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夢のお値段・年末編
計算してはいけない統計学

 今年も、クリスマス用品がディスカウントされお餅や松飾りが店頭に目立つ時期になってしまいました。
 今年の反省や来年の計画が頭をよぎりますが、来年の計画になくてはならないのがコレです。

 我が家は代々「博打厳禁」を家訓としてきましたが、こいつだけは例外のようです。
 親が買っているのを見つけたときは、子供心に軽い衝撃を覚えたものです。
 学生時代までは こんなモノはと馬鹿にしていたのですが、経済的な限界が見えてくると藁にもすがる思いになるのでしょうか。

 今年も連番で10枚買ってしまい、妻に再び罵られる有様です。
 我が子が見たら私と同じく親に幻滅を感じるのでしょうが、奇麗事ばかりは言っていられません。
 わが国の財政と同じく、我が家も火の車。
 大半は私の趣味に原因があるのですが、このままではフジノン150mmはおろか壊れたプリンターの更新すらままなりません。

 前後賞込み3億円はともかく、もしここで3等100万円でもあたりさせすれば、すべてがバラ色、数ヶ月は物欲まみれの生活が送れます。
 ミヤウチ100mmは勿論、我が家のパソコンを全取替えが可能です。
 もちろん、ここがもっとも大切なのですが、妻に内緒なのは言うまでもありません。

 万が一、3億円が当たってしまったら フジノン150mmとミヤウチ140mmとニコン120mmを買い揃え、自宅にドームを載せてしまいましょう。
 上司に退職願を叩きつけ、南半球遠征を繰り返すことも可能です。
 車も新車に入れ替えることはもちろん、家内さえも新しく出来そうです。 
 たった3000円で夢のような生活が送れるのです。
 ああ、なんて素晴らしい。老後でしょう(?)。

 が・・・、しかし。
 買った年末ジャンボがあたらなければ何にもなりません。

 ちょっと心配なのは、この宝くじを当りがしばらく出ていない小さな売り場で買ったことでしょうか。
 買う前に身を清めるのも忘れてしまいましたし、抽選を前に妻に触られてしまったのはケチが付いたような気がします。
 本当は、買う1週間前から酒と色事を絶ち、山にこもり滝に打たれて身を清めることが理想です。
 売り場は毎年一等が連発する福島大X屋百貨店にするべきでした。
 時間の関係で、身近な売り場で間に合わせたのが気がかりです。

 ああ、なぜか無性に心配になってきました。
 こんなに不安要因が多いのでは、夜もおちおち眠れません。
 平和な夢が見られるように、私が来年早々フジノン150mmを発注して妻を新しいものに交換できる可能性はどのくらいあるのか、科学的に検証してみましょう。

 早速、買ったばかりの宝くじの裏面を見てみましょう。
 さすがはお上が胴元の富籤だけあって、諸元がはっきり書いてあります。

 一等2億円は2本、前後賞5000万円は4本、2等1000万円は3本、3等100万円は40本出ると書かれています。
 をを、億は無理でも100万クラスはいけそうな気がしてきました。
 還元率の分からない非合法博打に比べて、この明朗会計はなんて安心感があるのでしょう。

 調子に乗って確率を計算してみましょう。
 こんな計算なら中学生の数学でも理解できます。
 この時期になると、皆さんが3億円熱に浮かされるのですから、夢のような数字が出てくるのでしょう。

第415回全国自治宝くじの場合

等級

当選金

当選本数

総額

一等 2億円 2本 4億0000万円
一等前後賞 5000万円 4本 2億0000万円
一等組違い賞 10万円 198本 1980万円
二等 1000万円 3本 3000万円
三等 100万円 40本 4000万円
四等 1万円 1000本 1000万円
五等 3000円 100000本 3億0000万円
六等 300円 1000000本 3億0000万円
さよなら20世紀賞 5万円 3000本 1億5000万円
合計     14億4980万円

 

 おおおおお、さすが「ジャンボ」と銘打つだけのことはあります。
 賞金総額は14億円!!
 少しは私もお金持ちになれそうです。

 さて、還元額は計算できました。
 では、私たちの投資額はいくらになるのでしょうか。

 上の賞金額は宝くじ1ユニット、つまり1000万通り当りの金額ということです。
 この宝くじは1枚300円です。

私たちの投資総額

300円X1000万枚=30億円

 えっ、「30億円」って賞金総額よりも少ない!

 当たり前なんですが、宝くじも一種の博打ですから胴元の寺銭が生じています。
 宝くじを運営するには経費がかかりますし、益金は社会のために投資されます。
 よく「宝くじ号」なんて書かれた献血車を見かけますよね。

 ということは、当然、宝くじを買った人の当選金の平均は出資額を下回ることになります。 

宝くじ1枚(300円)あたりに期待される当選金額

(14億4980万円÷30億円)X300円=144円98銭

 なんて、悲しい結果でしょう。
 統計学的には、3000円を投資した私の平均的な当選額は約1450円にしかならないのです。

 ああ、何てことでしょう。
 私のフジノンの150mmはどうしてくれるんだ、第一勧銀!

 

 ああ、なんか急に酔いが冷めてしまいましたね。

 でも、待ってください。
 冷静に考えてみたら、日本の宝くじを十枚買った場合は必ず六等300円が含まれています。
 それに、私は連番で買ったわけですから、1等が当たれば前後賞も当たる可能性が高くなります。

 そりゃあ、そうでしょう。
 夢を売っている宝くじ、3000円分買って期待値が1449円では寂しすぎます。

 気を取りなおして計算してみましょう。

 6等300円は必ず当たりますから、300円は期待できます。

 5等3000円は1000万本に10万本含まれています。つまり、100本に一本の割合です。
 10枚の連番の中からは10分の1の確率で当りが出る計算です。
 つまり、期待値は300円となります。

 同じように、さよなら20世紀賞、4等、3等、2等と計算していきます。

 私の宝くじ10枚組の期待値

 

当たる確率(10枚当り)

当選金額

期待値

二等 3/1000000 10000000円 30円
三等 4/100000 1000000円 40円
四等 1/1000 10000円 10円
五等 1/10 3000円 300円
六等 1 300円 300円
さよなら20世紀賞 3/1000 50000円 150円

 

 ここまでは前の計算と同じですが、一等・前後賞・組違い賞はちょっと計算が複雑です。

 1等が2本とも私の宝くじから出た場合。
 笑われるかもしれませんが、確率的には可能性があります。
 確率は10の12乗分の1、つまり1兆分の1だけですけど。
 このときは1等それぞれに対して、10回に8回は前賞・後賞とも取ることが出来ます。
 当りの下一桁が「0」か「9」だったときは、片方だけとなります。
 組み違い賞の可能性はありません。

 1等が一本出たときはどうでしょう。
 確率は2{(1/10^6)X(1−1/10^6)}となります。
 このときも、当りのほうには10回に8回は前賞・後賞とも、10回に2回はどちらかだけを取ることが出来ます。
 当たらなかった一等に対しても、極僅か(2/10^7)ですが前賞・後賞片方が取れる可能性があります。
 組違い賞の確率は1枚当り10万分の1の可能性があります。

 もし、一本も一等が出ないときはどうなるのでしょう。
 確率は(1−1/10^6)^2となります。
 このときは前後賞が当たる可能性は極僅かで 、4/10^7の確率しかありません。
 組違い賞の確率は1枚当り5万分の1の可能性があります。

 それぞれの確率に当選金額を掛ければ、期待値が求まるはずです。
 私の使い古しの頭ではちょっと荷が重いので、関数電卓に計算させてしまいましょう。

 1等・前後賞・組違い賞あわせた期待値は・・・・・・・619.99996円と求められました。
 日本の宝くじって1等の配分がすごく大きいんですね。

私の宝くじ10枚組の期待値

 

当たる確率(10枚当り)

当選金額

期待値

1等・前後賞・組違い賞 前述 前述 619.9円
二等 3/1000000 10000000円 30円
三等 4/100000 1000000円 40円
四等 1/1000 10000円 10円
五等 1/10 3000円 300円
六等 1 300円 300円
さよなら20世紀賞 3/1000 50000円 150円
合計     1449円99銭

 えええええええっ。
 前の単純計算とぜんぜん違っていないじゃないかああああああああああああ
 どんな風に計算しても、1450円しか戻ってこないのか。

 私の夢はどうなるんだああああ。

 

 余りにも悲しくなってしまいました。
 何でこんなものを買おうと思ったのでしょう。
 勢い余って、元本が取り戻せる確率なあんてものも求めてしまったのですが、悲しさに追い討ちを掛けるだけでした。
 ここまでの計算で分かるように、宝くじって上に厚く当選金が配分されているので、「元手だけでも取り戻そう」という発想自体がナンセンスなんですね。

 年末になると宝くじの話題があちこちで取り上げられ、当りが出る売り場や大当たりを手にした人のエピソードがテレビでも流されるのですが、冷静に考えてみれば還元率が50%を切っている博打ってすごいことだと思いませんか。
 評判の悪い3競・オートの公営ギャンブルでさえ還元率は75%あるというのに。

 博打厳禁の我が家でも宝くじだけは例外だったのは、こいつが慈善募金みたいなものだったからなんでしょうね。
 それにしても、宝くじ売り場の前に陣取っている方々は、とても慈善精神に溢れているようには見えないんですけど(そういうおまえは?)、その出資額の半分以上が社会のために生かされるとあれば温かい目で見てあげなければなりますまい。

 宝くじのケースに「外国発行の宝くじを日本国内で購入することは禁止されています」って書いてあるのですが、これって自分のショバを荒らされたくないヤ●ザとおなじ発想なのでは。
 それにしても、おいしい商売ですね、博打の胴元って。

 て、偉そうに書いてきましたが、実はこの計算をしたのは今回が初めてではありません。
 去年、サマージャンボを買った時も、同じような計算をして同じような結果が出ていたんですけど。

 それなのに、なんでこんなモノを買ったかって。
 だって、抽選までの1ヶ月、目いっぱいの双眼鏡に囲まれ新しい嫁さんと一緒に高級車を乗りまわせる夢が見れるからじゃないですか。
 宝くじは 発売直後に思いっきり願掛けをしてから買って神棚に上げておくことです。
 そうすればしばらく楽しい夢が見られますよ。

 もちろん、変な計算を信じてはいけません。
 だって、年に約50人の宝くじ億万長者が出ているんですから。

 ちなみに、筆者は何回二日酔いになっても酒を止められない愚か者です。

 


 

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