OUTRUN for PC−ENGINE 1990 NEC AVENUE |
メガドライブ版に先駆けた90年のクリスマス前、ライバル機「PCエンジン」にて移植が実現!セガ本家のハード「マークIII」での移植版しかなかった当時、絶対のアドバンテージを持って登場したPCエンジン版の出来は?
・アーケードに準じた出来
当時出たばかりの頃は間違いなく最高の出来だったんでしょうが、後に出たメガドライブ版に比べるとちょっと厳しいですね。
グラフィックはさすがPCエンジン!パッと見アーケード版をよく再現しています。アザーカーの斜めパターン(通り過ぎる時に斜めに見えるパターン)もよくできています。
コースはなぜか海外バージョンながらちゃんとアーケードに準じた構成になっており、コース選びも楽しいドライブ感も再現されています。
工夫が見られる花畑、再現されなかった海原 |
・グラフィック的問題
まぁ、基本的にはアーケード版に準じているので、目立って変なところをあげていった方が面白いと思います。
電源を入れて真っ先に気づくのが、タイトルがゲーム画面上に表示されないということです。これはマークIII版でさえ実現したもので、なんとなく開放感があって「アウトラン」っぽい部分でもあったのでかなり寂しいといえるでしょう。
そしてゲーム画面を見てすぐわかるのが表示関係。他のNECアベニュー移植作品にもみられますが(「スペハリ」など)、スコアなどが画面外の黒味の部分に表示されています。少し画面が狭く感じられてしまいます。
オブジェクトの種類も、やはり若干削除されています。なじみの看板なんかがなくなってるのはちょっと寂しいですね。
スッ飛んだ瞬間にドライバーが!
また、地面を埋め尽くすタイプのもの(海や花畑、草原など)が再現されていないので、道路わきはちょっと寂しげです。アーケード版で、これはレースゲームとして画期的なスプライトの使い方であり効果も抜群だったため、スプライトを一つの売りにしていたPCエンジンでは根性で再現して欲しかったです。ちなみに後に発売されたメガドライブ版ではきっちり再現されていました(もちろん完全とは言いがたいですが)。
・処理など
処理に関しては、基本的にこの頃の3D移植モノの鬼門「拡大縮小」問題にしっかり引っかかっていますので動きはカクカクです。「アウトラン」はヤシの木や風車、ビッグゲートがズモモモーと迫ってきてナンボですからね。当時の家庭用マシンにはツライ現実でした。
ステージの終わりの分岐点ではマークIII版同様道が点滅しながら分かれていきます。つまり高速で左右への2つのカーブを交互に表示して、道が分かれているように見せかけているのです。うーん、写真に撮れないのが悔しい。
ついでに言うと、アーケード版では分かれ道のあと次のステージに入る時にもう一つの道が現れ合流する演出がありますが、これはなくなっています(MD版ではなんと再現されていました)。
スプライト欠けもそれなりに起こってしまいます。決して気になるほどではないんですが、ビッグゲートでの石柱のチラつきはちょっと厳しいですね。
車が吹っ飛ぶとドライバーとその彼女(?)が消えてしまうのも寂しい!転んだ後のやりとりも楽しかっただけに残念。そんな難しい処理でしょうか?ころげる車の動きも非常に淡白だと思います。
・音関係は?
ネームエントリーのヤシの木が独特
音関係ですが、天下のBGMがなんとも言えないPCエンジンテイストにすりかわっています。「デン、デン」というような感じのいかにも「電子音」という音色といいましょうか(表現が難しい)。
あと、エンジン走行音が常に鳴っているのは素晴らしいのですが(MD版は鳴らない)、本当は「ブゥゥーーーン」という音のはずがこのPCE版では「ブーーーーーーーー」という抑揚のないノイズみたいな音で、結構うっとおしいかも。ちなみにアザーカーの通り過ぎる音は鳴りません。
加えて「チェックポイント!」などの音声はカット。つまりしゃべらないということですね。
・納得行く移植だったか
難易度はちょっと高めでしょうか。障害物が道路ギリギリに立っている(はみ出してる!)ので、ちょっと道路から出ちゃうとスカーーンとイってしまいます。圧迫感を感じ、道路が狭く思えます。
コンフィグ(オプション)は「難易度」と「エンジン音ON/OFF」「演出音ON/OFF」の3つしかなく、サービス精神は希薄です。とくに「演出音」なんてスタート時の信号音やカーブのスリップ音などで、あまり意味を感じないのですが。
神格的名作「アウトラン」の移植にファンは敏感です。果たしてこのPCエンジン版、当時のアーケーダー達にはどのように映ったのでしょうか。
それにしても定価7200円は高っ!!
NECアベニュー
1990年12月21日発売 7200円