日本は世界最大の双眼鏡生産国であり、輸出国でもあります。それだけに双眼鏡の国内ブランドは多数存在します。
また、店頭にはドイツ製を中心に海外ブランド双眼鏡もならんでいます。
ここでは各メーカーのカタログを見ながらその特色を考えてみましょう。
ニコン(1999年版・2000年版)
いわずと知れた日本が世界に誇る有名ブランド。
カタログの厚さ・掲載量ともピカイチ。表紙はキャノン・ペンタのほうが洒落ているが、硬質なデザインはむしろニコンのイメージかも知れません。
紙面はB5中綴じ20ページの大作。
去年のカタログまでは日本光学と双眼鏡の歴史が1ページ目に書かれ、2ページ目にはニコンの双眼鏡の素晴らしさが図入りでトクトクと語られていました。
さすがはニコン。
自社の素晴らしさの説明に紙面を費やすのは、ツァイスのホームページにも見られる手法です。
双眼鏡はガリレオ式4X25から18X70まで48機種、加えて単眼鏡3機種、フィールドスコープ6機種、果てはレーザー距離計まで掲載。
双眼鏡に限れば、最安値はやはりガリレオ式「ミュエット」9800円。高いほうは18X70の134000円。
中には双眼鏡マニアの憧れの的「7X50SP」、ダハ式双眼鏡の最高峰「8x42D・CF」など名機がズラリ。
珍しいところでは、ミクロンタイプの双眼鏡や、チタンボディーやマグネシウムボディーの双眼鏡が目を引きます。
さすがは、日本最大のブランド。
これだけの双眼鏡を載せながら、手持ちがメインの双眼鏡では最高の倍率が12倍までしかありません。ズーム双眼鏡は5機種だけ。
正統派で手堅いラインナップでしょう。
これだけの数があると、幾つか似たような双眼鏡があるように思います。特にコンパクトタイプのポロ型双眼鏡ではそっくりさんが大行進。
このカタログが何より優れているのは、ケースの写真が全機種について載せてある点でしょう。
高価な双眼鏡でも簡単なソフトケースに入っていたりすると興醒めなのでとてもたすかります。
是非、他社にも取り入れて欲しいものです。双眼鏡の大きさを比較した図もベスト。
双眼鏡に関する解説も分かりやすいほうでしょう。
マイナーな商品でも ここまでのカタログを作ってしまうこと自体凄いことではないでしょうか。
こんなカタログを作るメーカーなら、商品も悪くはないだろうと思わせるあたりは流石です。
双眼鏡のカタログでは国内外を通して最高の一品です。
キャノン(1999年版)
一眼レフではニコンと覇権を争うキャノン。
双眼鏡のラインナップは少ないですが、カタログは落ち着いた中にも艶がある表紙で目を引きます。
紙面構成はB5中綴じ8ページ。 双眼鏡は10機種をラインナップ。カタログの中心は手ブレ補正機能付き双眼鏡。最高額は「15X45IS」で165000円、安値はコンパクトポロ型「8X23A」15000円。(99年版)
高倍率機はすべて防振機能内蔵 残りは売れ筋の小型双眼鏡という割り切りかた。ラインナップとしてはいびつですが、とても合理的な考え方なのでしょう。
中型のポロプリズム機がさほど売れるとは思えませんから。
そんな割り切りはカタログの随所に見られます。
双眼鏡について一般的な解説はない代わりに、きれいなイラストでビジュアルに訴える構成になっています。
合理的なんでしょうね、こっちのほうが。
ニコン風の大きさの比較図が巻末についていますが、大型双眼鏡がラインナップされていないので面白さは半減です。
ペンタックス(1999年版・2000年版)
カメラではニコン・キャノンに水をあけられた印象のあるペンタックスですが、双眼鏡はニコンに次ぐ規模のラインナップをもっています。
紙面はB5中綴じ8ページですが、裏表紙に折り返しがつき実質は10ページ。
商品構成は大ヒットシリーズのコンパクトポロ型「タンクロー」をはじめ、フラットタイプから大型のポロ双眼鏡まで取り揃えています。
大型機はニコンの製品と競合するような商品で固められているように思いますが、ライバル意識なのでしょうか。
カタログは見開きごとに超小型・タンクロー・大型双眼鏡と分類されていて、見やすく商品が理解しやすい編集です。
売れ筋のタンクローには16倍機があったり、フラットダハ双眼鏡にズーム機があったりと世俗への色気も感じらます。
ニコンよりは簡潔ですが、双眼鏡の基礎知識もまとめられています。
大きさの比較などがなくニコンほどの緻密さはないのですが、商品構成が整理されているので見やすいカタログではないでしょうか。
双眼鏡のラインナップはペンタックスに次ぐ数があるようですが、中型〜大型の双眼鏡は8倍と10倍のポロ双眼鏡とポロ型ズーム機があるのみです。
ここのカタログはペンタックスとは逆に、商品構成が整理不十分のため初心者を混乱させそうです。
B4見開き+B5両面という紙面もカタログを分かりにくくしている原因なのでは。間に挟まっているだけのB5の紙が行方不明になりそうです。
商品自体はまじめな印象ですが、ズーム機種は数字だけの高倍率を求めているのでしょうか。
その上、高倍率機で三脚固定が出来ないのは一流ブランドとしての誇りを欠いているのではないでしょうか。
ここで取り上げるカタログの中では、もっとも見辛い印象でした。