remove
powerd by nog twitter
国鉄があった時代
日本国有鉄道のあった昭和時代を検証するサイトです。日本国有鉄道のあった昭和時代を検証するサイトです。
国立国会図書館から引用

逓信緊急政策要綱

昭和16年12月22日 閣議決定

  第一 逓信部門ノ戦時体制強化ニ関スル方策
国民生活戦時体制ノ強化及戦争目的完遂ニ対スル国力ノ集中的発揚ヲ目的トシ交通、通信、電力、ニ関スル国民ノ利用態様ヲ必要最低限度ニ切下グルト共ニ之ヲ確保シ他面現存施設設備ヲ再編成シ生産力拡充上其ノ最高能率ノ発揚ヲ期スル為左記方策ヲ実施スルコトトシ所要法制ノ整備発動等諸般ノ措置ヲ講ズルモノトス。
 (1)通信需要ノ徹底的規正及通信取扱制度ノ戦時編成
   国民生活戦時化ニ即応シ既ニ実施シ来レル通信利用規正方策ヲ徹底シ不急不要通信ハ之ヲ停止セシムルコトトシ之カ為郵便、電信、電話、ノ通信制限ヲ実施スル等諸般ノ措置ヲ断行スルト共ニ通信業務ノ戦争経済ノ活発ナル進展ニ遺憾ナカラシムルコトトス。
 (2)電気通信施設ノ統合整理
   電気通信施設ハ其ノ大本ヲ国営ト為シアルモ特殊目的ニ専用セラルル各種施設ハ官民ヲ通ジ尚尠カラズ。之ガ建設保守及活用各般ニ亘リ資材労力ノ効率的使用又ハ通信能率ノ最高度発揚ノ為ニハ之ヲ逓信官署ニ統合整理ヲ要スルモノナル処今日迄末ダ実行シ得ザル次第ナルガ此際至急之ガ実現ヲ図ルコトトス。
 (3)電力利用ノ戦時再編成
   電力需給関係ノ実情ニ鑑ミ既ニ電力調整令ニ基ク電力消費規正ヲ実施シアル処之ガ一般的強化ヲ図ルト共ニ電力消費ノ大宗タ(一行判読不能)興強行スルノ要緊切ナルモノアリ、尚電力ノ積極的合理的使用ニ依ル国民経済生産性ノ高揚特ニ農村電化、鉄道電化ノ促進ハ食糧、労力、燃料各対策ニモ重大ナル関連アリト認メラルルヲ以テ至急電力経済戦時編成ノ完成ヲ図ルコトトス。
 (4)海上輸送物資ノ出荷統制
   大東亜戦争ノ発展ニ対応シ今後愈々其ノ緊迫度ヲ加重スベキ海上輸送力ノ強化ハ海運国家管理ノ実施ニヨリ其ノ高能率ヲ確保セントスルモ之ニ対応スル強力ナル出荷統制ノ実行ハ切実ニ要請セラルル処ニシテ其ノ実施ナクンバ戦争遂行上極メテ憂慮スベキ事態ヲ招来スルコト明ナリ。
   即チ全生産活動ノ計画的指導ニヨリ、完全強力ナル海上輸送物(一行判読不能)トス。
 (5)海陸輸送連繋強化
   今後愈々加重スベキ海上輸送力ノ逼迫或ハ戦時下港湾施設ニ対スル危険及被害発生等ノ事態ニ備ヘ海上輸送距離ノ短縮ヲ図リ海上輸送力ノ増強ヲ期スベク海上輸送物資ノ陸上輸送転嫁ノ方策ハ更ニ一層強化スルコトヲ要シ全面的出荷統制ノ実施ト照応シ海陸輸送連繋強化ヲ組織的計画的ニ実現スルコトトス。
 (6)コンヴォイ制実施ニ要スル施設促進
   コンヴォイ制実施ニヨル輸送能率ノ低下ヲ最少限度ニ防止シ且最モ安全ナル運航ヲ確保センガ為ニ港湾施設、荷役施設、港湾労働力ノ統制強化等諸般ノ措置ヲ講ズルコトトス。
 (7)(判読不能)
   国民生活ノ確保ト生産力拡充並ニ国債消化資金ノ蓄積ハ戦時下愈々其ノ重要度ヲ加ヘツツアル処両事業ノ使命達成上現在最高制限額ノ引上ハ緊急ノ要アルヲ以テ関係庁ト協力シ速ニ之ガ実施ヲ図ルコトトス。
(8)郵便小切手貯金法ノ制定
   近時現金取引ノ旺盛トナレルニ伴ヒ民間ニ退蔵セラルル資金漸次増加シ種々ノ弊害ヲ醸成シツツアル実況ニ鑑ミ郵便小切手制度ヲ創始シ国民ヲシテ日常主要ナル取引ハ現金ニ代ヘ郵便小切手ヲ以テ決済セシメ以テ退蔵資金ヲ吸収スルト共ニ通貨ノ膨張ヲ抑制シ戦時財政政策ノ遂行ニ資スル為郵便小切手貯金法(仮称)ヲ制定セントス。
 (9)郵便貯金切手及割増金付郵便貯金切手制度ノ創始
   現下国内ニ横溢スル非道購買力ノ急速ナル吸収ヲ図ルノ要アリト認メラルルヲ以テ郵便貯金制度ニ附帯スル施設トシテ郵便貯金切手制度及割増金付郵便貯金制度ヲ実施スルコトトス。

  第二 逓信部門ノ拡充強化ニ関スル方策
交通、通信、電力等逓信事業ハ全国家経済活動ノ基礎条件トシテ常ニ先行的強化拡充ヲ必要トスルモノナル処計画経済ノ実現徹底未ダ尚充分ナラザルガ為ニ稍モスレバ反テ諸生産活動ニ後進シ、国家総力発揚上種々遺憾アリシコトヲ覆ヒ得ザル次第ナルガ、生産力拡充及生産活動最高効率ノ確保ヲ以テ戦時経済完遂ノ鍵鑰トスル将来ニ於テ万難ヲ排シ之ガ拡充強化ヲ期シ左記方策ヲ実施スルコトトシ各種国家経済計画等ニ於テ其ノ実現ニ必要ナル諸般ノ措置ヲ講ズルモノトス。
 (1)電力設備ノ拡充強化
   電力設備ハ之ガ建設ニ極メテ長大ナル年月ヲ必要トスルガ為ニ国民経済活動ノ昂揚期殊ニ戦時経済下ニ於テ極端ナル電力不足ヲ惹起セル事例少ナカラズ。科学工業、電気冶金工業等重化学工業ノ飛躍的活動ヲ予期セラルル今次戦争遂行上電力設備ノ拡充強化ニ特ニ配意ヲ為スト共ニ電力設備ノ効率ヲ増進スル為電力機器及電気用品ノ全般ニ亘リ之ガ規格ヲ急速ニ制定実施シ以テ之等機器及用品ノ製造配給使用ノ合理化ヲ期スルコトトス。
 (2)通信施設拡充改良ノ促進
   電信、電話需要ハ戦争経済進展ト併行シ飛躍的増加ヲ見ルコト明ナル処既ニ現有能力ヲ以テシテハ戦時体制下各種活動ニ相当支障ヲ来シアル次第ナルヲ以テ特ニ防衛通信、官用通信、生産活動等ニ即応スル通信施設ノ整備拡充ニ遺憾ナカラシムルコトトス。
   尚郵便逓送機関ノ整備ハ燃料政策ニ照応シ焦眉ノ急務ナルヲ以テ、逓送事業ノ統合、各種逓送施設ノ整備確立等適切ナル処置ヲ講ジ、仍テ基礎的通信ノ安定ヲ期スルコトトス。
 (3)船腹ノ急速拡充
   戦時急造船トシテ戦時規格ヲ設定シ、急速ナル船腹ノ増強ヲ図ルト共ニ燃料政策ノ実情ニ鑑ミ之等船舶ハ総テ石炭ヲ使用スルモノトシテ其ノ焚炭装置ニモ極力石炭経済化ヲ図ルコトトス、尚船舶不足激化、燃料油ノ不足ニ対処シ国内石炭輸送ノ確保ヲ図ルタメ機帆船ノ活用ヲ図ルト共ニ石炭ヲ燃料トスル艀船曳船航路ヲ新造スルコトトス。
 (4)航空工業ノ助長強化
   航空機ノ大量確保並之ガ消耗ニ対スル補充ヲ急速且容易ナラシムル為航空機部分品ノ製造事業ニ対シテモ必要ナル保護統制ヲ加フルト共ニ滑空機製造事業ニ対スル助長ヲ強化スル如ク航空機製造事業法ヲ改正シ之ニ基キ適切妥当ナル保護統制ヲ加ヘ以テ航空機製造ノ量的質的発展ヲ図ルモノトス。
 (5)特殊技能者養成施設ノ拡充強化
   電気通信士、電気通信施設建設保守要員、航空機乗員、及海員等特殊技能者ノ養成ハ、軍要員ノ充足、大東亜共栄圏建設工作ノ発展ニ対処シ、飛躍的増強ヲ必要トスルヲ以テ之ガ養成施設ノ拡充ヲ図リ官民養成機関ノ整備強化ニ付特段ノ措置ヲ講ズルコトトス。
   尚国民航空ノ振興ニ関シ青少年ヲ対象トスル飛行機及滑空機操縦及技術ノ訓練実施等所要ノ施設機構ヲ整備拡充スルコトトス。

  第三 共栄圏逓信政策確立ニ関スル方策
広大ナル地域ニ亘ル大東亜共栄圏内諸邦ノ結帯トシテ相互間ニ存スル長大ナル時空間ノ短縮ヲ期スル交通、通信政策ハ敵性諸国家ノ既存勢力ト抗争シ着々実行シ来リタル所、今次大東亜戦争激発ニ際シ之ガ飛躍的展開ヲ敢行シ、新秩序建設ノ基礎ヲ急速完成スルコトヲ要スルヲ以テ之ガ為左記方策ヲ急速実施スルコトトシ所要外交、経済諸般ノ措置ヲ講ズルモノトス。
 (1)交通、通信、電力ニ関スル敵性資本及技術ノ国家管理
   我国ニ於ケル敵性資本及技術ノ国家管理ヲ急速ニ実施シ、科学技術ノ日本的転換及企業ノ日本的性格ノ確立ヲ図リ、将来ニ於テ外国技術及資本ニヨル経営、支配ヲ完全ニ此際脱却スベキ緊(一行判読不能)
 (2)米、英勢力ノ徹底的駆逐
   大東亜ニ存スル米、英交通通信、電力資本施設ノ完全ナル制圧及戦争遂行中敵ノ企図スベキ一切ノ交通通信工作ノ破粋ニ遺憾ナキヲ期スルト共ニ、共栄圏内諸邦ノ交通、通信電力事業ノ米英的要素ヲ絶滅シ我国ノ資本及技術ニヨル新建設ヲ確保スルガ為所要工作ヲ急速実施スルコトトス。
 (3)共栄圏通信連合ノ結成
   旧世界秩序ヲ基礎トシ成立シアル郵便電信ニ関スル万国条約等ノミニテハ大東亜共栄圏ノ建設及世界新秩序ノ確立上支障少カラザルヲ以テ共栄圏内諸邦相互間ニ於テ急速新事態ニ即応スベキ通信制度組織ヲ確立スルノ要アリ仍テ大東亜通信連合ヲ結成シ、之ガ急速ナル具体化ヲ図ルコトトス。
 (4)通信連絡網及交通路網ノ整備
   大東亜ヲ支配シアリタル米英交通通信勢力ノ駆逐ニ照応シ共栄圏内ニ於ケル交通通信網ノ急速ナル整備ハ戦争遂行及建設開発工作上絶対必要ナルヲ以テ、戦局ノ発展ニ追随シ適切ナル整備建設ニ遺憾ナカラシムルコトトス。
 (5)共栄圏急速建設ニ必要ナル各種研究調査ノ実施
   官民調査研究機関等ヲ動員シ、科学技術ノ集約的活用ヲ図ルコトトシ、速カニ具体的目標ノ定立及所要資材資金ノ供給確保ニ努メ、要スレバ現地調査ノ実施等活発ナル措置ヲ講ズルコトトス。

  第四 行政機構ノ整備調整ニ関スル方策
高度国防国家体制建設ニ当リ其ノ中核タル行政機構ノ整備調整ハ極メテ緊切ニシテ之ガ全面的実施ヲ促進スベキ要アリト認メラルルヲ以テ戦争遂行ニ障害ヲ与フルコトナキ万途ヲ以テ着々実施スルコトトシ差向左ノ方策ニ付具体的措置ヲ講ズルモノトス。
 (1)内外地行政ノ総合強化
   多年ノ懸案事項ナル処戦時下之ガ機構的統合ニ付テハ相当困難アリトスルモ交通通信ニ関スル行政ハ敏速ナル一体的運航ヲ要スルコト極メテ大ナルヲ以テ、内外地交通通信行政ノ総合性ヲ強化確保スル為必要ナル運用上ノ措置ヲ講ズルコトトス。
(2)行政監察制度ノ確立
   (約13文字判読不能)図ルト共ニ内閣ニ総合的行政監察官庁ヲ創設シ政府全般ニ亘ル統一的監察事務ヲ実施セシムルコトトス。
   尚現行官吏服務規律ノ再検討等官吏道ノ積極的本源的確立錬成ニ付所要ノ措置ヲ講ズルコトトス。
 (3)官庁下級職員ノ厚生対策
   官庁下級職員ハ最低生活ニ甘ンジツツモ尚生活費ノ欠損ヲ見ルモノ極メテ多ク之ガ生活確保ニ付急速対策ヲ講ズルコトトシ併セテ時局下重要ナル行政ノ実務ニ従事シツツアル之等下級職員ノ錬成保健等諸般ノ厚生施設ノ整備拡充ヲ急速実施スルコトトス。

昭和16年後半

昭和16年後半のページに戻ります

blackcat写真館もご覧ください