又ハ其ノ監督ニ属スル関係官庁ニ対シ総動員警備ノ実施ヲ命ズ
第七条 地方長官ハ緊急ノ必要ニ依リ内務大臣ニ対シ前条第一項ノ措置ヲ稟請スルノ暇ナキトキハ総動員警備ヲ実施スルコトヲ得
 地方長官前項ノ規定ニ依リ総動員警備ヲ実施スルトキハ同時ニ関係地方官庁ニ其ノ旨通知ス
 関係地方官庁前項ノ通知ヲ受ケ必要アリト認ムルトキハ総動員警備ヲ実施ス
第八条 関係官庁ハ前二条ノ規定ニ依ル総動員警備ノ実施及之ニ関シ必要ナル設備資材ノ整備ノ為総動員警備計画ヲ設定ス
第九条 総動員警備上一般ニ特ニ考慮スベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 総動員警備関係各庁相互間ノ密接ナル連繋協調特ニ統一アル警備ノ実施
 二 総動員警備ニ関スル情報ノ迅速ナル通報
 三 情報宣伝ニ関スル措置
 四 総動員警備要員ニ関スル措置
 五 総動員警備用通信施設ノ整備
 六 事故発生ニ対スル応急措置
 七 二種以上ノ非常事態同時ニ発生シタル場合ノ警備措置
第十条 総動員警備ノ実施ハ非常事態ノ程度、様相ニ応ジ重点的ナラシムル為総動員警備要員ノ集結、配置、勤務ノ程度、方法、業務ノ範囲等ニ付適宜弾力性ヲ保持セシム
第十一条 陸海軍ノ戦時警備ノ実施アルタルトキハ原則トシテ同時ニ総動員警備ヲ実施ス
第十二条 総動員警備ノ実施ニ当リテハ各庁ハ警備措置ノ敏速適正ヲ期スル為必要ニ応ジ総動員警備本部ヲ設置ス
 総動員警備本部ノ組織機構ハ努メテ之ヲ簡素強力ナラシムルト共ニ空襲ニ対スル総動員警備本部ハ防空計画ニ基ク防空本部ト一体タラシム
第十三条 各庁ハ総動員警備計画ニ基キ総動員警備訓練ヲ施行ス
 総動員警備訓練ハ総動員警備諸機関及各種総動員警備業務ニ付適宜各箇若ハ総合訓練又ハ図上若ハ実地訓練ニ分チ且適宜陸海軍ト連合シテ之ヲ施行スルト共ニ防空訓練ノ施行ニ当リテハ原則トシテ総動員警備訓練ヲ併セ施行ス
第十四条 総動員警備計画ノ設定、総動員警備ノ実施其ノ他総動員警備ニ関シ関係各庁ノ連絡協調ヲ図リ各庁関連事項ヲ審議スル為左ニ依リ中央及地方ニ総動員警備協議会ヲ設ク
 一 中央
  内務省ニ中央総動員警備協議会ヲ設ク
  中央総動員警備協議会ハ内務次官ヲ会長トシ内閣及各省ノ関係職員ヲ以テ之ヲ組織ス
 二 地方
  地方総動員警備協議会ハ地方長官ヲ会長トシ関係地方庁及関係陸海軍ノ関係職員ヲ以テ之ヲ組織ス
  必要ニ応ジ二個以上ノ地方総動員警備協議会ヲ合シ連合地方総動員警備協議会ヲ開クコトヲ得
   第二節 総動員警備要員
第十五条 総動員警備要員ノ主体ハ左ニ掲グル者ヲ以テ之ニ充ツ
 一 警察消防官吏
 二 警防団
 三 各庁警備員
第十六条 地方長官ハ関係地方官庁ト協力シ総動員警備ノ実施ノ為帝国法人其ノ他ノ団体等ノ協力ヲ求メ又ハ此等ノ者ヲシテ自衛警備ヲ行ハシムル如ク指導ス
第十七条 各庁ハ各種非常事態発生ニ際シ迅速適切ニ之ニ対処シ得ル如ク所属総動員警備要員ノ非常召集、非常参集及配置ニ付計画準備ス
第十八条 各庁ハ総動員警備要員又ハ総動員警備ニ必要ナル物件ノ管内及管外ニ対スル応援又ハ救援ニ付計画準備ス
第十九条 各庁ハ総動員警備計画ニ基キ警備要員ノ整備充足ニ努ム
   第三節 総動員警備用通信及輸送
第二十条 総動員警備用通信トシテ左ノ施設ヲ利用スルモノトシ別ニ定ムル警備通信計画ニ依リ之ガ実施ノ確保ヲ図ル
 一 警察用電話及電信
 二 公衆用電話及電信(無線電話及電信ヲ含ム)
 三 鉄道用電話及電信
 四 放送無線
 五 軍用電話及電信
 六 其ノ他ノ電話及電信(無線電話及電信ヲ含ム)
第二十一条 警察用電話及電信ハ総動員警備用通信ノ主体トス
 警察用電話及電信ハ警察官憲相互間及軍警間ノ連絡ニ供シ且警察業務ニ支障ナキ場合ニ限リ警備ニ任ズル陸海軍部隊ノ使用ニ供ス
第二十二条 公衆用電話及電信(無線電話及電信ヲ含ム)ハ総動員警備用通信ニ広ク之ヲ利用ス
 前項ノ通信ニシテ軍警間及総動員警備担当各庁間ノモノハ「警備通話」又ハ「警備電報」トシテ優先取扱ヲ為ス
第二十三条 鉄道用電話及電信ハ鉄道ノ総動員警備ノ為之ヲ利用ス
 鉄道用電話及電信ハ鉄道業務ニ支障ナキ場合ニ限リ警備ニ任ズル陸海軍部隊及総動員警備ノ為警察其ノ他ノ総動員警備担当各庁ノ使用ニ供ス
第二十四条 放送無線ハ総動員警備上民衆ニ速報スベキ事項ノ伝達等ニ之ヲ利用ス
第二十五条 軍用電話及電信ハ陸海軍トノ協議ニ依リ特ニ必要ナルモノニ限リ軍警間ノ連絡等ノ為利用スルコトヲ得
第二十六条 前各条ニ掲グルモノノ外官庁用及私設ノ電話及電信(無線電話及電信ヲ含ム)ハ之ヲ関係法令ノ規定ニ従ヒ必要ニ応ジ総動員警備用通信ノ利用ニ供ス
第二十七条 重要ナル通信ニシテ其ノ内容秘匿ヲ要スルモノハ適宜暗号又ハ略号等ヲ使用ス
 前項ノ暗号又ハ略号ハ成ルベク各庁間共通ノモノトス
第二十八条 非常事態発生シ前各条ニ掲グル通信施設破壊又ハ故障ノ為不通トナル場合ニ備ヘ之ガ復旧工作ニ関スル機関ヲ整備強化スルト共ニ鳩通信、伝令等有ラユル補助的通信方法ヲ準備シ積極的ナル連絡ノ確保ニ遺憾ナカラシム
 尚通信施設不通等ノ場合ハ必要ニ応ジ警備機関相互ノ通報其ノ他ノ連絡ヲ良好ナラシムル為適宜関係庁警備機関ヲ統合セル情報連絡所ヲ設置ス
第二十九条 警備機関ハ各種非常事態ノ発生ニ際シ適時機動力ヲ発揮シ迅速ニ之ニ対処シ得ル如ク予メ関係地方輸送担当官庁ト連絡シ所要ノ準備ヲ整フ
第三十条 警備機関状況ニ応ジ迅速ナル機動ヲ要スル場合ニ於テハ臨機急速ニ電車、列車、舟艇等ヲ利用スルコトアルモノトス
第三十一条 沿岸警備ノ為ニ配置セラレタル帝国在郷軍人会防衛隊ノ警備用通信及輸送ニ関シテハ警備ニ任ズル陸海軍部隊ニ準ジ之ヲ取扱フ
  第四節 治安維持
第三十二条 非常事態ニ対処スル国政一般ノ運用ニ即応シ社会人心ノ不安ヲ除キ国論ヲ統一シ政府及陸海軍ニ全幅ノ信頼ヲ懸ケシメ其ノ他禍機ヲ包蔵スベキ社会的因子ノうん釀ヲ防止スルノ外治安維持ノ為概ネ左ノ措置ヲ講ズ
 一 情報及宣伝
  情報ノ蒐集及宣伝ハ警備特ニ治安維持ノ主要要件ナルヲ以テ総動員警備ノ実施ニ当リテハ有ラユル手段ヲ尽シテ迅速ニ正確ナル情報ヲ蒐集シ状況ノ的確ナル把握ニ努ムルト共ニ之ニ基キ当面ノ情勢ニ応ジ適切ナル宣伝上ノ措置ヲ講ズ
 二 流言蜚語ノ取締
  流言蜚語ノ取締ヲ厳ニシ且流言蜚語ノ種類及之ヲ感受スルニ至ル社会的条件ヲ究明シテ其ノ発生ノ根源ヲ芟除スルト共ニ真相発表ヲ適切ナラシムル等流言蜚語打破ノ為必要ナル積極的措置ヲ講ズ
 三 要視察人及要注意人ニ対スル措置
  要視察人及要注意人ノ査察監視ヲ厳ニシ必要ニ応ジ予防検束ヲ行フ等各機関ノ連絡協調ヲ緊密ニシ其ノ取締ニ遺憾ナカラシム
 四 言論、出版、集会、結社及多衆運動ノ取締
  取締ヲ厳ニスルノ外総動員警備実施中ハ反戦反軍ノ言論及運動竝ニ内外ニ於ケル陰謀ハ之ヲ断乎弾圧ス
 五 怠業、罷業其ノ他重要生産阻害行為ノ取締
  怠業、罷業其ノ他重要生産事業ヲ阻害スル行為ヲ防遏スル為警備上適切ナル措置ヲ講ズ
 六 各種謀略活動ノ防止
  敵国側ノ宣伝及破壊等ニ依ル謀略活動ニ対シテハ之ガ完封ヲ期シ警備上周到ナル措置ヲ講ズ
 七 戦時経済統制攪乱行為ノ取締
  経済攪乱行為ニ備ヘ厳重ナル警告、監視其ノ他適当ナル措置ヲ強化ス
   第五節 重要警備対象物及主要警備地ノ総動員警備
第三十三条 主要官公衙、重要生産、交通、運輸、通信、供給施設其ノ他ノ重要施設及重要資源等(以下重要警備対象物ト称ス)ニ対シ非常事態ノ種別、様相ニ応ジ適切ナル警備ヲ実施ス
 重要警備対象物ノ種別、範囲等ハ別ニ之ヲ定ム
第三十四条 重要警備対象物ノ警護ハ其ノ管理者又ハ所有者自ラ之ニ任ジ其ノ従事員ヲ以テ之ヲ為スヲ本則トス
 重要警備対象物ノ内特ニ重要ナルモノニ限リ警察官吏之ヲ警護ス
 非常事態ニ際シ重要警備対象物ニ付其ノ管理者又ハ所有者自ラ警護ヲ実施シタルトキ又ハ警察官吏ニ依ル警護ヲ為スノ要アリト認ムルトキハ速ニ其ノ旨ヲ警察官庁ニ通知ス
第三十五条 重要警備対象物ノ内軍事上特ニ緊要ナルモノニ限リ所要ニ応ジ陸海軍ニ依リ警護セラル此ノ場合当該関係警備機関ハ警備ニ任ズル陸海軍ノ部隊ト緊密ニ連繋ヲ保持ス
 陸海軍ニ於テ警護ヲ担当スル重要警備対象物ハ関係陸海軍ノ指揮官ヨリ関係官庁ニ通知ス
第三十六条 内務大臣ハ中央総動員警備協議会ノ議ヲ経テ非常事態ノ種別ニ応ジ総動員警備上重要ナル地域ヲ指定シテ主要警備地ト為ス
 地方長官ハ地方総動員警備協議会ノ議ヲ経テ主要警備地ノ区画ヲ決定ス
第三十七条 主要警備地ニ付テハ他ノ地域ニ比シ特ニ総動員警備ヲ至厳ナラシム
  第六節 機密保護
第三十八条 機密保護ノ為概ネ左ノ事項ノ徹底ヲ図ル
 一 間諜ノ取締
 二 通信ノ取締
 三 新聞、雑誌其ノ他ノ出版物ノ取締
 四 内外人出入国及旅行ノ取締
 五 其ノ他軍事上ノ秘密、軍用資源秘密、国家機密、総動員機密及経済秘密ニ接触スル者ノ特別取締
 第三章 各種非常事態ニ対スル総動員警備要領
  第一節 沿岸警備
第三十九条 沿岸警備ノ主眼ハ沿岸ニ対スル敵ノ攻撃ニ対シ陸海軍ノ行フ防衛ニ即応シテ官民警備機関ノ強力且有機的ナル警備活動ニ依リ国土防衛上遺憾ナキヲ期スルニ在リ
第四十条 沿岸警備機関トシテハ警察其ノ他ノ各庁警備機関、警防団、学校報国隊、特設防護団等原則トシテ既存ノモノヲ以テ之ニ充ツ
第四十一条 沿岸警備機関ノ行フ業務ハ混乱ノ防止、流言蜚語ノ取締、謀略ノ阻止等非常事態下ニ於ケル治安維持上緊要ナル業務ノ外概ネ左ノ如シ
 一 警視、警戒
 二 通信
 三 警報
 四 海上ニ対スル灯火管制
 五 重要警備対象物ノ防護
 六 待避及緊急避難
 七 救護
 八 自衛抵抗其ノ他敵ノ自由ナル行動ヲ困難ナラシムル措置
 九 必要ニ応ジ消防其ノ他ノ防護措置竝ニ警備ニ任ズル陸海軍部隊ヘノ協力
第四十二条 沿岸警備ノ実施ノ時期及区域ニ関シテハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ノ通知ニ依リ内務大臣之ヲ定ム但シ緊急ノ必要アル場合ハ軍司令官、鎮守府司令長官、警備府司令長官又ハ独立艦隊司令長官ノ通知ニ依リ地方長官之ヲ定ム
第四十三条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ陸海軍ノ行フ防衛ニ即応セシムル為沿岸警備ニ関スル計画設定上基準トナルベキ事項ヲ定メ之ヲ内務大臣及其ノ他ノ関係大臣ニ提示ス
 軍司令官、鎮守府司令長官、警備府司令長官又ハ独立艦隊司令長官ハ陸海軍ノ行フ防衛ニ即応セシムル為沿岸警備ニ関スル計画設定上基準トナルベキ事項ヲ定メ之ヲ地方長官及其ノ他ノ関係地方官庁ニ提示ス
 内務大臣及其ノ他ノ関係大臣又ハ地方長官及其ノ他ノ関係地方官庁ハ前二項ノ提示ヲ受ケタルトキハ之ニ応ジ沿岸警備ニ関スル計画ヲ設定ス
第四十四条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ沿岸警備ノ実施ニ付陸海軍ノ行フ防衛ニ即応セシムル為必要ナル事項ヲ内務大臣又ハ其ノ他ノ関係大臣ニ請求スルコトヲ得
 軍司令官、師団長、要塞司令官、防衛司令官、警備司令官、鎮守府司令長官、警備府司令長官、独立艦隊司令長官、根拠地隊司令長官又ハ警備隊司令ハ沿岸警備ノ実施ニ付陸海軍ノ行フ防衛ニ即応セシムル為必要ナル事項ヲ地方長官、警察署長又ハ其ノ他ノ関係地方官庁ニ請求スルコトヲ得
 防衛ニ任ジアル独立セル陸海軍部隊ノ長ハ沿岸警備ノ実施ニ際シ緊急ノ必要アルトキハ陸海軍ノ行フ防衛ニ直接必要ナル事項ヲ其ノ地ノ関係行政庁ニ請求スルコトヲ得
 内務大臣若ハ其ノ他ノ関係大臣又ハ地方長官、警察署長若ハ其ノ他ノ地方官庁又ハ関係行政庁前三項ノ請求ヲ受ケタルトキハ之ニ応ジ所要ノ措置ヲ講ズ
第四十五条 海上ニ対スル監視ハ防空監視哨其ノ他既存ノ防空監視施設ヲシテ之ニ当ラシメ沿岸警備ノ為ノ特別ナル監視哨ノ配置ハ軍司令官、鎮守府司令長官、警備府司令長官又ハ独立艦隊司令長官ノ通知ニ依リ地方長官之ヲ行フ
第四十六条 敵ノ攻撃ニ際シ之ガ警報ヲ一般ニ伝達スル為所要ノ措置ヲ講ズ
  第二節 空襲警備
第四十七条 空襲警備ノ主眼ハ空襲ニ伴ヒ生起スル各種有害事象ヲ迅速適切ナル警備活動ニ依リ予防排除シ重要機関、施設ノ機能発揮ニ支障ナカラシムルト共ニ人心ノ安定ヲ図リ秩序ヲ維持又ハ回復シ以テ国土防衛上遺憾ナキヲ期スルニ在リ
第四十八条 警備機関ノ行フ業務ハ空襲被害ノ状況等ニ依リ差異アルモ主要ナルモノ概ネ左ノ如シ
 一 情報ノ蒐集及宣伝上ノ措置
 二 流言蜚語ノ取締
 三 敵ノ諜報、宣伝、謀略ノ阻止
 四 重要警備対象物ノ警護
 五 戦時犯罪ノ予防又ハ取締
 六 混乱ノ防遏
 七 被害ノ防止軽減
 八 避難者ノ誘導又ハ収容
 九 交通ノ制限又ハ禁止
 前項ニ掲グル業務ニ該当スル防空法第一条及同法施行令第一条ニ掲グル業務ノ実施及之ニ関シ必要ナル設備資材ノ整備ハ防空計画ノ定ムル所ニ依ル
第四十九条 空襲警備ハ地域又ハ施設ノ重要度ニ従ヒ緩急順序ヲ定メ最モ実情ニ即シ且防空計画ニ照応スル如ク之ヲ実施ス
第五十条 空襲時ニ於ケル各機関ノ警備力ハ努メテ集団的且機動的ニ之ヲ運用スルト共ニ連続空襲ヲ考慮シ適宜弾力性ヲ保持セシム
第五十一条 空襲時ニ於ケル警備ハ常ニ状況ヲ的確ニ把握スルト共ニ其ノ推移ヲ洞察シ特ニ初期ニ於テ機ヲ失セズ徹底セル対応措置ヲ講ズルヲ要ス之ガ為現場各機関トノ連絡ヲ緊密ニシ此等機関ヲシテ果敢ニシテ且統制アル行動ヲ為サシム
第五十二条 空襲警備ハ極メテ広汎多岐ニ亘ルヲ以テ現場各機関ト各級警備本部並ニ警備機関ト他ノ関係機関トノ連絡ヲ緊密ナラシメ警備措置ヲシテ全体トシテ一貫統制アラシム
第五十三条 空襲時ニ於テ正確ナル情報ヲ迅速ニ蒐集シ且警備措置ヲ適切ナラシムル為総動員警備協議会ニ於テ適時活発ナル警備情報会同ヲ行フ
 警備情報会同ニ於テ取扱フベキ事項概ネ左ノ如シ
 一 災害ノ状況ニ関スル事項
 二 治安ノ状況ニ関スル事項
 三 各庁警備ノ状況ニ関スル事項
 四 警備上速ニ措置スベキ事項
 五 其ノ他必要ナル事項
第五十四条 空襲時ニ於テ官民警備機関ノ支援後拠トシテ治安ノ維持又ハ災害処理ノ為軍隊ノ出動アリタルトキハ相互ニ緊密ナル連繋ヲ保持シ警備目的ノ達成ニ遺憾ナキヲ期ス
  第三節 災害警備
第五十五条 災害警備ノ主眼ハ大ナル風水害、震災、火災等ニ対処シ之ガ戦争遂行ニ及ボス影響ヲ最少限度ニ止ムル為速ニ被害ヲ防止軽減シ人心ノ安定ヲ図リ秩序ヲ回復スルニ在リ
第五十六条 警備機関ノ行フ主要ナル業務ハ概ネ左ノ如シ
 一 人命ノ救助
 二 資源ノ潰滅防止
 三 災害ノ防禦又ハ鎮滅
 四 避難者ノ誘導
 五 罹災者ノ救護
 六 流言蜚語ノ取締
 七 犯罪ノ予防又ハ取締
第五十七条 災害警備ハ事態発生後ニ於テ対応措置ヲ講ズルコト多カルベキヲ以テ警備要員ノ集結、出動、配置其ノ他ノ警備措置ヲ特ニ敏速ニ行フノ外左ニ依リ被害ノ発生ヲ未然ニ防遏スルニ努ム
 一 風水害、震災等ニ対シテハ各種ノ手段ヲ講ジテ災害ノ発生ヲ予知スルニ努メ之ニ応ジ迅速適切ナル事前措置ヲ講ズ
 二 火災ニ対シテハ常ニ適切且徹底セル火災予防手段ヲ講ズ
第五十八条 災害警備ニ付テハ災害ノ種別ニ応ジ且地理的条件其ノ他ノ実情ヲ勘案シ適宜警防区ヲ設定シ警備要員ノ配置及運用、警備用設備資材ノ整備等ニ関シ計画準備ス
第五十九条 現場ニ於ケル災害警備ニ当リテハ最モ迅速ナル行動ヲ必要トスルヲ以テ成ルベク現場指揮官ヲシテ状況ニ応ジ敏速適切ナル措置ヲ独断専行スルヲ得シム
  第四節 騒擾警備
第六十条 騒擾警備ノ主眼ハ騒擾ヲ萌芽ニ於テ芟除シ之ガ勃発ニ当リテハ迅速果断ニ抑圧シテ公共ノ安寧ヲ確保シ戦争遂行ニ支障ナカラシムルニ在リ
第六十一条 騒擾勃発ノ兆アルトキハ必要ニ応ジ関係者特ニ首謀者ノ予防検束、集会又ハ多衆運動等ノ制限又ハ禁止、巡察警戒ノ実施、流言蜚語又ハ不穏文書図書等ノ取締、必要地域ノ交通ノ制限又ハ禁止等ノ措置ヲ講ジ各種ノ策動ヲ未然ニ封圧ス
第六十二条 騒擾勃発シタルトキハ其ノ発生ノ原因ニ依リ又ハ其ノ状況ニ応ジ機ヲ失セズ適切ナル対応策ヲ講ジ之ヲ抑圧ス
第六十三条 騒擾警備ニ当ル警備機関ハ常ニ公平無私一途ノ方針ニ基キ其ノ行動ヲ律スルヲ要ス
第六十四条 騒擾警備ニ当リテハ一般ニ重要警備対象物ノ警護ヲ強化ス
第六十五条 騒擾警備ニ当リテハ騒擾ノ表面的活動ヲ防止鎮圧スルト共ニ秘密裡ニ行ハルル各種策動ヲ警戒封圧ス
第六十六条 騒擾ノ鎮圧ノ為ニハ強力ナル武力ヲ背景トスルヲ有利トスル場合多キヲ以テ出動セル軍隊トノ連繋ヲ緊密ニシ警備上遺憾ナキヲ期ス


戦局ノ推移ニ鑑ミ軍ノ戦時警備ニ照応シテ関係各省ニ於テハ「総動員警備計画暫定綱領」ニ依リ総動員警備ヲ実施シ来レルガ右綱領ハ昭和十一年閣議決定ヲ経タルモノニシテ其ノ内容現下時局ノ要請ニ副ハザル所アリタルヲ以テ新ニ「総動員警備要綱」ヲ設定シ前記綱領ハ之ヲ廃止セントス
要綱ノ主眼点ハ
(一) 総動員警?n大東亜戦争中沿□ニ対スル敵ノ攻撃、空襲、災害、騒擾其ノ他ノ非常事態発生シ又ハ発生ノ虞大ナルトキ実施スベキコトヲ明ニスルト共ニ之等各種事態ニ応ズル総動員計画ノ目的方法ヲ定メタルコト
(二) 総動員警備ハ軍ノ行フ警備ト関連多キニ鑑ミ緊密ナル連繋協調ヲトラシムルコトトシ特ニ沿岸警備ニ関シテハ軍ノ通知、提示請求等ニ依リ軍ノ行フ警備ニ即応セシムルコトトシタルコト
(三) 総動員警備ノ実施ハ其ノ性質上警察力ヲ中核トスベキハ当然ノ事□ナルヲ以テ之ヲ明ニスルト共ニ之ヲ掌握指揮スル内務大臣ガ地方長官ニ総動員警備ノ実施ヲ命ズルト共ニ関係各大臣ニ其ノ旨通知シ右通知ヲ受ケタル関係大臣ハ直ニ其ノ下級官庁ニ通知シ且必要アルトキハ自ラ総動員警備ヲ実施シ又ハ下級官庁ニ之ガ実施ヲ命ズルコトトスル等官庁相互ノ関係ヲ定メタルコト
(四) 中央及地方ニ総動員警備協議会ヲ接ケ軍並ニ関係各庁ノ総動員警備ニ関スル連絡協調ヲ緊密ナラシムルコトトシタルコト

昭和19年後半

昭和19年後半のページに戻ります

blackcat写真館もご覧ください