対仏印支経済発展ノ為ノ施策
昭和15年9月3日 閣議決定
世界新秩序ノ進展ニ伴フ経済圏発生ノ必然性ヲ確認シ、共存共栄ノ大局的立場ニ基キ、速ニ仏印支ト経済的緊密化ヲ図リ、皇国ヲ中心トスル大東亜経済圏ノ一環タル実ヲ挙ゲンコトヲ期シ、差当リ左記要領ニヨリ施策スルモノトス
一、現地邦人ノ経済活動ヲ阻害スル諸種ノ制限的措置(別冊資料参照)ヲ撤廃又ハ緩和シ、邦人ノ経済的活動ヲ他ニ優先シテ自由闊達ナラシムル如ク努ムルコト
二、皇国ノ必要トスル重要物資ハ可及的ニ大東亜圏内ニテ確保シ、以テ英米ヨリ資源的独立ヲ図ルタメ、仏印支ニ対シテモ法人企業ノ創設及経営ニ特別ナル便宜ノ供与ヲ要求スルト共ニ皇国必須ノ重要物資ヲ優先的ニ皇国ニ輸出ヲナサシムル如キ貿易協定ノ設定ニ努ムルコト
差当リ仏印支ニ対シ米、石炭、燐灰石、マンガン、工業塩、錫、生ゴム、亜鉛、珪砂等ニツキ輸出ノ保障ヲ要求スルコト
尚進ミテハ皇国ノ指導ニヨル貿易管理ノ実現ヲ見ル如ク努ムルコト
三、仏印支ヲ通ズル雲南広西貴州等ノ周辺地区ノ重要物資ノ取得ニツキテモ、適当ノ措置ヲトラシムルコト
四、皇国製品ノ対仏印支輸出増進ニツキ特ニ協力提携ヲ求ムルコト
五、将来他ノ大東亜諸地域ヲ併セ皇国ヲ中心トスル大金融圏ノ設定ヲ目標トシ、仏印支トノ新金融関係ノ設定ニ付テモ之ガ一環タラシムル如ク努ムルモノトス、但シ仏印支自体ハ之ヲ円地域トナスコトヲ目的トセザルコト
尚仏印支ノ銀行等ヲシテ本邦側ニ極力金融上ノ便益ヲ供与セシムルノミナラズ、進ミテハ皇国ノ指導ニヨル為替統制ノ実現ヲ見ル如ク努ムルコト
六、交通及通信ニ関シテハ大東亜全局ノ指導的地位ヲ確保スル一環トシテ左ノ特殊権益ノ設定ニ努ムルコト
イ、沿岸貿易権、不開港入港権及港湾設備ノ経営及利用権
ロ、海底電線ノ陸揚及運用権、国内通信事業経営ニ対スル参加権、ソノ他ノ通信権
ハ、定期航路ノ新設延長及航空保安施設ノ設置権
七、水産業ニ関シテハ南方ニ確固タル地歩ヲ建設スルタメ漁業根拠地ノ設置其ノ他水産業ノ経営ニ伴フ権益ノ獲得ニ努ムルコト
八、仏印支ニ於ケル第三国権益ニ関シテハ新規ノ設定ヲ許サザルト共ニ既存ノモノハ速ニ之ヲ駆逐スルガ如ク努メシムルコト
九、仏印支ノ対内外経済政策ノ樹立及実施ニ参与シ、皇国トノ経済的提携ヲ強化スル為、仏印支側ニ本邦人ヲ加ヘタル経済建設委員会、其他適当ナル期間ヲ設ケシムルコト
貿易、金融、税制、関税、第三国トノ経済協定、企業、交通、通信等ニ関シテハ右機関ヘノ諮問ヲ要スルモノトス
一〇、華僑ノ援蒋抗日態度ニ対シテハ仏印支当局ノ厳重ナル取締ヲ要求スルト共ニ、一方ソノ経済的地位ニ鑑ミ大局的立場ニテ組織及資力ノ利用ヲ策スルコト
一一、皇国ノ経済的発展ヲ期スル為、土着有力者ヲ皇国ニ招致シ、又ハ皇国ノ真姿ヲ宣伝正解セシムル等諸般ノ処置ヲ講ズルコト
一二、経済施策ハ大東亜共栄圏確立ノ大局的立場ニ立脚スルコトトシ、皇国ノ利益伸長ト土民ノ民生ト調和スル如ク努ムルコト
(備考)別冊参考資料ハ削除セリ