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AFTER BURNER
For SEGA MkV
1987 SEGA
 やっちゃった!本当にやっちゃったよ!というのが大筋の見解。「スペハリ」、「アウトラン」であれほど苦渋をなめたにも関わらず、さらにスゴイものを移植しちゃいました。発売の発表で衝撃を与え、発売後にその出来で衝撃を与えた移植作。
 AC版「アフターバーナーII」が大人気だった頃には「セガのAC人気ゲームが家庭で遊べるのはセガのマシンだけだぜ!」というコンセプトも「セガのAC人気ゲームが一番早く遊べるのはセガのマシンだぜ!」に変わっていましたが、この「アフターバーナー」に関しては、移植する勇気があるのは生みの親だけだろうと誰もがタカをくくってました。しかし、それこそ雨後のタケノコのように続々移植されるサマは一種異様だったと言えます。
寂しい!ゲーム画面。動きもカクカク。
 んで、マークIII版ですが、当時純真無垢な中学生だったHEDは、実は単純にかなり期待していたのです。マークIIIの隠された実力が発揮される時が来たのだ!と。しかもマークIII初の4M!大容量!第一報を報じた記事にはAC版の写真とともに「遜色なく再現か!?」みたいな事が書かれていたからもう大変。セガの姿勢には自信が満ち溢れ、マークIIIの性能なんか忘させるくらい期待を振りまいていました。初めて採用された黒いカードリッジにも妙な迫力があったし。
 現実はアマくないですねぇ。っていうか想像以上にキビしい。もはや別物。ゲームになってない部分あり。仕方ないんですよ、性能的に。圧倒的な差がありますからねぇ。でも、そこまでして出すかー!っていう感じが否めない出来。
・色々な問題が。
 まず、スプライト問題ですが、使わないことで決着したようです。つまり名づけてスペハリ戦法。地面からキャラクターまで全て書き換え処理です。キャラの重ね合わせにワクが出なくなっているところに進化が感じられますが、キャラが大きいというわけでもない為かえって動きのカクカク感だけが目立ってしまうという悲しい結果に。
 敵のミサイルなんか音もなくカクカクさまよって来る上動きに説得力が全然ないため、全くよけているという感覚がありません。この辺がゲームになっていない原因かと。
 次に拡大縮小問題。これは仕方がないのでいつもの方法。つまり書き換え。このゲーム、全て書き換えで成り立っているようです。美しくかつ迫力のあった地表の景色も、なにやらヒョロい木などがカクカク書き換えられているという淡白なモノに。しかも全18面で地表の種類が3パターン(色変えあり)という惨澹たる結果に。
 演出関係ですが、美しい軌跡を描き爽快だったケムリはまったくカット。ショボいミサイルがヒョロヒョロ飛んで行きます。爽快感が…。もちろん空爆機などの過剰演出はナシ。敵機の爆発パターンも一瞬のモノが一種類
  しかしながら、自機のやられパターンはなんと、その場爆発と撃墜パターンの2つを再現!根性ですね。
なんと給油は手動!機敏に動き回る補給船。
 出撃シーンの母艦は美しく表現されています。が、固定画面のままトムキャットは上空に飛び去って行きます(若干上にスクロール)。そして画面切り替えでゲーム画面へ。ちょっと工夫した感じですね。どう再現するのか見物だったのですが。

 アフターバーナーの演出のキモはそのスピード感と圧倒的な迫力。そのどちらも再現できなかったのはやはり痛い。ゲームは非常に淡々と進んで行きます一つのステージが長めなのも淡白さに拍車をかけています。
 ローリングも無理矢理再現されましたが、演出効果ナシ、ゲーム内での効果もいまいち不明と中途半端。あの爽快感はいずこ…?
・システム
 この作品、タイトルからもわかる通り「II」の移植ではなく「T」の移植なのです。なのでスロットルレバーによるスピードの調整なし(アフターバーナー不可能)、ステージ数も18です。できなかったんじゃないです。あくまでも「T」の移植なんです。
 そしてさらにマークIIIならではの要素も!なんと給油は手動!不自然に動き回る補給船に自分から合体しなきゃいけません。単調なゲームに変化を持たせようとした結果でしょうが、いまいち評判は良くないようで。
 画面を見てみると、得点などの表示はありません(各面スタート時に得点と残機表示)。ミサイルの表示もありませんが、一体ミサイルの残り弾数をどうやって知ればいいのか。安心して下さい。ミサイルはいくらでも撃てますから!苦労して給油する意味って一体・・・(ボーナス点)。

 あと、AC版になかったボスキャラまで登場しちゃいます(ステージ6、12、18)。どうしたもんでしょうか。倒せばご褒美にあの滑走路着陸シーンが見られます。シーンは本当に一瞬で終わっちゃうのですが、ハングオンのバイクやアウトランの車なども出ます。この辺はこだわりなんでしょうか。でも人が一切出ないので、なんのために着陸したのか不明な仕上がりになってます(もちろん固定画面)。
 全般的に敵機のミサイルは撃ち落とせるようになっておりますので、それをうまく利用しましょう。最終面に登場するボスの弾なんか撃ち落とさないと間違いなく当たってしまいますので必ず撃ち落しましょう。っていうかもはやアフターバーナーじゃないような気が。 
  このゲーム、12面まではずーっとコントローラの横を押し続ければ死なずに行けるなんてことは秘密らしいですよ。
うわぁぁー、ボス出現!攻撃がわけわからん。 なんと滑走路シーンが!なんて寂しい光景!
・音関係
 BGMはもちろんFM音源対応。なんていうか、マークVのFM音源ではお馴染みの音に仕上がっています。「ファンタジーゾーンII」ではあれほど多彩な音を出してたんですけどねー。AC版のようにめまぐるしくBGMが変わったりしません(例えば初めの曲はステージ6まで変わらない)。AC版でいうステージ4(他)の曲はボスの曲になってたりします。ちなみにステージ1〜の曲はメロディーライン入りです。
 効果音もかなり厳しい出来。自機のミサイルの発射音などは完全にノイズまじりで耳障りです。うーむ。あ、そうそう、ゲームスタート時の「Get Ready」だけはしゃべります。「スペハリ」の時みたいなのを想像すれば間違いないです。
 とにかくヘボヘボカクカクになってしまったマークIII版、記事も辛辣になってしまいましたが、これはこれで思い入れがあったりします。皆さんそうですよね。家庭用に還元できる優良なAC作品を持つセガが、自らの技術力に首を絞められた時代の奇妙な産物。この無念は後々の移植人達が見事に晴らしてくれる事になろうとは、当時全く考えもしませんでした。

セガ
1987年12月12日発売 5800円

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