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合法的自転車泥棒・体験編
2002年11月1日

 今の住所に引っ越してから、自転車ツーキニストの仲間入りをしておりました。

 近所の道は国道16号を筆頭に 渋滞のメッカとなっています。
 わざわざ自動車出すより、チャリの方が早く職場につけるんです。

 そんな ある日のこと、この悲劇は幕を開けました。

 夕方帰ろうと思ったら、外は雨。
 自転車で帰れる天気ではありません。
 やむなく 嫁に車で迎えに来てもらったのでありました。


 その翌日、なんと無いんですよ。

 自転車・・・・・・・・・・・・・・・・のが!!!

 机に置いていた筈なのに、どこを探しても出てきません。
 しかも、もっと最悪なことに 家にあるはずのスペアキーも行方不明になっております。

 はあ、時々あるんですよ。
 この手の鍵の紛失騒ぎ。
 筆者の性格が災いして 年に数回、紛失物から大掃除に発展いたします。

 ところが 今回、更に運悪く 数日間 家と職場の両方で必死の捜索活動を続けたんですが 遭難者を発見できず。

 やむなく、最後の手段。
 「鍵破壊作戦・第?号」が発動されるに至ったのでした。


 で、今回のターゲットは これ。

 筆者、度重なる自転車盗難の経験から いつもガッチリした鍵を持ち歩いておりました。

 購入価格は2000円弱 中国製の安物ですが、リングキーの採用で強そうに見えるでしょう。

 説明書には「この商品の破壊は非常に困難ですので、スペアキーは安全な場所に保管してください」と書かれています。
 最後には「スペアキーを紛失した場合 商品を使用しないでください」なんて恐ろしい言葉も。

 ううん、非常に手ごわそうです。

 この手のワイヤーロックで 同じような目に遭ったときは 迷わず速攻で切断したんですが、今度ばかりはどうなることでしょう。

 迷っていても 仕方がありません。

 どんなに頑丈だって、鍵を壊さないことには通勤の足がなくなるんですから。

 作戦1、ワイヤーカッターでアームの切断を試みる。
 作戦2、だめなら電動ドリルで鍵穴破壊。
 作戦3、それでも駄目なら、金ノコでアームを切断。
 最終作戦、職場にあるトーチで溶断する。

 メーカーが説明書に「破壊は非常に困難」なんて警告を書くくらいですから、このくらい考えてても罰が当たらないでしょう。


 では、早速 作戦開始。

 持ち出したのは 中型のワイヤーカッター。
 スペック上は6mmの軟鋼線まで切断可能と書かれています。

 U字ロックのアーム径は約8mmなんで ちょっと力不足かなあ。
 こんなありふれた道具で切ることが出来るなら「破壊は非常に困難」なんて言えないしねえ。

 まあ、駄目モトで・・・

エイ、エイ、エイ

 あれ・・・

 切れた!!

 ものすごく簡単に。

 所要時間は たったの1分30秒。

 しかも、アームを一本切っただけで 自転車から外れてしまってます。

 人通りの多い駐輪場で作業していたんですが、誰に声を掛けられることもなく我が自転車は自由の身になりました。

 ヤッパリ 形は頑丈そうでも、安物は安物。
 本気で盗難阻止を狙うなら それなりに高価なものを使わないといけないんでしょうか。

 こんな結果になると 市販の鍵自体が信用できなくなってしまいませんか。


 大体、自転車泥棒が騒がれる割に 自転車の鍵って 本当に軟な造りになっています。

 一番簡単に壊れるのが、買い物用自転車で一般的だった前輪に閂を入れるタイプの鍵。

 こいつは ドライバーと金槌があれば本当に数秒、文字通り「瞬殺」が可能です。(筆者経験3秒)
 音が気になる諸氏には小型のバールがお勧め。
 ちょっと時間は掛かりますが、15秒以内で目立たず破壊できるでしょう。

 っていうか、このタイプだと筆者の技術レベルでも ピッキング可能なんですよ。
 そんな理由か最近の新車でこの手の鍵をつけている自転車は、ほとんど見なくなりました。


 次に出てきたのが これ。

 後輪にリング状の閂を入れるタイプの製品です。

 こちらはフレーム2箇所に固定されていますから、前輪鍵よりは耐久性が向上しています。
 しかも、バールで取り付け部分を破壊しても リムの中に鍵が残る構造です。

 ところが、この鍵 まだ色々と弱点が隠れているんです。

 まず、技術系の自転車盗が狙うのが ココ。

 板状の鍵穴です。
 ココをドライバーで破壊すると、簡単に閂が外れてしまいます。(筆者実験では 3分程度で破壊可能)

 もうひとつ、力技系の盗人は ロックの閂を切断してしまいます。

 多くの自転車に標準装備されている鍵は 閂部分が柔わなプレス製。
 家庭用の鉄切バサミでも切断できてしまいます。(筆者所要時間は2箇所で約5分)
 今回使ったようなワイヤーカッターがあれば、30秒でも破壊可能でしょう。

 結局、メーカー側が思ったような盗難抑止力は無かった模様。
 大手メーカーは 更に頑丈になった強化型を装着しています。

 鍵穴は 貫通ドライバーの一撃では壊れない構造になっていますし、閂の太さも従来品の1.5倍に強化されています。

 が ヤッパリ、 閂は軽金属のプレス製。
 有り合わせの道具では壊されはしないでしょうが、ワイヤーカッターの敵ではありません。
 せめて閂くらいU字ロック並みにしないと 本気の相手を止める力は無いでしょう。

 石橋自転車の最新鍵は もっと破壊しにくくなっているようですが・・・


 概ね、メーカー装着品の大半が役に立たないのは 見てきた通りなんですが、後付品はどうでしょう。

 この手のワイヤーロックが一般的だと思うんですが、

 切断はきわめて簡単。
 小型のワイヤーカッターでも一撃で切断可能です。(筆者経験3秒)
 普通のペンチでも繰り返して切っていけば、数分で壊れてしまうでしょう。

 この手の鍵の頑丈さは 概ねワイヤーの太さと比例していますから、

 このサイズになると普通のペンチで切断するのは不可能です。
 が、中型のカッターで切れるんですよ、数分で・・・。

 もっと高い盗難防止効果を狙うと こんなサイズになってしまいます。

 このクラスになると 普通の家庭にある工具では切断困難。(このクラスを切れる大型のワイヤーカッターも存在しますがね)
 動力工具がないと太刀打ちできないでしょう。

 もっとも、このサイズの鍵は完全にオートバイ用。
 いつも この重さを自転車で持つのは 相当疲れてしまいそうですね。


 ま、U字ロックも 筆者が「分殺」したような安物ばかりではありません。

 このサイズになると目立たない道具で秒殺するのは困難です。

 小型の物でも ハンドルの材質がしっかりしていれば シロート自転車盗相手に即死することもないはず。
 有名ブランドの品だと アームを焼入れ硬化していたり、モリブデン合金を使っていたりしています。
 どれだけ効果があるか試したことが無いので分かりませんが、安物を買うより安心できるのでしょう。

 あとは ロック部分の強度も問題です。
 材質が柔らかくても 片方のアームが切られただけで外れなければ 2倍の時間が掛かるんですから。
 市販品の多くはロック状態で売られてますから、ココを確かめるのは難しいのが残念です。

 あ、書き遅れましたがチェーン式の鍵は要注意ですよ。
 多少太くたって カッターなしでも簡単に切る方法がありますから。


 結局、高い耐盗性を求めると 重く高価な鍵を使うしかないのですが、人が作ったものならば壊せない道理はありません。

 バイクや高額自転車を狙う泥棒はトラックに工具を積んでやってきます。
 ジャッキ、ウインチ、動力工具、クレーン付きのトラックも今は常識。
 力任せに鍵を壊して 人目を気にせず盗んでいくのが今流だとか。

 筆者も バイクをヤラれたことがあるんです。
 一流ブランドのブレーキロックを付けてたんですが、一晩でなくなっておりました。

 自転車だと室内にしまえますから、本当に高価な車両は駐輪場に置かないのが一番なのでしょう。
 鍵だけしっかり掛けても、サドルやペダルだけ盗まれることも多いですからねえ。

 一方、有り合わせの自転車を足代わりに盗んでいく手合いなら それなりの鍵でも効果があるでしょう。

 中にはタチの悪い奴もいますから、簡単に安全性を高めるのなら 鍵を複数付けることです。
 一本 壊すだけなら数分でも、2本壊すとなると 手間もリスクも倍以上にななってしまいます。
 ドライバーやペンチで壊れない鍵を2個付ければ まず安心。

 最近、自転車メーカーもどんなに頑丈な鍵をつけても壊されることを悟ったのか、複数の鍵を付ける方向に向かっているようです。

参考文献
石橋自転車の鍵・最新版
松下自転車の鍵・最新版

 もし、貴方の愛用自転車に貧弱な鍵しか付いていないなら、それなりの鍵で補強されることをお勧めします。

 ひょっとしたら 鍵のほうが自転車本体より高いなんてことになるかもしれませんがね。


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参考文献

バイク絶対盗難防止計画
http://www.geocities.jp/nak0683/

 世の中、ココまでやらないと盗まれてしまう世紀末状態。
 巻末のリンクまで見ると こちらまで心が荒んでくる気分。