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自動車運転の極意
モータースポーツは どこまで「スポーツ」か


 この一週間、更新が手付かずになってしまっていた管理人です。
 大型双眼鏡の比較記事を書かなければ と思いつつ、遊び惚けて「雑記帳ネタ」になってしまいました。


 というのも、週末はオートバイ・トライアルの世界選手権が開かれるというので、のこのこ出かけてきたわけです。
 場所は栃木県茂木町、筆者の家からそう遠くはありません。

 オートバイ・トライアルといっても、全く馴染みのない競技でしょう。
 オートバイの選手権というと、どれだけ速く走れるかで競うもの と思われるかもしれません。
 モトクロスにしても ロードレースにしても 基本は速度競技なのですが、トライアルは全く異なります。

 勝負の中身は 難しい地形で「どれだけ足をつかずに走破できるか」を競うのです。
 足を地面に着かずに走破できれば減点なし、一回足をつくごとに1点ずつ減点されていきます。
 3回以上 足をついても3点までしか減点されませんが、転んだり バックしたり コースアウトすれば、その区間は失敗とみなされ5点の減点。
 ゆっくり正確に走りきることが要求される反面、それぞれの競技区間(セクションと呼ばれる)には2分の制限時間が設けられています。

 足を着かずにオートバイを走らせる。
 簡単に聞こえるかもしれませんが、競技は生易しい物ではありません。
 大半のセクションは2本足出歩くことすら困難なのです。

 写真は あるセクションの一場面です。

 審判員の向こうに見える斜面をS字状に走破した後、沢を越えて岩の上を通過しなければいけません。
 見てのとおり、通れるラインはタイヤ一本分より狭い!!

 オマケに岩の頂上は下の沢からは見ることが出来ません。
 ブラインドで岩の頂上をめがけて飛び上がらなければならないのです。
 小川の抜けた後ですから、タイヤには泥がついて滑りやすくなっているはずです。

 転んだら怪我をしそうだし、素人目には怖いことこの上ありません。

 が、世界のトップライダーになると スイスイを走ってしまうんですねえ。
 この一枚だけだとよく分からないでしょうから、どんなところを走っているかはコチラのページを参照ください。

 私も昔バイクをかじっていましたが、絶対にスタート地点まですら たどり着けないでしょう。


 私のような素人が このマイナー種目に惹かれてしまうのは、競技の身近さでしょうか。
 写真でも分かる通り、世界チャンピオンも全日本選手も 観客の手の届くところで競技をしています。
 難関に立ち向かう表情や 操作の一部始終を目の当たりにすることが出来ます。
 選手の息遣いを感じられる世界レベルのモータースポーツなんて他には無いでしょう。

 オマケに 日本ではまだ超怒級にマイナーな競技と来ています。
 人気自動車レースだと¥5桁のチケットをとっても、混雑したスタンドの片隅から双眼鏡をのぞくのが精一杯。
 追い討ちをかけるように行きも帰りも大渋滞。
 トライアルは観客の絶対数が少ない上に セクションが分散していますから、多くのセクションを見ようと欲張らなければ ビール片手に一等地で観戦可能です。(勿論、泥汚れは名誉の勲章でしょう?)

 チケット代も前売り券を買えば 二日で2000円のバーゲン価格。
 大ハズレ映画で 腹を立てるよりもリーズナブルな娯楽でしょう。
 大体、世界選手権なのに入場者が1万人ちょっと って少なすぎない?

 そして何より、見ていて分かりやすいのも トライアルの魅力です。
 「モータースポーツ」でありながら オートバイの占める割合が異常に小さいのです。
 トライアルのバイクは スケート靴のような存在です。
 世界チャンピオンだからといって特別なオートバイに乗っているわけではありません。
 トップライダーが乗っているのと同じバイクは 80万も出せば誰でも手に入れることができるのです。
 F1やスポーツカーレースのように、「スペシャルエンジンをつんでいる」とか「サスペンションのセッティングが悪い」とか専門の知識は全く要求されません。

 トライアルは 極めて難易度の高い地形を走破しますが、一つ一つはオートバイの基本的な操作から組み立てられています。
 静止状態や不安定姿勢でのバランス、駆動力の配分、低摩擦路での制動。
 オートバイを乗りこなす技術の集大成が競技になっているのです。
 オートバイ競技でありながら オリンピック制式競技を目指しているのも頷けませんか。

 そんなわけで トライアルの練習は競技としてだけではなく、バイクの練習カリキュラムとしても利用されています。
 近くに白バイ基地があったら覗いてみてください。
 たまに警官がトライアルバイクに乗って丸太渡りやドラム缶越えの練習をしていることがあります。
 毎日こんな練習をしていたら そりゃあ上手く走れるようになるはずだわなあ。(高い授業料を納めた実感)


 でも、トライアルに限らず自動車・オートバイの操作って、レベルはどうであれ 「基本操作の積み重ね」なんですよね。

 筆者は自動車も趣味ですから 若い頃(?)は度胸一発で峠道を走り回っていたのですが、とてつもない授業料を払ってきました。
 力任せで 速く走れると信じる大馬鹿者だったんですねえ。

 スポーツドライビングが基礎動作の繰り返しから組み立てられる と分かったのは専門のスクールに通った後のことです。
 普段何気なく走らせていると 粗が出ないのですが、様々な制限を加えられる場面になると技術の差が出てしまいます。

 一定の速度で一定の円弧を書きつづける。
 一定の減速をしながら決められた位置に止る。

 これすら私のレベルでは難しいのです。

 さらいカリキュラムが進むと、課題はどんどん難しくなっていきます。

 急減速しながら障害物を回避する。
 低ミュウ路で走破時間を競う。
 超高速から最短距離で停止する。

 ううん、難しすぎて糸口すら見つかりません。

 正確なブレーキ・正確なアクセル・正確なハンドル操作。
 悲惨な成績を突きつけられてみると、どれも満足の行くレベルに達していないんですよ。

 ましてや 幾つかの操作を強調して行なうなんて夢のまた夢。
 更に難易度の高い「スピンからリカバリーしながら障害回避」なんて何回やっても突っ込むからなあ。

 まだ先が見えないのですが、こんな技術の積み重ねがレースやラリーに繋がっていくのでしょうか。
 余りに高度すぎて、日常の運転からは思いもよらないのですが。

 初めから教えてもらっていれば車をX台も潰さないで済んだのになあ。


 練習をしていると 筆者の悲しみに追い討ちをかける出来事も発生します。
 高速ブレーキングのトレーニング中にクルマがガタガタ言いはじめました。

 タイヤを良く見ると・・・

 見事なフラットスポットが出現しているではありませんか。
 レースの世界のことだと思っていたら、市販車でこんな羽目になってしまうとは。
 時速100kmを大きく超えるところで フルロックさせてしまったのが命取りでした。(なんて下手なんでしょう。)

 タイヤのショルダーまで瓦状に偏磨耗しています。

 スクールの帰り道、振動の多い愛車に乗りながら どれだけ泣けてきたことか。
 いくら安物クソタイヤとはいえ 買ってから半年も経っていないんですよ。

 家内に なんて言い訳をすれば 新しいタイヤを買ってもらえるのでしょうか。

 せっかく子守りや家事手伝いに励んで、点数を稼いでいたのに。

 ああ、買おうと思っていたツァイスの8X20が夢と消えそうです。


 

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補足
この愛車は古いもので ABSは装着されていません。
 購入時 ABSはオプションで 筆者は腕を過信して装着しませんでした。
色々な体験をすると たとえスポーツカーでも この手の支援装置は絶対必須と思えてきます。