実業教育振興委員会趣旨
昭和10年6月18日 閣議決定
我国ノ実業教育ハ明治三十二年実業学校令公布以来画期的発達ヲ遂ゲ規模ノ拡大、内容ノ充実、当ニ隔世ノ感ヲ催サシムルモノアリ 其ノ間幾多有為ナル技術者ヲ養成シ欧州戦争ヲ契機トシ今日ニ及ブ 我国産業ノ飛躍的発展ニ貢献スルトコロ寡カラザルモノアリシコトハ多言ヲ要セザルトコロデアル 然ルニ爾来経済事情ノ変革甚ダシキモノアリ産業ノ状勢亦著シクソノ趣ヲ異ニシ今ヤ当ニ産業維新ノ重大時局ニ当面シツヽアル状態デアル 随ツテ産業ノ機能ニ当ル人物ヲ養成スル実業教育ハ亦全面的ニ新ナル検討ヲ加ヘ時勢ニ適応シテソノ改善振興ヲ図ラザル可カラザル時期ニ際会シタ ソコデ文部省ハ実業教育振興委員会ヲ設置シ 学者、教育者、実業家及産業諸団体関係ノ錚々タル人々ヲ網羅シ之ニ関係官庁当局ヲ加ヘ実業教育ノ改善振興ヲ策スルコトヽシタ
該委員会ハ時勢ニ応ジテ教育ノ運用ヲ考慮シ国家産業ノ発達ト社会ノ福祉ヲ招来スべキ教育方策ヲ樹立セントスルモノデ随ツテ現在ノ産業ノ実情ニ照シ広汎ナル実業教育ノ任務ト其運用ヲ精査シ実業教育ヲシテ教育的ニ大ナル効果ヲ発揮セシムルト共ニ産業ニ教育精神ヲ浸透セシメ其ノ教育的根底ヲ培養セシムル方策ヲ考究シ産業国策ノ遂行ヲシテ遺憾ナカラシムルコトヲ目的トスルモノデアル
本委員会ハ産業卜教育ノ両脚ニ立チ両者ヲ統合シテ適切ナル対策ニ出デントスルモノデ外国ノ事例ニ観ラル、文部省ト産業省ノ共同委員会ニ類スル性質ヲ帯ブルモノデアルカラ委員ノ人選等ニ於テモ一般ノ教育委員会トハソノ趣ヲ異ニシ以テソノ異色アル活動ヲ期待スルコトヽシタノデアル