尖閣諸島の領有権問題
『日本の息吹』
竹島、尖閣列島は日本固有の領土
(『日本の息吹』平成8年3月号より)
政府は(平成8=1996年)2月20日、国連海洋法条約の批准と、200海里の「排他的経済水域」を日本周辺に全面設
定する方針を決定した。今国会での批准を目指しているが、一刻も早い批准が必要である。
同条約は領海、漁業水域、海底資源開発などあらゆる事項を網羅しており、世界の新たな海洋秩序となるものであ
る。今春(1996年春)以降には深海底に関する締約国総会で理事国が決定し、8月にはハンブルクに設置される「国
際海洋裁判所」の裁判官選挙が行われる。この選挙に参加できるのは、今年6月末に同条約の批准国であることが
条件であり、時間はないのである。
この海洋法から最大の問題となることは、この法が認める200海里の排他的経済水域の線引きである。我国は当
然、尖閣列島と竹島を基準として線引きを行うことになるが、中国は尖閣列島を、韓国は竹島を、それぞれ領有を主
張しており、両国との摩擦は避けて通れなくなる。
日中韓の3国で熾烈な交渉が繰り返されることになるが、この交渉を巡る問題で、最大の障害となっているものは何
か。それは、中韓の不当な態度というより、むしろ日本政府、与党の弱腰であろう。外務省は「領土問題をあいまい
にしても中韓との関係を悪化させるよりまし」(2月4日産経)と考え、ある自民党首脳は「中韓を刺激して問題となる
なら批准が遅れてもよい」(2月21日産経)と述べるなど、交渉をやる前に既に腰がひけているのである。
中韓の基本姿勢は、「島は最初から自国領であり、領土問題の交渉はありえないから漁業交渉のみをやろう」という
ものであり、日本は「中韓を刺激したくないから領土問題は棚上げにし漁業交渉のみをやろう」というものである。こ
の差は決定的である。なぜなら、交渉を行う以前に日本は譲歩の姿勢を示しているようなものだからである。
■歴史事実に立脚し、断固たる交渉を
竹島、尖閣列島が、日本固有の領土であることは歴史的事実である。
特に、韓国と問題となっている竹島については、日本の領有はすでに1616年からはじまっている。韓国は、朝鮮の
古文書を論拠に、6世紀から竹島は鬱陵島の一部と強弁するが、それを立証する根拠などほとんどなく、『竹島史稿』
の著者である大熊良一氏によれば、朝鮮の古文書には、竹島に関する記述がないばかりか、島の見取図、地図の
類いも全く存在していないという。韓国側でいう「独島」(竹島)が朝鮮の文献にあらわれたのは1906年(明治39年)
のことであり、つい最近のことである。
つまり、歴史的に立証できることは、同島を領有していたのは日本人しかいない、ということである。
また韓国は、1905年(明治38年)1月に日本が閣議で竹島の領有権を明確にしたことに対し、一方的であり朝鮮は
外交権を奪われていて異議を言えなかったとするが、この閣議決定は古来から領有していた竹島への領有意志を再
確認したのであり、外国通告を要する国際法の原則もなく、朝鮮に通告する義務などどこにもない。つまり、朝鮮の
外交権云々など全く無関係の問題である。
むしろ問題は、紛争の原因が1952年(昭和27年)に韓国が一方的に「李承晩ライン」を引いて領有権を主張したこと
に起因していることであり、紛争の責任は韓国にあるということである。
尖閣列島は竹島と同様我国固有の領土であり、まして現在、日本が実効支配しているのであって、それを譲歩する
ことなど考えられないことである。
今、日本は主権国家か否かの岐路に立たされていると言って過言ではないだろう。日本が求められているのは、日
本固有の領土である両島を守り抜くという強い意志と、中韓との交渉に勝ち抜くという断固たる決意である。
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