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ソース・ロンダリング考


    これまで、ソース主義では「別の発言者のページのURLを掲示する」「初出記事の掲載誌を掲示する」などが取られてきたが、これを仮に単一ソース主義とする。昨今では、元の記事そのものに「記者の主観」や「解説と称する希望的憶測」が混じることが増え、記者や評論家が「作家」や「俳優」に転身して、ある種の創作を新聞、テレビなどで「演じて」いることが伺えることから、単一ソース主義を進化発展させたものとして、複数のソースに当たるよう推奨され始めている。これはマスコミの論説に恣意的な姿勢があることが指摘され始めた2004年春〜夏くらいから、急速に発展しはじめた。仮にこれを「複数ソース主義」とする。

    この、「裏を取る」という複数ソース主義が発展することによって、これまで看過されてきた「悪質なデマゴギー創作方法」が見破られるようになった。
    「空白の10分間」における西尾事件で、「情報源を曖昧にしつつ、その間に発言力/影響力のある重鎮を挟んで、噂を事実であるかのようにしたてていく情報源洗浄」を、ソース・ロンダリングと名付けたIrregular Expression のgori氏に敬意を表し、ここではこの手の「ソースを曖昧にして煽動を行う行為」をソース・ロンダリングと捉えて考えてみたい。

     

    ■タイプ(1) (中西-西尾幹二型)

    1. タブロイド新聞に「事情通の意見を元に書かれた」憶測記事(=憶測というより記者の創作に近いもの)が掲載される。記事の根拠になる「事情通」「情報筋」は明かされないため、記者の創作である可能性が高く、それは否定/解明されない。
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    2. (1)を受けて、テレビ・ワイドショーの新聞記事読み上げ番組が、「新聞によれば」と、情報源の信頼性を「新聞」に押し付けた形で記事を紹介。記事の朗読に加えて、紹介するコメンテーターの憶測が付加される。
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    3. (2)をソースとして、「テレビ報道によれば」と元の記事+テレビコメンテーターの憶測(尾ひれ)が加わったものを、自説の補強に使うblog/日記/掲示板投稿、または論文(中西論文)で発表。もちろん、そこにも紹介者の(2)にプラスされた憶測が補完される。
      西尾事件では、「中西論文」→「それを見た西尾日録」の形で、保守論壇の重鎮を経由することで、出所不明(最初の掲載誌は明らかでも、「事情通」「情報筋」は不明なままだから)の憶測記事に信憑性が付加される。
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    4. (3)のblog/掲示板投稿などにコメント、トラックバック、レスなどが付く。この時点ではすでに(1)の存在は曖昧にされ、(1)+(2)で「複数マスコミが保証している」「マスコミでは当然とされている」になり、(3)に大物が混じれば(1)+(2)+(3)で「専門家の見立ても保証している」になり、この(1)+(2)+(3)を見てから後追いに走る(2)がさらに憶測を付け加えるなどする。
       
    5. 以上から、「複数に見えるソースの全ての出もとはひとつだが、大元の出所が曖昧でも複数の引用者に尾ひれを付け加えられ、複数の引用者が居ることそのものが信憑性の補強に使われ、情報源が隠されたものが、事実であるかのように流布されてしまう」ものを、本項では「ソース・ロンダリング/タイプ1」とする。

     

    ■タイプ(2) (木村愛二型)

    1. オリジナルの発信者Aが自分の要望、理想に基づいた記事を発表する。
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    2. (1)の記事が雑誌/新聞などに掲載されたことを、他の掲示板などに発信者A自身が「雑誌に掲載された情報」としてコピー&ペーストする。
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    3. (2)のコピー&ペーストを、発信者A自身がさらに別の掲示板などに「雑誌でも報道された(この部分がコピー&ペーストの情報ソースになる)信憑性もある情報」としてコピー&ペーストする。
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    4. コピー&ペーストが繰り返され、発信者A以外の追従者/盲信者によって同じコピー&ペーストが広まると、発信者Aの叫びは「第三者も認める信憑性のあるもの」になる。これをまた「みんながそう言ってる」として、信憑性の補強につぎ込む。
    5. タイプ2は、「自分で付いた嘘(希望、要望)を自分で広め、信じた他人がいればそれを根拠に自分の嘘を自分で信じ込んでしまう」というもの。木村愛二の場合、自分で書いた記事、自分でコピペした投稿を根拠に裁判まで起こした。その裁判や記事、掲示板投稿について国会で質問までする議員が出たが、これが注目を集め、タイプ(1)とも混合した効果を発揮した。

     

    ■タイプ(3) (ジサクジエン型)

    1. ある掲示板B(スレ)の評判を貶めたい発信者Cがいる。
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    2. その掲示板Bに対して、対象となる掲示板Bそのものを貶める記事を投稿するのではなく、その掲示板Bの主張と異なる誹謗中傷を、その掲示板Bが発信する意見であるかのように発信者Cが投稿する。
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    3. 発信者Cは自分で書き込んだ誹謗中傷投稿を切り取り、他の掲示板Dに「あの掲示板Bではこんな主張がされている」とコピー&ペーストし、ソースとして発信者C自身が書き込んだ投稿のURLを掲示する。
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    4. 発信者C自身の投稿を他の掲示板Dで批判させ、その批判そのものを再び元の掲示板Bに「掲示板Dでの掲示板Bに対する評価」として紹介し、掲示板BとDを対立関係に導く。この場合、掲示板Bを批判させる掲示板をDだけでなく、E,F,G……と増やしていけば、掲示板Bの評価を相対的に落とすことができる。
    5. 複数の掲示板に、似通った論調で特定の相手を非難する投稿が広まっている場合、同一人物(この場合発信者C)の自作自演によるアンチ化工作に釣られている可能性が高い。これも一種のソース・ロンダリングであると言える。タイプ(2)に近く、案外引っかかりやすい。