朝鮮電力国家管理要綱
昭和17年12月31日 閣議決定
朝鮮電力国家管理実施要綱(情報局発表)
第一 方針
大東亜共栄圏内に於て朝鮮に負荷せられたる生産力拡充、特に焦眉の急務たる軽金属工業其他重要国防産業の拡充計画の完遂を期する為其の基礎産業たる電気事業に付之が電力資源の合理的開発を促進し電力料金の適正を期すると共に電力動員を強力に実施するは刻下の急務たるに鑑み茲に国家管理体制を確立し以て朝鮮に於ける電気事業を高度国防体制に即応せしめんとす
第二 要領
一、朝鮮総督は朝鮮に於ける発電、送電及配電を管理すること但し自家用又は地方的需要にして統制の要なきものは之を除くこと
二、朝鮮総督は電力設備の建設計画、電力料金其の他電力需給に関する重要事項を決定し、又は電力管理上必要なる命令を為し得るものとすること
前項後段の規定に依り為したる命令に因り生じたる損失は政府補償すること
三、朝鮮総督は新に制定に基く特殊会社たる朝鮮電気株式会社(仮称)を設立し差当り其の定むる発電及送電を行はしむること
四、朝鮮電気株式会社は朝鮮に於ける既存電気会社の統合、事業の譲受及設備の現物出資当に依り之を設立すること前項の場合に於ける評価に関しては評価委員会を設置し之が公正妥当を期すること
政府は国有に係る主要電力設備及其の付属設備を朝鮮電気株式会社に現物出資すること
五、朝鮮鴨緑江水力発電株式会社は満洲国との特殊関係に鑑み、朝鮮電気株式会社に統合を為さず制令に基く特殊会社に改組して之を存置し、鴨緑江及図們江本流に於ける発電を行はしむること
六、政府は朝鮮電気株式会社に対し社債及配当の保証、租税の減免其の他業務上必要なる特権を賦与すること
七、朝鮮総督は朝鮮電気株式会社の業務に関する重要事項に付其の認可を受けしめ其の他会社の監督上必要なる命令を為し得るものとすること
八、朝鮮鴨緑江水力発電株式会社に対しても前二項に準じ助成監督を為すこと
第三 措置
一、朝鮮総督は本要綱を実施する為法令及予算上必要なる措置を為すものとす
二、特殊会社の設立及運営に当りては民間の優秀なる技術及経験を中心として之を積極的に活用するものとす
三、電気事業の統合に当りては重要産業との関連を考慮し戦時下に於ける生産活動に支障なからしむる為必要なる措置を講ずるものとす
四、朝鮮電気株式会社は朝鮮鴨緑江水力発電株式会社の株式の半数を所有する等の措置に依り一元的に運営するものとす
入力者注:国立公文書館目録検索の情報により、正式タイトルを追加した。