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FANTAZY ZONE
for PC−ENGINE
1988 NECアベニュー
・「感動!ほとんどそのまんま」
 というキャッチコピーだったですよ。確か。涙を流しながらコントローラーを手にしている少年のイラストだったと思います。発売前だった当時、これほどたのもしいコピーはありませんでした。セガのハード以外で「ファンタジーゾーン」が出るという事に抵抗は確かにありました。しかし、マークIIIでは実現できなかった「アーケード版」の再現を、当時まだ斬新だった最高性能マシン「PCエンジン」に期待してしまうのもまた事実でした。
 広告にはこうも書いてありました。
 今までの家庭用移植では実現しなかった2重スクロールも再現!(原文とは若干異なるかもしれません)」
グラフィック自体は似てるが、色が濃すぎ!
 当時の移植モノの鬼門、そしてアーケード版「ファンタジーゾーン」の大きな魅力である「2重スクロール」。一番再現して欲しかったその部分が再現されているとは…。もしかして、PCE版ってゲーセン版とほぼ同じなんじゃ…。と、哀れにも期待だけが無限に広がっていったのです。
・た、確かに…
 確かに!マークIIIやFCの移植版しか存在しなかった(コンシューマではね)当時において、ケタ違いのレベルの移植と言えるでしょう。全体的にアーケード版をよく再現していて、特に他移植版と比べて以下の点が再現された事は大きいと思います。
タイトルがきちんと背景の上に表示される。
前線基地のダメージマークの色が変わり、死がいも残る。
ボスも背景と共に表示され、出現時や撃破時の演出も再現されている。
 (ただし、クラブンガーの拡大処理は再現されていない)
レーザーもとぎれることなく表示される。
ウィンクロンが見事に6本腕!
「ウィンクロン」の腕が6本。
コインを取った時に値段が表示される。
各ステージの惑星名が表示される。
 まぁ、つまりほぼアーケード版に準じた仕様だという事です。しかし、この移植が期待通りの納得が行くものだったかどうかというと、そうではありません。上に挙げたのは、ハードの進化によって当然再現されるべきものです(それはそれで当時は嬉しかったですが)。優秀な移植作といえるかどうか、ましてや「ほとんどそのまんま」と言い放つのに充分な出来かというと疑問です。
・まずいでしょ、そこ
 まずBGMで思いっきりコケちゃいます。なんていうか、筆舌に尽くし難い音色となっています。出だしとなる1面が特に厳しいですね。アーケード版がFM音源とは思えないくらいの音色を出していたので、特に弱いと言われていたPCEの音源では「曲」を再現するのでいっぱいいっぱいだったのでしょう。効果音も淡白で、薄っぺらい印象となっています。
 画面の色使いもなんとかならなかったのでしょうか?パステル調の淡い色使いが美しかったアーケード版と比べて、原色がきつい濃い色調となっています。「ファンタジー」っぽさが70%以上削がれていて、オリジナルを知らない人にはちょっと「意味不明な風景」となってしまっています。PCEのパレットってこんなものなのでしょうか?マークIII版の方が色使いという点ではずっと奇麗だと思います。
 細かい不満を言うときりがないのですが、ゲームスタート時にストーリーの表示がないとか、ショップ買い物後のアイテム選択時に背景が表示されないとか、ボランダの弾がなぜかちらついて悲惨だとか、2重スクロールが2面だけとか、ショップのカーテンがないとか、敵キャラの大きさが全体的に小さいとか・・・。
 特に「2重スクロール」に関してはサギともいえる仕様でしょう。確かに、2枚のBGを完全に重ねあわせる処理などPCEには出来ない事はわかっています。ただ、広告の表現とPCEの未知の部分に期待を寄せてしまったのも事実です。
 ちなみに2面に関してはもともと少なかった手前の背景をもっと減らして、スプライト処理でごまかしているようです。まぁ、アイディアではありますが。
2重スクロールする2面。色使いもいい オパパ出現時は一度画面が黒くなります
・広告に偽りあり
 まぁ少々辛辣なレビューになってしまいましたが、当時のマシンの性能を考えれば突出した移植の出来と言えます。プレイ感覚はかなりアーケードに近いですし。しかし「ほとんどそのまんま」とは、お世辞にも言えない出来でした。
 このPCE版「ファンタジーゾーン」、DCのゲーム配信サービス「ドリームライブラリ」で復活しました。しかし、DC上で復活すべき「ファンタジーゾーン」の姿が本当にこれで良かったのか、疑問が残ります。
NOW PRINTING NECアベニュー
1988年10月14日発売 4900円

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