remove
powerd by nog twitter

双眼鏡の性能比較(6)
1000円以下限定編

 双眼鏡のカタログを見るとピンは5000円くらいから、キリは数百万まで、いろいろな製品が並んでいます。

 でも、いろいろ探してみると、街ではもっと安い双眼鏡がいっぱい売られています。

 安くても双眼鏡の楽しさを伝えられる品があれば、入門用に最適なのですが。

 今回はそんな超安物の双眼鏡を価格別に比較してみましょう。
 本当に1000円以下でも使える双眼鏡はあるのでしょうか。

ホームへ戻る     
研究室入り口へ    


  選手紹介

 今回この企画のために集められた、激安自慢の双眼鏡を安い順に見ていきましょう。

 まず最近あちこちで見かけるようになった「100円ショップ」から。
 そのものズバリの商品名は「双眼鏡」。
 左右の対物筒・接眼筒がブロックのように組み合わされ、それぞれの間隔を調整することで眼幅とピントを調節するようになっています。
 レンズはもちろん全身プラスチック製。可動部分の動きの渋さが安物の悲哀を感じさせる一品です。 

 

 値段順では二番手の選手は、近所の玩具店よりの出場。
 こちらの商品名は「カジュアルグラス」。値段は480円(税別)。
 たった380円の違いでこれほど双眼鏡らしくなるとは。
 ピントもCF方式で眼幅調整も可能。
 中心軸には誇らしげに「JAPAN」の文字が。
 「3X28」とそれらしい表示もやる気十分です。

 

 三番手は近所のカメラ店より大昔に購入したオペラグラス。
 確か値段はジャスト1000円。
 ふたを開けるとバネ仕掛けで対物レンズが跳ね起きる仕掛けは凝っています。
 これも裏には「Made in Japan」の文字。
 いまこの手の商品は中国製が主流なのに、町工場の苦労が感じられる製品です。 

 


   性能チェック

 さて、選手がそろった所でそれぞれの仕組みを見てみましょう。

 さすがに1000円以下の商品だけあって、全てガリレオ式。
 ボディー・レンズともプラスチック製です。

 まず、100円の双眼鏡から。
 極限までコストダウンが図られた結果、ピント調整は手動の伸縮式。


 この動きがなんとも渋いこと。
 風景を見ながらピントを合わせようとすると視軸がずれる。


 おまけに、眼幅調節も伸縮方式。


 狭くしていくと、アームが視野と干渉してしまう。
 あー、なんとも。
 こんな作りでは子供もすぐ飽きてしまいそうです。

 

 次は480円の双眼鏡。
 こちらはきちんとダイアル式。
 みると対物レンズで焦点を調整しています。

               


 軽く風景を覗いてみると、周辺像はともかく結構見えるでないの。
 7倍になれた目には控えめな倍率ですが意外と良く見えます。

 おしまいは折りたたみ式オペラグラス。


 ノッチをはずしてケースを開けると対物レンズがバネで起き上がる仕組み。
 普通のオペラグラスより作りは凝っています。


 が、肝心のピント合わせが出来ない。
 固定焦点方式ならそれでもいいのですが、遠方は約50mくらいまでしかピントが合わない。
 近位は1mから見えるんですけど、遠くが見えなくては双眼鏡としては使い物になりません。
 劇場やコンサートでもこれでは不良品でしょう。


     写真実験

 実用になりそうなのは2番目の「カジュアル・グラス」だけです。
 一応、全部の双眼鏡(?)で、いつものように風景の写真をとって見ました。

普通にデジカメで撮影すると

このような風景に見えます。
肉眼ではかすかに見える道路標識の文字は判別できません。

 

100円ショップ「双眼鏡」で撮影
 視野が狭く、ピントあわせも困難です。
対物筒が明るい色だと光が入り込み、視野をさらに悪化させます。
双眼鏡としての実用性はまったくありません。 
視野が見にくく、標識の識別は不可能です。

 

「カジュアル・グラス」480円で撮影
視野もある程度確保され、どうにか写真も成立しています。
肉眼では判別できなかった標識の文字もどうにか読めるようになりました。

 

「オペラグラス」1000円で撮影
視野がきわめて狭い上に、ピントが遠方で合っていない。
双眼鏡としての資質に問題がある品でした。
 劇場でもまったく使用に堪えないでしょう。

ちなみに、圧縮率も撮影条件も同一です。
写真上の縮尺率も同じですから、倍率と視野は写真同士で比較できます。


     考察

 値段が値段なだけに どの双眼鏡にも全く期待していなかったのですが、「カジュアル・グラス」の健闘が光りました。

 ガリレオ式ですから低倍率で、見た目の印象では若干大きく見えるかなという程度ですが、遠くの看板の判別では肉眼より格段に優れています。
 子供の玩具としては良く出来ているといえるでしょうが、この程度の倍率では飽きが来るのも早そうです。

 むしろ、大人が演劇やお祭りなど倍率にこだわらず、気軽に使う目的のほうが合っていそうです。
 どこかに仕舞っておいて、何かあったときに取り出して使う。
 「双眼鏡」というほど大げさではない使い道がぴったりでしょう。
 もっと安ければイベントなどで配るという使い方も出来そうです。

 100円の双眼鏡は、帰宅直後に「これは100円でも高すぎる」と後悔しそうな一品です。
 双眼鏡としての実用性は全く期待できません。
 子供の玩具として壊されるのが関の山でしょう。
 個人的には、子供に「双眼鏡なんてこんな物」と思われるのは問題です。

 1000円のオペラグラスは、これも買った直後にがっかりしそうな双眼鏡です。
 劇場限定と考えればありなんでしょうけど、無限遠でピントが合わないのは不良品なのでは。
 双眼鏡としての基本条件を満たしていなければ評価のしようが無いんですけど。

 


   実際のフィールドで

 これだけでは双眼鏡の評価にならないので、「カジュアルグラス」をバードウォッチングに使ってみました。
 と、いっても本格的な使用に耐える品しなでないのは明らかなので、窓からスズメの姿を追ってみました。

 確かに少し大きくなって見えるんですが、この倍率では迫力を望むべくもありません。
 倍率の割に視野も狭いので、動き回る鳥を追いかけるのは大変です。

 えさを啄ばんだり、小枝で休んでいる姿なんかは肉眼よりも見えるんですが、本気で鳥を楽しむには役不足でしょう。
 これしか双眼鏡がないのなら諦めはつくでしょうが、一度でもプリズム双眼鏡を使ったことがあると厳しいでしょうね。


  結論

 身近に一つ置いておいて、何気なく使うのには「カジュアル・グラス」のような品でも良いんでしょう。
 「双眼鏡は無くてもいいが何かあった時のために引き出しに入れておく」商品ではないでしょうか。
 少なくとも、趣味の道具として使えるかどうかは疑問です。

 見てきたとおり、この手の商品は当たり外れが大きいようです。
 ハズレをいくつか買ってしまうと、あっという間に数千円なんてことになりかねません。

 1000円くらいのオペラグラスではずれをつかむ危険を考えるなら、はじめからプリズム双眼鏡を買うのも賢い選択なのではないでしょうか。
 このオペラグラスの6倍はしますが、体感性能は何十倍も差があります

 


 

TOPへ   双眼鏡研究室へ   HOMEへ