SPACE HARRIER
for FAMICOM
1988 TAKARA
「全てのゲームはここに集まる」というコピーがありましたが、この言葉が実感される元祖ハードと言えば初代国民機「ファミコン」じゃないでしょうか。充実したオリジナルソフトはもとより、当時のアーケードゲーム、PCゲームがことごとく移植される様はまさにゲーム機の王様でした。
信者によって支えられていたセガハードのゲームさえ次々と手中に収めていた王様。そんな王様になんと「スペハリ」移植のオファーが!ついに「スペハリ」まで持っていかれることになったセガ信者の表情にはもはや「やれるもんならやってみろ」という嘲笑さえ浮かんでいたのでありました。
・ やってみた
「セガゲーのFC移植はサン電子」という常識を覆したのがこの「スペハリ」。「スペハリのFC移植はやめたほうがいい」というサン電子の常識的な判断を置き去りにして名乗りをあげた勇者はタカラだった!
残機表示が昔の「ロードランナー」を思わせる
こうして国民機FCにもあの芸術的作品「スペハリ」が移植発売されました。それも8ビット移植の最終ランナー、1989年というFC晩年の作品。あの「アタックアニマル学園」のおよそ1年も後のことです。果たしてどんな姿になってしまったのか、見て行くことにしましょう。
・ グラフィック
まずは一番目につく要素「見た目」。背景にキャラクターを描いて動かしてしまったマークVと比べてキャラが小さいです。それもそのはず、キャラは素直にスプライトで処理しています。迫力はあったけどそれ以外(動き、ゲーム性)に犠牲が出てしまったマークV版の反省か、はたまた度胸がなかったからか、スプライト処理になったキャラクター達はなるほどスムーズに生き生き動いています(トモスのみ背景描画かも)。拡大縮小処理はもちろんないので仕方ないですが、キャラの移動する様は「スプライト処理で正解」と思わせるほどスムーズです。ただ、やはりちらつきは結構あります。
それと見た目で華やかな点として、なんと空に(若干)グラデーションがかかっている面もある上、地平線の向こうに背景が!これでかなり印象が違うということは明白ですね(スクロールはもちろんナシ)。
それにしてもこのFC版で恐ろしいのは、一部のボスが削除・変更されているということでしょう。例えばスペハリ名物の双頭龍「ゴダーニ」はいなくなり、IDA連続出現ボスに変えられるという悲劇的事件が起こっています(サルペドンももちろんいません)。でも、「ハヤオー」はいます。この辺はこだわりなんでしょうか。
ボーナスステージでは一応ユーライアが出現しますが、小さくて毛虫みたいな上、障害物も少なく爽快感はありません。
敵の爆発パターンは、画面のどの位置で敵を撃破しても同じパターン(大きさ)のものが使われています。2,3枚のアニメパターンのため、一瞬の爆発です。
それと細かいところでは、ステージ開始時のステージ名表示がなくなり、単に「STAGE1」などの表示にとどまっています。
屋根も再現!障害物小さいっす | まるでSDキャラのようなかわいらしいドム |
・ システムやバランス
ゲームのシステムはもちろんAC版に準拠しています。ルールは同じですから安心して遊べます。全体的に難易度はそれほど高くないですが、「アタックアニマル学園」同様、ハリアーの動きが遅い割には敵や弾の動きが速いため、変な(イラつく)ムズさはあります。さらに、時折処理落ちが発生しハリアーの連射がきかなくなります。特にボスのシーンでは標的が小さい上に処理落ちが起こるので、勝負が長引きがちです。
キャラが小さい事で、障害物がほとんど障害物になってないところもスゴイとこ。浮遊物の岩は小ささをカバーする為か色々な高さで浮かんでいます(それでもさほど邪魔ではない)。
コンティニューに関しては裏技のみとちょっと厳しい内容です。まぁ、裏技ではコンティニューをはじめ面セレクトなどもフォローされているので、アキラメ入った人はそちらを利用しましょう。
8ビットマシンのスペハリ移植はみなそうですが、ハリアーの誘導弾は存在しません。まぁ、誘導弾がどうこう思うような出来ではない(処理にも余裕がない)ので安心です。
・ BGM
BGMについてですが、マークV版を元にしてるようで、曲によってはかなり似てます(メインテーマなど)。もちろんタイトル画面でもマークV版と同じ曲が流れます。それにしても18面の「シュラ(8面ボス)」の曲が「IDA」の曲になってしまっているのはなぜなんでしょう。8面ではちゃんと「シュラの曲」が流れますが。それとアップテンポで楽しげだった「バルダのテーマ」はなくなっています(ゴダーニの曲になってる)。
図解「カナリーの退化」
効果音に関して。敵の発する音に関しては、マークV版同様「ローパー」の音しか鳴らないです。さらにハリアーの「アーー、ゲットレディ」もなくなり、妙な効果音にすりかわっています。
チャチさで言ったらコンシューマ移植ではNO.1と思われるFC版「スペースハリアー」。性能で言ったら仕方のないことです。それなりに華やかに作られたビジュアルに拍手と言ったところでしょうか。1ステージが割と短く作られているところが、テンポを大切にしているようで好感が持てます。もうちょっとハリアーの移動スピードを速くして、弾よけの快感を得られるようになっていたら化けてたかもしれないですね。
国民機ファミコンにも移植されたという「スペハリ」の一つの勲章ということで、暖かく見守るのがよいと思います。
タカラ
1989年1月6日発売 5500円