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尖閣諸島の領有権問題

特別寄贈:日米基軸を考える


http://mitsui.mgssi.com/compass/html/0303/toku_07.html
三井物産戦略研究所
THE WORLD COMPASS 2003年3月号
特別寄贈:日米基軸を考える
鈴木通彦(三井物産戦略研究所研究主幹)

 3 中国の国益と政策

 中国は1989年のニクソン元大統領訪中時の 小平演説において、「国益を最高準則として国際問題を処理す
る」との原則の下、(1)独立と自存、(2)発展、(3)参与(国際システムへの参加)の三つのレベルから国益が
構成されると定義した。その後1997年の第15回中国共産党大会でもも小平理論を踏襲するとしており、国益の表
現は見当たらないものの江沢民演説中の表現「社会主義の根本的任務」がそれに相当すると考えてよい。こ
こでは社会生産力の発展を「死活的国益(根本的任務)」、そして改革・開放、吸収および参与を「手段とし
ての国益」と位置付け定義をさらに発展させている。
 遅れた社会主義国を自認し独立と自存を確保したうえで全努力を繁栄に向け、その成立のためには改革・開放と
国際システムへの参加以外に道がないとする中国流の定義は、昨今の政策からも理解できるものである。このあた
りは西脇文昭の「岐路に立つ日本外交」(世界週報1999年12月−2003年3月)に詳しい。先ごろの第16回共産党大
会(2002年11月)においても、表現はややあいまいながら発展を第一義としており国益の定義は変わらないと考えて
よい。
 第16回大会の大きな特徴は資本家を共産党員に加えたことである。党の存続が国家を維持する唯一の手段と
の認識に立ち、経済で重要な役割を果たしつつある新興資本家を取り込むことで徐々に党を変質させなが
ら存続させる手法を採用したのである。経済は2008年の北京オリンピックや2010年の上海万国博覧会を目指し急
成長を続けるだろうが、改革・開放の進展とともに政治は自由主義諸国による「西欧化」や「分断化」ならびに平和裏
に政権を代えようとする「和平演変」を懸念しつつも、共産党主導による緩やかな社会民主主義を目指しているようで
ある。
 一方、安全保障上の懸念は米国の行う政治的・軍事的包囲である。特に東シナ海および南シナ海からの
海上包囲網と中央アジアからの圧力は、主要産業地域が東方沿岸部に偏在し脆弱なことや新疆ウイグル
自治区に民族問題を抱えることから最大の懸念材料となっている。対応する中国の戦略は、西部大開発に
よる経済発展を通じての国内の安定と東西の均衡、開発に必要な石油資源確保のためのミャンマーやタイ
などへの南方進出、ロシアとの軍事技術的連携と軍の近代化ならびに米国による包囲網の阻止・分断であ
る。特に日本列島、台湾、フィリピン、カリマンタンを結ぶ“第一島嶼(とうしょ)線”は、沿岸工業地域の安全
のため、軍事的影響下に置きたい地域である。台湾は安全に海洋進出するために確保しなければならない
領土であり、核戦略の鍵を握るSSBN(Ballistic Missile Submarine Nuclear-Powered)潜水艦を安全に
航行させる水域としての渤海湾や海南島南部も重要な意味を持つ。これらは、将来の経済の発展とともに
懸念が深まり必ず克服しなければならない重要課題になるだろう。





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